はじめまして! 造船所所長の姪のジスレーヌといいます。
これからよろしくお願いします。
今から主な舞台となる場所を紹介しようと思います。
では、最初は……。
◆港町の外れ
ここは、元漁師さんや港で働く人達が住んでいる港町のはじっこのほうです。
港は障壁の向こう側になっちゃって、町も半分以上が同じように向こう側の海の中です。
おうちも、たくさんの思い出も全部……でも、みんな逞しいから、何とか元気出していこうってがんばってます。
そんなみんなをまとめているのが、リルダさん!
前の漁業組合長の姪です。
しっかりしてて、とっても働き者で、私の憧れの人なのです。
でも、ちょっと働き過ぎな感じで心配です。
リルダさんや他の代表者さんは、よく集会所に集まっていろんなことを話し合っています。
時々、ケンカになっちゃって、そんな時はちょっと怖くて近づけないです。
会議の日以外は誰でも入ることができて、たまに新しいお料理の試食会もやっているみたいです。
本当は、お野菜とか育たなくなって種類が減ってるの知ってるけど、大人達が一生懸命工夫してるのも知ってるから、お呼ばれした時は感謝していただいています。
いつも誰かしらいるので、誰かとお話ししたくなったらここに来るといいかもしれませんね。
◆魔法学校
試験に合格すると誰でも通える学校です。
おじいちゃんでも全然OKです!
港町の私くらいの年齢の子は、ほとんどが避難船に乗って行ってしまったので、今の生徒は大人のほうが多いです。
魔法のお勉強をしたいなら、ここですね。……実は、ここしかないんですけどね。
洪水前は、公国の都からの生徒もたくさんいて賑やかだったのですが、今は空き教室ばかりでシンとしています。
私はおうちでカテキョー先生に教えてもらっているので通ってないのですが、たまに遊びに行ってます。お友達がいますから。みんないなくなっちゃって、寂しいって言ってました。
お船で逃げたお友達はきっと生きてるって、よくお話ししているんです。
それから、ここには人工太陽を毎日打ち上げている、元天文塔があります。
人工太陽は、本物の太陽みたいに約12時間かけて東から西へ移動します。
でも、あんまり暖かくないです。春くらいの気温でしょうか。
夜はお月様もお星様も見えなくて、真っ暗でとても寒くて……怖いです。唸り声みたいなのが響くことがありますが、それは潮の流れだと聞きました。
この元天文塔はとっても大事な場所なので、関係者以外立ち入り禁止なのです!
もし忍び込んだのが見つかったら、すごい火の魔術師のレイザさんにお洋服を燃やされて、すっぽんぽんにされちゃうって聞きました。
お洋服だけを燃やすことができるなんて、レイザさんは本当にすごい魔術師です。尊敬します
◆造船所
フレンおじさんが所長をしていて、箱船を作っているところです。エーヴァカリーナ池という大きな池にあります。
ここで作った箱船で、海の上に私達が住めるところがあるか探しに行くのです。
絶対に失敗できないって言って、フレンおじさんはお仕事中はとっても怖いです。
でも、ここが一番元気があるって、リルダさんが言ってました。
確かに、いつも船大工さんの声がして、みんな一生懸命にお仕事をしています。
人が足りないそうなので、お手伝いしてくれる人はフレンおじさんを訪ねてみてください。
あと、ここにはリック君がいます。
フレンおじさんの一番下の子で、よく私と遊んでくれるやさしいお兄ちゃんです。
お仕事のお手伝いをしていて、毎日駆け回っています。時々、転んでます。
箱船で海の上に行ったら、先に避難したお友達とも会えるかな……。
◆神殿
マテオ・テーペの真ん中にある水の神殿です。
ここで私達を守ってくれる障壁をつくり、維持しています。
神殿長はナディアさん。
不思議な雰囲気の人で、時々占いをしてくれます。全然当たらないんですけどね……あはは。
水属性の魔術師さん達は、この神殿で交代で障壁の維持をしているのですが、とっても疲れるお仕事なので少しでも手助けしてくれる人がほしいそうです。
この前も、一人倒れてしまったって聞きました。
それと、ナディアさんに会いに行った時に偶然聞いてしまったのですが、障壁は少しずつ小さくなっているんだそうです。
大洪水から町を守るために最初に障壁を張った時に、たくさんの水の魔術師さんが死んでしまったから、残った人数では維持するのもむずかしいって。
水の魔術師さんは、命がけで障壁を維持しているんだって、この時知りました。
けど、私は土属性なので、ここではお役に立てません……。
神殿の奥の広間は関係者以外入れませんが、広いエントランスは誰でも入れます。
それと神殿の近くには、この世界の名前の元になった山みたいに大きな岩の柱が立っています。
登ってみたいけど……ここも、立ち入り禁止なのです。
◆領主の館
マテオ・テーペを統治しているメイユール伯爵の館です。
お隣の国だったウォテュラ王国のお姫様や、大洪水の時にここを訪れていたよその国の貴族が客室に住んでいます。
お姫様はすごい水の魔術師で、障壁の維持をお手伝いしてくださってます。
ちょっとだけ会ったことがあるのですが……何か、怖そうなお姉さんでした。
侍女さんのベルティルデさんはやさしかったのになぁ。
お話ししたくて会いにいったのですが、門番さんに追い払われちゃいました。
この国の貴族さんと騎士さん以外は、中に入って伯爵やお姫様とお話ししたり、館で働くことはできないんですって。
私、男爵のフレンおじさんの姪なんですけど!? 一応、貴族ですのよ!
それから伯爵は、箱船計画の総責任者でもあります。
このままでは海に押し潰されてしまうマテオ・テーペのみんなを助けるために、箱船の完成を急がせたり、積み込む物資を集めたりしています。
これで終わりです。
私も、何かしなくちゃと思うのですが、まだ何ができるのか見つかりません……。
うん……でも、見つけるのです。何かあるはずです。
それでまた、みんなで陸地に住むんです。太陽のあるところに。