イベントシナリオ第6回オープニング
『夜は魔物の棲む世界 ~みんなで肝試し~』
「それでね、その女の子は」
カヤナ・ケイリーは真っ暗にカーテンを閉め切った食堂の中で、ぼそぼそと語っている。
「えーん、えーん、って泣いて首を振っているだけなの」
その話を食い入るように聞いていたのは、リック・ソリアーノ。彼は目を見開いて、カヤナの発する一言一言を聞き漏らさないようにと、微動だにしない。
「お父さんは? えーん、えーん……。お母さんは?」
ガダンッ!
「おまえだぁっ!!」
「うあぁぁっ!?」
リックは突然の大声に思わず椅子からひっくり返って腰を床に打った。
「あっ、ぃたたたた……」
腰をさすりながら立ち上がり、「びっくりしたあ」とカヤナを見た。
「どう? これが怪談」
カヤナは得意そうに言うと、「さ、仕込みに戻らなくちゃ」と立ち上がる。
「本当なら今頃は、ちょうどこういう話にぴったりな季節のはずなんだけどなぁ」
彼女は片頬を膨らませて、「今日のメインは冷製パスタがいいかな」と続けた。
「怖い話って、やっぱり怖いですよね……」
「何言ってるの」
カヤナが、はは、と軽く笑う。
「怖くなかったら『怖い話』じゃないでしょ」
「そうですけど……ほら、こう、1人でどこかに行くのが嫌だな、って感じがするじゃないですか」
「まあ……そういうこともあるかも」
カヤナがにやっと笑った。
「そんなんじゃ、肝試しはムリね」
「キモダメシ?」
リックは首を傾げた。
「冷製パスタの名前?」
「なんでそんな豪快な名前の料理作らなきゃならないのよ。キモダが何か分からない」
「山で採れたキモダをふんだんに使った……」
「使ってない。っていうか、山菜か何かなの? それ」
一度は立ち上がったカヤナだったが、ふっと笑ってまた腰を下ろす。
「肝試しっていうのは、1人とか2人とか、少ない人数で夜に山をハイキングしたりすることを言うの」
「夜に? 危険じゃないんですか?」
「そこはランタンを持ったりして行くのよ」
「ふうん……」
少し興味がありそうな顔をしたリックを、カヤナが後押しする。
「みんなを誘ってみたら?」
「……キモダメシに?」
「そうそう」
彼女は人差し指を立てて、彼の前に差し出す。
「私は炊き出しとか、そういう準備をするから、リックはみんなと一緒に『こわーい』一晩を過ごしてみなさいよ」
「怖い?」
リックが再び首を傾げた。
「どうしてですか? ただハイキングするだけですよね? ……そりゃ、夜盗とかがいるなら、ちょっと怖いような気もしますけど……」
「その辺は、バートさんや有志の協力を仰ぎましょう。治安維持にも、一役買うかも」
カヤナはうまくごまかしているが、実際は違う。
リックや参加者を驚かせるための仕込み役というのも必要なのだ。リックの言う通り、ただ夜の林道を歩くだけでは、野生動物やら夜盗にあうリスクがあるだけになってしまう。
だが、さっきの彼の驚きようを見たカヤナは、どうしても彼がもう一度肩をすくめて飛び上がる瞬間が見たかったのだ。ちょっとしたいたずら心である。
「まあまあ!」
疑念を抱かせないよう、彼女は手を叩く。
「用意も必要だからね、早めにみんなに声をかけてみましょうよ!」
イベントシナリオ第6回参加案内
■スケジュール
2017/08/03 オープニング公開
2017/08/04 参加チケット販売開始(アクション受付け開始)
2017/08/12 参加チケット販売終了
2017/08/13 アクション締切
リアクション公開は9月上旬を予定しております。
■選択肢
・運営係(救護や警備、炊き出しなど、ほかの参加者のサポート役です)
舞台となる山の巡回も可能ですし、テントで待機することもできます。具体的に、どんな内容の手伝いをしてくれるのか、記述をお願いします。
・仕込み(物陰などに隠れて、脅かします)
アイテムや衣装など、どんな風に驚かせるのかをご指定ください。相手を故意に傷つける目的でなければ、魔法も使用可です。
・参加者(驚かされる側です)
驚かされる前の様子、驚かされた時のリアクションなどをお聞かせください。
共同アクション(グループアクション)がある場合は、必ず対象の方の名前を明記してください。
■接触可能NPC(下記に名前の無いNPCはリアクションに登場いたしません)
・誰でも接触可能
カヤナ・ケイリー(スタート/ゴール地点の仮設テントでスープを作っています)
リック・ソリアーノ(参加者です)
ジスレーヌ・ソリアーノ(参加者です)
レイザ・インダー(仕込みです)
ハビ・サンブラノ(仕込みです)
・特定の人が接触可能
バート・カスタル(森の中で警備をしています。警備係や、森の中に隠れて脅かすアクションを行う人は接触可能)
上記NPCを独占するようなアクション(〇〇と2人きりで肝試しをする、など)は必ずしも採用できるとは限りませんので、ご注意ください(ほかのPLからも同様のアクションが出ていた場合は、3人で肝試しに行くことになってしまいます)。
■担当ライターより
担当させていただきます、ライターの東谷です。
今回の舞台は、夜の林道。造船所の裏手に広がる森林で、肝試しを楽しんでいただければと思います。古典的な脅かしアリ、魔法を使った過激な脅かしアリ。驚く側も、思いっきり驚いたら反撃しちゃっても仕方ない……? メインシナリオには影響しませんので、やりたい放題楽しんじゃいましょう!
※メッセージカードを用いたNPCお誘いによる独占描写のシステムはなくなりました。
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