メインシナリオ/グランド第2回
『あなたのための希望のうた 第2話』



◆第一章 税の行方
 その日、領主の館の門前は税の引き下げを求める人々で騒然としていた。
 体調不良を訴える者の増加のことで港町のまとめ役であるリルダ・サラインを訪ねようとしていた伯爵のアシル・メイユールは、まずは門前の人々に落ち着いてもらうほうが先か、と報告に来た執事のエドモンドに向き直った。
「代表者はどなたですか?」
「それが……よくわからないのです」
「わからない?」
「はい……」
 エドモンドは困り顔で頷く。
「門番の話によると要求は税の引き下げが中心のようなのですが、代表者を立てて話し合いに来たという感じではないのです」
「それは困りましたね……」
 対応を間違えると暴徒化する危険性があるかも、とアシルは表情を厳しくした。
「ところで、客室の方々に異常はありませんか? 具合が悪いという方はいらっしゃいますか?」
「ええ、数人の方が訴えておられます。もう少しすれば、港町から主治医がおいでになるでしょう」
 この主治医とは、メイユール家の主治医である。ふだんは港町で町医者として働いている。
「厄介な病でないといいのですが」
 現時点での人口減少は、箱船計画の頓挫に繋がるかもしれないからだ。
「ひとまず、門前の方々の話を詳しく聞いてまいります」
 エドモンドは一礼してアシルの部屋を後にした。

 門前で騒ぐ様子を眺めていたマティアス・リングホルムは、埒が明かないと判断すると集団から抜け出した。
 そして、塀伝いに館の庭のほうに進んでいった。
 警備は門のほうに集中しているのか、ここは静かなものだ。
 マティアスは侵入口を探したが、今のところよじ登るのも困難な塀が続くばかりだ。
 対応に出ていたエドモンドに、館の住人の中に体調の悪い者は出ていないのか聞きたかったのだが、殺気立った港町の人の壁によりとても聞ける雰囲気ではなかった。
 と、塀の一部が鉄柵になっている箇所が現れた。
 隙間から中を窺うと、どうやら庭の中でも特に木々が集中している場所のようだ。鉄柵を見上げると、上部から木の枝がはみ出し葉を茂らせている。鉄柵の先端は鋭く尖っていた。
「……うん、気を付けよう。あれに刺さったら痛ぇじゃすまなさそうだ」
 マティアスは自分に言い聞かせ、慎重に鉄柵に手をかけた。
 垂直に伸びる鉄柵を上るには、頼れるものは腕力だ。
 こんなことなら何か道具を持って来ればと後悔しても遅い。
 どうにか鉄柵の先端に串刺しにされずに乗り越えた時には、額に汗がにじんでいた。
 あとは着地のみ、と少しずつ鉄柵を下りていくが、とうとう途中で握力が限界をむかえほとんど滑り落ちるように地に足を着いた。
 慌てて周囲を見回すが、人の姿は見えなかった。
 花木や草花に身を潜めて庭を進む。
 庭に面した回廊から館の中に侵入できたが、館内はずいぶんと静かだった。
 壁には風景画や人物画などがかけられている。
 周りに目を配りながら足を進めていると、角の向こうから何やら言い争う声が聞こえてきた。
 マティアスは慎重に壁に身を寄せて耳を澄ませる。
「どいて。このくらい平気よ。寝てるほうがかえっておかしくなるわ」
「ダメです。町でも具合の悪い人が増えているといいます。これ以上悪化したらどうするんですか」
「そうですよ、今日はお休みになるべきです。もうじきこの家の主治医が来るそうですから、その方の診察を待ちましょう」
「神殿の人達にも具合が悪い人がいるかもしれないでしょ。穴をあけるわけにはいかないの、わかるでしょ」
 会話の内容から、ルース姫達だと察した。
 一人、大人びた声の女性がいる。侍女の一人だろうか?
 神殿に行くとがんばっているのがルースだろう。
 二対一の攻防が続くが、ついにルースの感情が爆発した。
「ここが潰れたら、箱船に乗ることもできないのよ! 今日休んで明日に障壁が崩壊したら、死んでも死にきれないわ! こんなところで死んでたまるものですか!」
「あっ、待って!」
 駆け出す足音。
 まずい、と思った時にはもう遅く、小走りに角を曲がってきたルースとマティアスは鉢合わせになった。
 まさか人がいるとは思っていなかったルースは目をまん丸にして硬直する。
「いや、あの、怪しいモンじゃ……」
 ひどい言い訳だ、と心の片隅で思うも、焦る思考は陳腐な言葉しか言わせてくれない。
 そして、ほとんど間をおかずにルースを追ってきた二人にも見つかってしまう。
 一人はベルティルデ。もう一人は長身で黒髪ショートヘアの──と視界に入れた直後、マティアスの体は床に叩きつけられ後ろ手に腕を拘束されていた。
「侵入者か。何者だ」
 ベルティルデではない。黒髪の女性のほうだ。
「待て……待ってください! 別にここの人達に危害を加える気はないんだ! ちょっと様子を見に来ただけなんだ!」
「様子を見てどうするつもりだ?」
 ルースとベルティルデは、いつの間にか黒髪の女性の後ろに下がってマティアスに警戒の目を向けていた。
「港町の人のこと、知ってほしかったんだよ。貴族とか庶民とか、そういう垣根なしに協力してくれる人はいないかって……そう思ったんだ!」
「……」
「本当だって。嘘なんてこれっぽっちもねぇよ! いい加減痛ぇから放してくれ!」
「姫様、どうしますか?」
 マティアスを押さえつけたまま、女性は後ろのルースに尋ねた。
 少しの間があき、硬い声でルースが答えた。
「害意がないのは本当みたいね。でも、ちょっとやり方が強引なんじゃないかしら。この館に知り合いはいるの? もし初対面なら、どこの誰とも知らない人の言うことに、すぐに同意するかしら。仮にあなたが望むような貴族が見つかったとして、あなたはその人に何をしてほしいの? 外で騒いでる連中に味方してほしいの?」
「うっ……いっぺんに言うなよ……。俺が言いたいのは、税もそうだけど、こんな状況でも身分による格差が激しいのはおかしいだろってこと。港町じゃ、変な風邪がはやってて……」
「この館にも、寝込んでいる人はいるわよ」
「わかってる。だからこそ、みんなで解決していかないとダメなんじゃねぇのか?」
「力を合わせるのは当然のだけど、その場その場を仕切る者は必要だわ。それには身分という印が一番わかりやすいのよ。相応の報酬もね。その報酬をどう使うかは……個人の問題だわ」
 冷たく聞こえるルースの声だが、よく聞くと思うところがないわけではないようにも聞こえた。
 ルースはさっさと歩き出した。
 ベルティルデが慌てて追いかける。
 マティアスは、黒髪の女性に腕を引かれて立たされた。
「このまま一緒にここから出てもらう。姫様を止めるのは無理そうだからね」
 諦めたように彼女は言った。
 この女性は、ルースの護衛を務めるウォテュラ王国近衛隊隊長のサスキア・モルダーである、と後でベルティルデに紹介された。

 マティアスがピンチに陥っている頃、門前の集団に加わりながらも冷静にある人物を観察している者がいた。
 岩神あづまである。
 あづまが港町で経営する居酒屋兼飯処『真砂』には、いろいろな人がやって来て、さまざまな話をしていく。
 その中にいたアンセル・アリンガムという外国人の元騎士に、彼女は注意を払っていた。
 先日、店に訪れた際の言動が引っかかったからだ。
 領主の館で働いているアンセルは、領主アシルや現状に不満と不安を抱える者達にわざわざその感情を煽るようなことを言ったのだ。
 ふだんの温厚で落ち着いた振る舞いからリルダの信頼も得ている彼は、この集団が行き過ぎた行動に出ないよう止める役割を務めるような顔をして、実質、影から集団を率いて館の前に押し寄せた──。
 あづまの目には、そう映っていた。
 そしてもし、アンセルの目的がアシルに対するクーデターならば……。
 ここで集団が暴徒と化して、伯爵をはじめ貴族達との抗争になることだけは阻止したいとあづまは思っていた。
 斜め前方にアンセルはいる。その傍には、腰巾着のように付き従っているルスタン・チチュキンもいた。
 ルスタンがアンセルに何かを訴えていて、アンセルはそれに反対しているようだ。
 会話の内容までは、喧騒にかき消されて聞こえない。
 不意に、隣から苛立った胴間声が響いた。
 今までアンセルに気を配っていて気にならなかったが、隣の男はやや酔っ払っているようだった。
「おい、ジイさんじゃ話にならねぇ! 伯爵を呼んでこい! 俺が話をつけてやる!」
 男の勢いに、周囲が同調した。
 アンセルと一緒にいるのは、店では見たことがない。雰囲気からアンセルと気が合うとも思わなかったから、この集団に乗っかってやって来た者と考えていいだろう。
 ふと、アンセルに目を戻すと、ルスタンがアンセルからそっと離れるところだった。
 アンセルは門のほうを注視していて、ルスタンの動きには気づいていないようだ。
 あづまは、ルスタンの後をつけた。
 ルスタンは人々の隙間をするすると進んでいき、集団の端の前の方で止まった。
 そして上着の懐から何を取り出した。
 あづまは周囲の人々で身を隠してルスタンの手元が見える位置まで近づき、その手に石が握られているのを確認した。
 ルスタンは前の人を盾にして、エドモンドを狙っている。
「おやめなさい」
 とっさに踏み出し、あづまがその手を止める。そしてそのまま集団から引っ張り出した。
 人々はエドモンドを責めるのに夢中で、二人が抜けだしていくことなど気にも留めない。
「何だよアンタ……うおっ、真砂の女将さんじゃねぇか。へへっ、アンタも伯爵のヤローに文句言いに来たのか?」
 ルスタンは相手がよく行く店の主とわかると、とたんに警戒を解いた。
 あづまは厳しい表情のまま口を開く。
「伯爵に聞きたいことは確かにありますが、今日はそのために来たわけではありません」
「へぇ。じゃあ、何しに?」
「あなたのような軽はずみなマネをする者を止めに来たのですよ。今、エドモンドさんを傷つけて何になるというのです?」
「伯爵に俺達の本気を見せてやるのよ! あのジジイを泣いて帰らせて、伯爵を引きずり出してやるぜ」
 ルスタンの浅慮に、あづまは思わずため息を吐いた。どうやら思っていた以上に、この若者は幼稚だったようだ。
「おそらく石をぶつけられたくらいでは、あの執事さんはビクともしませんよ。逆に、伯爵にあたし達を取り締まる口実を与えるだけでしょう。その結果、話し合いの余地もなくなるでしょうし、下手すればもっと税を取られるかもしれませんね」
 ルスタンの顔色がみるみる悪くなっていく。
「な、なぁ、俺、まだ何もやってないからセーフだよな? あのさ、このことアンセルさんに言わないでくれないか? あの人には迷惑かけたくないんだよ」
「アンセルさんの指示で動いていたのではないのですか?」
「ち、違うよっ。あの人は確かに伯爵にはいい感情を持ってないけど……さっきだって、俺がこうすることに反対したんだ。ここで暴動を起こすべきじゃないって」
「そうでしたか。では、その言いつけを破ったというわけなのですね……」
「だ、だから、内緒にしといてくれよ、な? 店の売り上げに貢献するからさ!」
「……まぁ、いいでしょう。黙っていてあげましょうか。それと、お店のことは気にしなくていいですよ。これまで通り来ていただければ」
 行きますとも、とルスタンは大げさなほどに頷いた。
 それから、アンセルのところへ戻るルスタンを見送った時、特徴的な口調の女性の声が響いた。
 その女性──Drカーモネーギーは、人々を押しのけエドモンドにぐいぐい迫って言った。
「お主、さっさと伯爵に伝えるネギ! こんなに多くの人が不安になって、伯爵に何とかしてほしいと思ってるネギ!」
 エドモンドを守るように二人の門番がDrカーモネーギーを押し返そうとするが、彼女はそれ以上に押しを強めた。
「水の神殿の魔法具の改善の話はどうなったネギ!? 吾輩はいつでも準備万端ネギ!」
Drカーモネーギー、ここにいらしたのですか」
 どうりでどこを探してもおられない……、とエドモンドがこぼした。
「こちらの準備も整いました。大変お待たせいたしました」
 二人で話していると、後方の集団が騒ぎ始めた。
「何をごちゃごちゃ話してるんだ!」
「黙るネギ! これから吾輩がここの問題の一つを解決するネギ!」
 Drカーモネーギーはヤジを飛ばした方向へ言い返したが、人々はあまり信じていない顔つきだった。
 しかし、それよりも一刻も早く魔法具の研究に取り掛かりたいDrカーモネーギーは、エドモンドに向き直り資料をよこせとせっつこうとした。
 と、エドモンドの向こうに伯爵が来ていた。傍らには、騎士団長のアイザック・マクガヴァンが護衛についている。
 アシルは押し寄せた人々を見渡すと、
「こんにちは。皆さんは私にご意見があっていらしたのですよね。代表の方はどなたでしょうか?」
 先にエドモンドより代表者不明の知らせは聞いていたが、アシルは直接人々に尋ねてみた。
 これでわからなければ代表者を決めてもらい、日を改めて話し合いに持ち込むつもりでいたが、クラムジー・カープが進み出たことでその予定はなくなった。
「あなたが代表の方ですか?」
「いえ……ただ、これから申し上げることは、おおよそここの人達の気になるところだと思います」
「そうですか。では、どうぞ」
 アシルはやわらかくクラムジーに発言を進めた。
 公国の宰相だったというアシルという者は、一見するとどこにでもいそうな貴族だった。
 人を圧倒するような威圧感があるわけでもなく、思わず目がいくようなオーラがあるわけでもない。
 そのことが、話し下手なクラムジーの緊張を幾分かやわらげた。
「それでは、申し上げます。……ここに集まった人達をはじめ、多くの人が不安に思っているのは、先が見えないからかと。重税や箱船建造現場での不穏は、自分達が差し出す労力等が何のために用いられているのか、不透明に感じているからです」
 アシルは小さく相槌を打ち、クラムジーの話に耳を傾けている。
 クラムジーは続けた。
「住民は税や労働力を貴族方に差し出します。貴族方はその対価に何を住民にもたらすのでしょうか」
 一呼吸後、
「おおよそのことはわかりました」
 と、アシルは頷いた。
「では、まずは箱船計画の進み具合と、今ある問題についてお話ししましょう。まず、皆さんからお預かりした税ですが、大半が箱船計画に費やされています。造船所で働く人達への賃金、造船や積み荷への加工が中心です」
 他、水の障壁や人工太陽、その他マテオ・テーペの環境を維持している魔法具類のメンテナンス費用がある。
「食材が不当に貯め込まれているという噂もあるようですが、それらは全て保存食に加工して箱船に積み込むためのものです。海上では、食糧調達の手段がありませんから。──箱船は、二隻目は造れません。そんな余力はないのです」
 アシルの話に、クラムジーだけでなく住民達も口を閉ざして聞き入った。その代わり、納得がいかないことがあれば、すぐに問い詰めてやろうという目をしている。
「その箱船ですが、出航は半年後くらいの予定です。完成はそれより一ヶ月くらい前で、出航までに荷を積み込みます。……ここまで、大丈夫ですか?」
「ええ、続きを」
「次はマテオ・テーペの問題点です。こちらは皆さんもご存知の通り、障壁と人工太陽に関することです。箱船に重点を置いていることと、魔法具の改良には専門知識がいることもあり、手が回っていません」
 人々がざわめいた。
 無責任ではないか、という非難の目がアシルに向けられる。
 それらの影響を一番に受けるのは彼らだからだ。
 心を落ち着かせて聞いていたクラムジーも、わずかに目元を険しくさせた。
 アシルはその反応を当然のものとして受け止めた。
 そして、Drカーモネーギーをちらりと見てから言った。
「……ですが、これからはその問題も解決の方向に向かうでしょう。専門家が来てくださいましたから」
「そのとおりネギ!」
 Drカーモネーギーが胸を張り、人々に向けて宣言する。
「吾輩は、故郷では魔法鉱石を使った製品開発の分野で『魔鉱王』と称された者ネギ! まずは障壁を作り出している魔法具の改良から始めるネギ」
 どよめきが沸き上がった。
 どう見ても『魔鉱王』などという立派な称号で呼ばれるような見た目ではなかったからだ。半信半疑といった具合だ。
 Drカーモネーギーは、今日も変わらずボサボサで跳ね放題の髪に、ヨレヨレの白衣姿であった。
 今までとは違う意味で疑惑の目がアシルに向けられたが、彼はまったく動じていなかった。
 クラムジーは専門外ということもありあえてそこには触れずに、話を税のほうへ戻した。
「では、税率は変わらないと?」
「……いえ、皆さんが満足できるほどではないでしょうけれど、考慮しましょう。変な病のこともありますし、皆さんの力なくしては計画は成し得ませんから」
 この言葉で、ようやく人々の間の緊張がわずかに緩められた。
 アシルからは見えない位置にいたアンセルが、静かに踵を返して港町に戻っていくのを、あづまは少し離れたところから見ていた。
 その時のアンセルの目つきは鋭く、アシルへの変わらぬ不信をはっきりと見て取ることができた。
 それから少しした頃には、門前の集団は港町に引き返していき、数人が残るのみとなっていた。
 そのうちの一人はクラムジーで、彼は先日の活動でわかった地熱利用についてアシルに提案した。
「温泉も出た、地震もあった。地熱の利用は不可能ではないでしょう。ただ、詳しい調査となると、個人の手には余ります。人員と、機材類に都合はつきませんか?」
「そうですね……すみまんせが、機材はありません。ご覧のとおり、この町はもともと魔法具がほとんど普及していない土地なのです。この館にも、照明に多少使われているだけでして。実は、機会があれば試したいと思っていることがあるのですが……」
 アシルは、野菜などを地中に保存する室(むろ)というのを知っているかと尋ねた。
 クラムジーが頷くと、
「古代では住居としても作られていたそうですね。そういった住居なら、夜間の冷え込みも多少はやわらぐのではないでしょうか」
「地中熱、か……」
「ただ、理屈はわかっていても現物を見たことがないので、あまり現実的な案ではないのですが」
「障壁の改良が終わったら、人工太陽のほうも取り掛かるネギ。それまでの辛抱ネギ」
 Drカーモネーギーが、吾輩に任せろと胸を叩いたが、クラムジーは何かを考え込むように黙っていた。
 話に一段落が付くと、次にあづまがアンセルへの懸念を伝えた。
「アンセルさんが……?」
 アシルは少しショックを受けたようにその名前を呟いた。
「そうですか、彼がそんなことを……」
「放っておくのは危険ではありませんか? 今後も何をしでかすかわかりませんよ」
 目を伏せ、しばらく思案したアシルの決断に、あづまは形の良い眉をそっとひそめた。
「本当に、それでいいのですか?」
「ええ。放っておきましょう。それに……あの人とは、もっと前にどこかで会ったような……ああ、いえ、すみません。ですが、もしアンセルさんが港町の人を巻き込んでよからぬことを計画していたら、私かリルダさんに知らせてくれると助かります。他に、生活や農業に関するご提案がありましたら、もちろん私でもかまいませんがリルダさんにご相談なさったほうが、早くに行動できることがあると思います。港町のことは、ずっと任せてきましたので」
 それからアシルはアイザックに騎士一人を、エドモンドに馬車を用意するよう言いつけた。
 騎士にはDrカーモネーギーを水の神殿まで案内してもらい、馬車で送ってもらうのだ。
 あづまとクラムジーも一緒に馬車で送ってもらうことになった。

 

☆  ☆  ☆


 オーマ・ペテテが警備隊隊長のバート・カスタルを捕まえたのは、領主の館前での騒動が落ち着いてからのことであった。
「レイザからおおまかに聞いてたけど、人工の月ねぇ……。そりゃあ、夜番の時に月の光があるのはありがたいな。警備上でも心情的にも。何もない夜空を見るたびに、ため息が出るんだよなぁ……」
 寒いのは我慢できるけど、とバートは苦笑する。
 やはり夜番にあたる警備隊員は苦労が多いのだ、とオーマは改めて確信する。
 そこで、人工太陽射出機を利用した人工月の打ち上げについて、本格的に意見を聞いてみることにした。
「問題は、毎日使っている魔法具だから、できればもう一機あればいいかな。今使ってるやつの試作品はないの?」
「ん……聞いたことないなぁ。魔法具もそうだけど、今のマテオ・テーペはギリギリの資源でどうにか保っているんだ。だから、人工の月を打ち上げるなら、現状の物を使うことになるはずだ」
 答えたバートは少し考えた後、オーマを領主の館へ連れて行った。
 そして今、オーマは領主の館の客間で、アシルとアイザックと対面していた。
 こういう場面になるとは想像もしていなかったオーマだったが、これはチャンスだと気持ちを切り替え、人工月の有用性について話をした。
 一通り聞き終えたアシルは、小さくうなって考え込んでしまった。
 オーマはじっとアシルを見つめて反応を待った。
「警備隊としては、あると助かるのですね?」
 アシルはバートとアイザックに確認するように尋ねる。
 二人は、ほぼ同時に頷いた。
「特に最近は治安も悪いですから、ランタンだけでは視界が狭いと感じています」
「足元も危ないですし」
 アイザックとバートの言葉で、アシルの心も決まった。
 彼はオーマに視線を合わせると、人工月の開発許可を告げた。
「魔法研究所の所長に手紙を書きましょう。少しお時間をください。開発にはオーマさんも力を貸していただけますか?」
「それはもちろん。火属性だし、言い出しっぺだし」
 オーマは人工太陽の打ち上げにも協力している。魔法は得意なほうだから、人工月のほうにも力になれるはずだと思っている。
 アシルは手紙を書くために席を外した。
 思っていた以上に肩に力が入っていたようで、オーマはソファの背にぐったりと体を預けた。
「よかったな。夜のお月さんができるのを、楽しみに待ってるからな!」
 明るく言うバートに、オーマはここに来て初めて笑みを見せた。
 オーマはこの後訪れる魔法研究所の所長について聞いてみた。
「若い頃は剣術大会に出るような人だったそうだ。どうして研究者の道に進むようになったのかは知らない。ま、怖い人じゃないから」
「そ、そうですか……」
 アイザックの返事に、オーマは所長像を想像してみるが、もやもやとして具体的な像は浮かばなかった。若い頃は、ということは今はそれなりの年齢なのだろうか。
「たぶん、研究員が開発に当たると思う。おもしろい成果が出たら俺にも知らせてくれ」
「おもしろいって……毎日色が違う月とか?」
 オーマが思いつきを言うと、アイザックとバートはそろって笑った。
「今日は何色か気になってしょうがないよな」
「色のリクエストしてみたらどうだ、バート」
「ちょっと二人とも、まだ始まってもいないのに」
 開発には加わらない気楽さからか、騎士団長と警備隊長は勝手な想像をして盛り上がった。
 そこにアシルが戻ってきた。
「何やら楽しそうですね。オーマさん、この手紙を所長のジョージ・インスさんに渡してください。ここで話したことが要約されています」
 オーマは礼を言って手紙を受け取った。
 領主の館からオーマとバートは、貸し出された馬車に乗って研究所のある魔法学校へ向かった。
 ジョージ・インスは、60歳半ばくらいの男性だった。剣術をやっていたというだけあり、研究者にしてはしっかりした体格をしていた。眼光も鋭い。
「今日は客が多いのぅ……」
 ジョージはオーマをちらりと見ると、研究員を一人呼んだ。
 オーマと同い年くらいの明るい雰囲気の女性だ。
 ジョージは手紙を女性に渡すと、
「お前、こいつを手伝ってやれ」
 と、一言言って奥へ行ってしまった。
「……ふぅん、だいたいのことはわかったよ。すぐに人工月のを打ち上げられるかはわからないけど、まずは考えてみるね。……あっと、あたしはエリカ・パハーレ。よろしくね」
 握手を交わしたエリカの手は、細くても頼もしかった。
 それから二人は、エリカの机のある研究室の一つに移動した。
「それじゃ、まずはアイデア出しからいこっか。実現できるかは、後であたしが設計図を見て検討するよ」
 さっそくオーマは一つ考えを言ってみた。
「人工太陽の打ち上げ角度を1度でも2度でも低くすれば、太陽が地面に近づいて、地表が受ける熱量は上がるんじゃないかな」
「角度? 高度じゃなくて? たぶん、角度を下げても光が当たる面積が増えるだけだと思うよ。ほら、夏と冬の太陽の軌道を思い浮かべてみて。夏のほうが真上からカッとくるよね」
「……となると、角度はこのままで高度を下げる?」
「そうだね……難しいと思うけど、考えてみるね」
「射出機、壊れたりしないかな」
「しっかりメンテすれば大丈夫だと思うよ」
「人工月も上げるとなると、メンテ時間が短縮できたら助かるよね?」
「そりゃあね。でも、毎日のメンテはもともとそんなに時間はかからないんだ。月一回、じっくりやる時はそれなりだけど。だから、それほど心配はいらないと思う」
 その後、雑談も交えて話は進み、人工月用の改良が終わったらオーマに試し打ちをしてもらうということになった。

◆第二章 一人でも助けるために
 港町を中心に、体調不良を訴える者は少しずつ増えてきたという。
 町医者の話によると、薬を処方してもよくなるのは一時的で、数日経てばまた診療所に来るのだとか。
 症状は風邪の初期症状に似ているため、町の人も特に関心を持たずにいた。
 しかし、その数はじわじわと増えていき、気づいた時にはたくさんの人が不調に苛まれていたのだ。
 港町に医者は少なく、診療所も広くはない。
 患者は待合室に収まりきらなくなった。
 先日、町医者のビルを訪れたヴァネッサ・バーネットは、その日もビルを訪ね、今起こっていることについて情報交換をした。
「今のところ重篤な者はいない……。が、何度も体調を崩すことを繰り返すと、しだいに弱っていくだろう」
「そうなると、危険だね……」
「これは個人的な考えだが、原因は人工太陽だろうな。いや、人工太陽が悪いというわけではない。ただ、本来の太陽の恵みは得られておらんだろう。長い間、屋内のみで暮らし続けた者が不健康になるのに似ている……そう思ったんだ」
「なるほど……」
「他にも原因はあるだろう。何か思い当たったら教えてくれ」
「ビル先生、あたし、港町と造船所の間あたりに野外病院を設置しようと思ってる。ここで待ってる患者さんも受け入れられると思う」
「ああ、それは助かるな。それなら、リルダさんに相談してみるといい。きっと力になってくれるはずだ」
「わかった。じゃあ、そろそろ行くね」
 診療所を出たヴァネッサはその足で集会所へ向かった。
 リルダがいた一室にはアウロラ・メルクリアスもいて、二人で話し合いをしていた。
「話し中のとこごめん。ちょっとだけいいかな?」
 アウロラが頷くのを見て、ヴァネッサはリルダに野外病院のことを話した。
「それはいい案ね。前に市場で使われていたテントがあるから、それを使いましょう。帆布も保管されてたはずだから、患者さんに横になってもらうこともできるわ」
「ありがとう。遠慮なく借りるよ。ところで、二人は何を?」
「調子を崩して畑仕事に出られない農家の人は、どれくらいいるのかと思って……」
 答えたのはアウロラだった。
 リルダのところに集まった情報によると、だいたい四分の一くらいの農家で仕事を休んでいるという。しかし、すべてではない。
「動ける人に呼びかけて、お手伝いに行こうと思ってるの」
 そう言ったアウロラの顔を見て、ヴァネッサは渋い表情になった。
「あんた、具合悪そうだよ。リルダも。二人とも、今は仕事は休んだほうがいいと思うな」
 医者として当然のことを言ったヴァネッサに、しかし返ってきた返事は二つのNO。
「これくらい、平気よ。休むのは、一段落着いてからにするわ」
「私も……こんな時にこそ、みんなに恩返ししないと」
 一応予想していた返答に、ヴァネッサは深いため息を吐いた。
「そう言うと思ってた。仕方ない、その場しのぎになるけど……」
 ヴァネッサは地の魔法を用いて二人の症状をやわらげた。
「無理はダメだよ」
 どこまで効果があるかわからないが、念のため、釘を刺しておいた。

 

イラスト:じゅボンバー
イラスト:じゅボンバー

 野外病院にヴァネッサが選んだ場所は、開けた草地だった。西には港町が、南には畑地域を挟んで造船所がある池がある。
 テントの設置には、プティ・シナバーローズの他に港町の男達も加わった。
 そしてテントが立った頃、リュネ・モルが廃材を積んだ荷馬車を引いてやって来た。
「途中でここで野外病院を開くとききましてね。こちら、造船所の廃材なのですがお役に立てればと思い、運んできました」
 リュネが荷を覆っていた麻布を半ば程めくると、その下には形は不揃いだが木材がたくさん積んであった。
「男爵には、ちゃんと許可を得てありますよ」
「これはありがたいね。さっそく火を焚こう」
 健康でかつ動いていれば暖かいくらいだが、具合の悪い人にはやや肌寒い気温だ。
 火を熾すのはミリュウが引き受けた。
 準備が着々と進む中、リルダとヴァネッサ、アウロラは邪魔にならないところで情報の共有を行っていた。
 今わかっていることは、主にこれらである。

・町医者のビルによると、少し前から体調不良を訴える患者が増えてきていた。
・ビルの見解では、この不調の原因は環境(日光不足)だろうということ。
・患者は主に港町に多い。これは人口が港町に集中しているからと思われる。
・今のところ死人が出た知らせは受けていない。(すべてを見て回ったわけではない)

 そこに、リュネが参加してきた。
「いやはや、力仕事はどうも……」
 と、苦笑している。
 そして、現時点の情報を記した紙を見ると、
「なるほど。ちなみに、造船所でもちらほら出ていましたよ。ですが、基本的に頑丈な人達ですし、宿泊所では看病してくださる方がいますので、私はこちらに来たのです。後は……貴族や学校はどうなっているのでしょうね?」
 リュネの疑問にリルダが答える。
「わからないわ。でも、学校には先生方もいるから、医者が必要と判断すればここに来ると思う。貴族のほうは、まったく不明ね」
「……そうですか。ふむ……不調の原因は環境、ですか。私も何となくそう感じていましたが、ビル先生は日光不足とお考えなのですね」
「あなたは違うの?」
「水ではないかと」
 その予想の恐ろしさに、リルダは言葉を失った。
「まだ予想の段階です。これから周辺の井戸水を見てきます。くれぐれも生水は飲まないでくださいね」
「そうするわ」
 リルダは慎重に頷く。
「それと、可能ならハザードマップを作りたいのですが」
「じゃあ、先に一緒に集会所に寄ってくれる? 地図があるわ。家主も名前も入ってるから役に立つと思う」
「お借りします」
「アウロラ、後でまた情報交換しましょう」
「ええ。いってらっしゃい」
 リュネとリルダはすぐに支度を整えて調査に出向いた。
 野外病院の準備はすでに整っていた。もしかしたら、そろそろビルに勧められた患者が来るかもしれない。
 二人と入れ替わるように、リーリア・ラステインが訪れてきた。
「旦那が体調崩しちゃってさ……お医者さんとこ行ったら、ここを勧められたんだよ」
「それじゃ、あたしが診察しよう。旦那はどこだい?」
「あっちで休んでいるよ」
 ヴァネッサを連れて、リーリアは旦那のところへ行った。
 診察を終えたヴァネッサに、リーリアは結果を尋ねた。
「さっきリルダとアウロラも診たんだけど、何となく似ているね」
「……というと?」
「うん……簡単に言うと、弱ってる。ひとまず、体を温めるようにして。それと、冷たいものは食べないように。今、ヒーリングをかけたから少し楽になったと思うけど、またぶり返す可能性もある」
「ここに来る途中、伝染病じゃないかって噂も聞いたんだけど……」
「どうかな……そういう感じはしなかったけど。今、井戸水を見に行ってくれてる人がいるんだ」
「変なばい菌じゃないといいねぇ。農家のみんなは大丈夫かねぇ」
 リーリアは心配そうに表情を曇らせる。
 それなんだけど、アウロラが加わってきた。
「リルダさんのところに集まった情報だと、だいたい四分の一くらいの人が体調を崩してるんじゃないかって。私、これから一通り見て来ようと思って」
「よし、あたしも付き合うよ。ヴァネッサ先生、薬なんかはあるかい?」
「薬よりも、滋養のあるものを食べさせたいところだよ」
「滋養のあるものねぇ……イモ粥かパン粥くらいしか思いつかないねぇ」
「それでもいいさ。ひょっとしたら、だるくて何も食べてないかもしれないからね」
「それはいけないね」
 食べないと力が出ないから、と頷くリーリア。
 アウロラとリーリアはさっそく農家を訪ねて回ることにした。
 ちなみにリーリアの旦那は、一人で帰れるからと、気に掛ける妻の背を押したのだった。

 ピア・グレイアムは野外病院のことを知ると、『ベーカリー・サニー』の店内に案内の張り紙を貼った。
 また、訪れた客にもこのことを話した。
「野外病院かぁ。町の先生のとこはどこも列になっててね、諦めて寝てようかと思ってたんだ。歩けない距離じゃないから行ってみようかな」
 ある男性客は、そう言ってホッとした笑みを浮かべていた。
 昼過ぎ、アウロラとリーリアが訪ねてきた。
「よかった。あんたは元気みたいだね」
「リーリアさん、いらっしゃい。アウロラさんも。町の様子はどうですか? まだ診療所には列ができていると聞きましたが……」
「まぁね。何日かは続くんじゃないかな。それでさ、農家を回ってきたんだよ」
「どうでした?」
「ほぼリルダさんの情報通りだね」
「でも、重症者はいなかったから、それは良かったかな」
 リーリアに続くアウロラの報告に、ピアは安堵した。
 アウロラは野外病院の様子とリルダとまとめた情報について、ピアにも話した。
「そうですか。農家のお手伝いは、手分けしてやりましょうか。後、夕方頃になると思いますが、お店のパンを野外病院に差し入れしますね」
「きっと喜ぶよ。あたしもパン食べてから行こうかね」
 すると、そこにトモシ・ファーロがドアを開いて入ってきた。一緒にリューク・クラインノイマン・ヘントもいる。
「すぐそこで会ったんだ。リュークは農家の手伝いをするって言うから、ここなら情報集まってるかと思って」
 トモシが簡単に説明した。
「おお~、頼もしいね。よろしく頼むよ。今ちょうどそのことを話してたのさ」
 リーリアは、人手がいりそうな農家を挙げいった。
 それからピアの提案で、各自の得意分野で手伝う内容を手分けしようということになった。
 その結果、体力がいりそうなところはリーリアとアウロラ、リュークが、それほどでもないところはトモシが、それぞれ重点的に行うことに決まった。
「僕は、住民の様子を見に行くよ。万が一、倒れてたりしたら大変だからね」
「ノイマンさん、野外病院のことも広めていただけますか?」
「そのつもりだよ。町医者はどこも手一杯みたいだし」
「よろしくお願いします」
 ピアは店に残り、野外病院の宣伝と客との会話から情報収集をする。
 みんなが店を出て行った後、ピアは食べるのが億劫になっている人でも食べやすいように、パン粥も追加することにした。

 ノイマンはまずピアの店の周辺から始めることにした。
「こんにちはー」
 と、呼びかけてドアをノックする。
 少しすると、中年女性が顔を出した。
「どちら様で……?」
「魔法学校所属のノイマン・ヘントといいます」
 ノイマンはこの家を訪れた目的を話した。
「今のところ、私も主人も健康ですけど……不安なんですよね。いつか、とんでもない病気が発生するんじゃないかって。話に聞いたことがあるんですけど、村が一つ滅びるような疫病が流行ったところもあったとか。ここは障壁に閉ざされているでしょう。逃げ場なんて、ないんですよね……」
 ノイマンは不安を吐露する女性に丁寧に頷いた。
「僕を含め、今、原因を探っている人が何人もいます。それでですね、ヴァネッサ先生が言うには……」
 ノイマンはアウロラ達が聞いてきた指導を伝えた。
「わざわざありがとう。やってみるわ。あなたも、気を付けてくださいね」
「はい。もし、調子が悪いと思ったら野外病院を訪ねてみてください」
 家を後にしたノイマンはその後も家々を訪ねながら、この件の原因について考えていた。
 町医者のビルやリュネも考えたように、環境──住環境に問題があるせいではないかと、彼は思った。
 そこで今度は倉庫やログハウスで暮らしている者をあたってみることにした。
 そこから得た情報を集めて、改めて探ってみる。
「僕達の力でどうにかできる原因だといいけどね」
 不安はそこだった。

 アウロラ、トモシ、リーリア、リュークの四人は、最初に訪れた農家の畑仕事の手伝いを始めた。
 畑仕事は初めてだというリュークに、アウロラとトモシが教えながら作業をする。
 リーリアは、顔色の悪いこの家の三人のために、台所を借りてイモ粥を作っていた。
 リュークはふだんは左腕に巻いているバンダナを額に巻き、気合を入れた。
 トモシはさっそくニンジン畑の雑草を抜きながら、にこにこと話しかける。
「いい葉っぱだ。きれいだよ、よく育ったねー」
「え……何に話しかけて……?」
 目を丸くするリュークにアウロラが答える。
「植物は褒めると元気に育つんだって」
「へぇ~、ひょっとして、箱船も褒めると頑丈にできあがるかな」
「そうなるかもしれないね」
「成功したら大手柄だ」
 アウロラに続きトモシが調子よく言うと、リュークも何やらその気になってきた。
 ふと、トモシは造船所は大丈夫なのか聞いた。
「数人が休みをもらってたけど、作業に支障はないよ。俺が今日こっちに来ることは、フレン所長の許可をもらってるから心配いらないよ」
「じゃあ、とことん付き合ってもらおうかな」
「あはは、お手柔らかに~」
 この日、最後に訪れたのは少しの畜産業も営んでいる農家だった。
 トモシとアウロラは畑に行き、リーリアとリュークは家畜小屋を担当した。また、トモシは水瓶に水も満たしておくことになった。
 リーリアより少し年上の農家の妻が言うには、具合が悪いのは旦那のほうだとか。ふだん二人でやっている仕事だけに、一人では手が回り切らなかったのだという。
 リーリアは、わかるよ、と頷いた。
「旦那のことも気になるしね。あたしのとこも、朝、野外病院に連れてったところだよ。まだ行ってなかったら、明日にでも診てもらったらどうだい?」
「そうね、それがいいかもしれないわ。……ところで皆さん、終わったら軽く食事でもしていってください。たいしたものは出せませんけれど」
 リーリアが遠慮しようとした矢先、
「じゃあ、おいしい肉じゃがをお願いします~」
 リュークがすかさずリクエストを出した。
 しかし、農家の妻は肉じゃがという料理を知らなかった。
 東方出身者なら知っている可能性もあったが、彼女は生まれも育ちもこの港町だったのだ。また、ほとんど外食もしないので、『真砂』という店は知っていても、そこで食事をしたことはなかった。
 リュークは肉じゃがのことを軽く説明した。
「そういう料理があるの……。今度、東方料理のお店を覗いてみようかしら」
「きっとおいしいと思うよ。俺も、国を出て旅をしてなかったら知らない味だった」
 仕事の後、振る舞われたのはここでとれたミルクを使った、やさしい味の煮込み料理だった。
 こうして順番に回っていったが、さすがに一日で全部を回りきることはできず、日数をかけて手伝うことになった。
 ピアのところに戻ってから、トモシは先日始めた試験用の畑の様子を見せてもらった。
 全員で店の裏側にある畑へ行き、ソバとハーブの生長具合を観察した。
「ソバですが、葉も枯れていませんし、茎もピンとしてます。お花もかわいいですねっ」
 ピアはにこにこしながら、ソバの葉を指先でチョンとつついた。
「ソバはもっと伸びるから、倒れないように土を寄せておこう」
 言って、トモシはソバの根元に土を集めた。
 それから、少し前に耳にしたことを話す。
「野菜とハーブを一緒に育てると、悪い虫を追い払ったり、味が良くなったりするらしいよ」
「さっそく試してみましょう。そうですね……タマネギを育てている畑でやってみましょうか」
「終わったら、リルダさんに報告だね」
「イヴェットさんのところには、マルティアさんが行ってます。皆さんが帰って来る少し前に来てくれたのですが、ほうれん草は元気に育ってるみたいですよ。ここもそうですが、やはり堆肥効果でしょうか」
「そうかもね。だとしたら、家畜にも元気でいてもらわないとね」
「税の引き下げ要求、どうなったんだろう」
 ふと、こぼしたリュークの疑問に、ピアが嬉しそうに答えた。
「お客さんから聞いたんですけど、考慮するというお返事をいただいたそうですよ。どれくらい軽くなるかは、これから告知されるんでしょうけど」
「そうかー! そいつは良かった」
 ここで、その日は解散となった。

 翌日、イヴェット・クロフォードマルティア・ランツと共にほうれん草畑に出ていた。
 生長の早いものは、もう収穫してもいいだろう。
 ほうれん草を育てているのは、畑の一部分だ。連作障害を避け、土を休ませることで次に育てる作物の状態を良くする効果を狙っている。
 寒冷な土地で育つ野菜なので、水やりにさえ気を付けておけば、今の環境には適しているといえる。
 イヴェットが水の魔法を使えるのも幸いだ。
 それでも……と、マルティアは心配顔だ。
 ほうれん草はこれで良くても、他の野菜には日光が足りないのだ。
「間引きしたものも食べられる点はいいですね。ほうれん草自体、栄養が豊富ですし」
「いろんな料理に使えるところもね」
「ええ。……マルティアさん、どうしたんですか? 何か悩み事でも?」
 イヴェットに指摘され、マルティアは苦笑する。
「作物に必要な熱量のことなんだけどね……どうもうまくいかないの。どうしても火がついちゃうの」
 人工太陽では足りない分を補おうと、マルティアは火の魔法でいろいろな工夫を試みてきたのだが、熱だけを生み出すことはうまくいかなかったのだ。
 けれど、マルティアはここで諦めることはしなかった。
 まだ妙案は浮かばないが、ここで考えることをやめてしまったら、食糧問題は永遠に解決しないと思っている。
「そうでしたか。属性が違うので、一緒に研究することはできませんが……でも、あまり根をつめすぎないようにしてくださいね。少し、顔色が悪いですよ」
「そ、そうかな? 大丈夫よ、体調は悪くないから」
 頬を押さえ、慌てるマルティア。顔色が悪いのは、昨夜遅くまで試行錯誤したせいだろう。
 その時、畑の向こうから二人に呼びかける声があった。
 見ると、リルダ・サラインとジスレーヌ・ソリアーノが手を振っていた。傍らには荷車がある。
 二人のところへ行くと、リルダが荷車から一抱えもある麻袋を一つ下ろした。
「石灰よ。道路整備用にとっておいた貝殻を砕いたものなの。できるだけ細かくしたつもりなんだけど、使えるかしら」
「見せてください」
 イヴェットは袋の口を開き、中身を手にすくった。
「こんなに細かく……たいへんだったでしょう」
「細かくしておかないと、根を傷つけてしまうのよね?」
「ありがとうございます。有効に活用します」
「良かった……。ねぇ、あの畑で育てているのはほうれん草?」
 聞かれて、イヴェットは生長具合について話した。
 それから、マルティアが気にかけている熱量についても。
「そうなのよね……このままだと、先細るばかりで」
 その時、熱心にほうれん草を見ていたジスレーヌが「あの……」と声を発した。
「畑を増やすのはどうですか? 畑が増えれば採れる量も増えると思うんですけど」
 しかし、リルダをはじめ、イヴェットもマルティアも「う~ん」とうなり、すぐには賛意を示さなかった。
 代表して、リルダが簡単に畑地を広げられない理由をあげる。
「新しく畑にできそうなところは、ほとんど森林地帯なの。そこを開拓するとなると、かなりの労力がいるわ。それに、それがうまくいったとしても、きちんと農業してくれる人がいるかどうか……」
「町でごろごろして何もしていない人が、たくさんいるじゃないですか。そういう人に、土地を貸したらどうですか?」
「うん……森林の開拓か……そういえば、森を畑にするために一定の範囲を焼く方法があったわね」
「焼き畑のことかな?」
 思い当たったマルティアが言うと、それよ、とリルダが手を叩く。
「そうね、問題点はたくさんあるけど……」
「私、人工太陽の打ち上げにいつも参加してるんだけど、今以上に性能の良い太陽を作るのは、今のところとても難しいそうね。それなら、他のところでいろいろ試してみなくちゃ。失敗したって、ちゃんと原因を調べて再挑戦よ、何度だってね」
 迷うリルダだったが、マルティアの前向きな言葉で気持ちが固まった。
「ありがとう。何とかまとめてみるわ。伯爵から許可をもぎ取って、道具は造船所から借りるしかないかしら。後は、人ね……」
 みんな力を貸してくれるかしら、とリルダは住民の説得が一番苦労しそうだと思った。
 それから、四人でほうれん草畑の手入れと収穫を終えると、イヴェットが麦粥を作りみんなで軽く腹ごしらえをした。
 麦粥には、ハーブの他、生長が早かったほうれん草を摘んで入れてある。
 食べ盛りのジスレーヌは、おいしいを連呼しながらあっという間に器を空にしてしまった。
 イヴェットは微笑ましそうにその顔を見ていた。
「栄養のある食事でお腹が満たされれば、少しは希望が持てそうな気がしませんか?」
「それに、これだけおいしければ力も沸いて来るわよね」
 マルティアの言葉にジスレーヌが何度も頷く。
「私、もっともっとお手伝いします!」
 食事の後、イヴェットが先日堆肥を分けてくれた農家へ報告とお礼に行くというので、マルティアはついて行くことになり、リルダとジスレーヌは集会所へ戻ることになり、彼女達はそこで別れた。

☆  ☆  ☆


 この日も、ユリア・ジグモンディはいつものように港町を巡察していた。
 よく手入れされ磨かれた鎧に帯剣し、道行く人に丁寧に挨拶をしながら歩く姿は、すでにお馴染みのものである。
 体調を崩す者が多く町に不安が満ちる中、変わらないユリアの姿は見る人に安心感を与えた。
 しかし、彼女は今日はもう二回、野外病院まで患者に付き添っていた。
 最初は、医者に診てもらうことを渋る父親に手こずる息子の手伝い。
 次は、人が住んでいる家の様子を見に行ったら、真っ青な顔色で一人で医者のもとへ行こうとしていた中年男性に付き添った。
 それからは何事もなく見回りを続けていた時、おいしそうな匂いを漂わせる『ベーカリー・サニー』の前を通りかかった。
 念のため、顔を出しておこうと、ユリアは店の扉を潜る。
「こんにちは。公国海兵騎士の者ですが、こちらはお変わりありませんか?」
 かつて、コーンウォリス公国にあった軍隊には、陸軍と海軍があった。海軍の規模は陸軍より小さく、ユリアはそこに所属していた。
 大洪水後は海兵騎士としての仕事はなくなってしまったため、主に町の警備に転じている。
 店の主人のピアが、笑顔で応じた。
「ええ、いつも通りです。ユリアさんもお疲れ様です。今日のお昼ごはんは、もう決まってますか? まだでしたら、こちらの肉饅頭とお惣菜はどうですか? あまいクリームを入れた蒸しパンもお勧めですよ」
「ありがとう。それじゃあ、いただいていきますね」
 ユリアがトレーに乗せてきたパン類や惣菜を、ピアは丁寧に紙に包んだ。
 ふとユリアはピアの頬の色が、いつもよりくすんでいるように見えた。
「無理をしてはいけませんよ」
「……はい、大丈夫です。そうだ、野外病院のこともよろしくお願いしますね」
「わかりました。おかげで町医者もだいぶ助かっているようですよ」
「あ、もし行くようなことがあったら、ヴァネッサさん達にもきちんと休んでくださいと伝えていただけますか?」
「ええ、お伝えします。ピアさんも、くれぐれも気を付けて」
 そうしてユリアは店を出て、太陽が中天を過ぎた頃に公園で昼食を採った。
 そういえば、ここ最近は喧嘩騒ぎは起きていないようだ、と気づいた時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 残りのパンを食べ終え手早く片付けて声のしたほうに目を向けると、いつか見たごろつきが二人何か言い合っていた。
 今度は仲間割れか、と様子を見に行く。
「そんなに大声を出されて、どうかしましたか?」
 振り向いた二人がそろって「あっ」と声をあげる。
「てめぇはいつぞやの……っ」
「あんた、いいとこに来てくれた」
 同時に開いた口から出た言葉は、まったくそろっていなかった。
 直後、ユリアに助けを求めたほうが片割れを押しのけてまくし立てる。
「こいつ、食欲落ちるくらい具合が悪いのに、医者に行こうとしねぇんだよ。あんたの馬鹿力で引きずってってくれねぇか!?」
「おい、余計なこと言うなよ。こんなのほっときゃ治る」
 彼の言い草は、最初に出会った父親のものにそっくりだった。年齢は息子のほうに近いが。
 思わず笑みがこぼれそうになるのをこらえ、もう一人のほうに向きなおる。
「食欲が落ちているのはいけませんね。町医者は混んでいるので、野外病院のほうへ行きましょう。手伝います」
「ありがてぇ!」
 ユリア達は両側からがっちりと固め、男の抵抗を聞き流し野外病院を目指したのだった。
 ユリアはもうすでに何度も行き来している野外病院だが、ごろつき二人はこの時が初めてだった。
 診察場所と待合場所にはテントがあり、少し離れたところには木が組まれて火が焚かれていて、布類が干されていた。さらに診察場所はきちんとカーテンで個別に仕切られている。
「な、何だよ……けっこう本格的じゃねぇか。もっと怪しい感じだと思ってたぜ」
「患者を診ているのは、本物の医者ですよ」
 ユリアの言葉にごろつき達は感嘆のため息をもらした。
 その時、後方で馬車が停まった。
 港町から旧天文塔へ通う火の魔術師を乗せる定期便だ。
 最初に降りてきたのは、銀髪の小柄な少女だった。
 彼女に手を引かれ、三十代くらいの男性がふらりと足元も覚束なく出てくる。
 さらにもう一人、五十代くらいの女性。こちらは元気そうだ。
 三人がユリア達のほうに歩いて来るにつれ、会話の声も近づいてきた。
「……医者なんて、大げさだなぁ。寝てれば治るよ」
「風邪で命を落とすことだってあるんです。油断大敵ですよ」
「エリスちゃんの言う通りだね。保健の先生も、医者に診てもらったほうがいいって言ってただろ」
「それにもう着いちゃいましたから、観念してください」
「わかりましたよ、お二人に従いますよ……」
 どことなく自分達と似たような状況なのだな、と眺めていたユリアは、不意に銀髪の少女──エリス・アップルトンと目が合った。
 彼女のほうもこちらを見て同じように感じたのか、苦笑を浮かべる。
 二組は並ぶように歩き、受付へと進んだ。

 五十代の女性のほうは家の様子を見てくると言って、帰っていった。
 そのため、火の魔術師にはエリスが付き添うことになった。
 彼は遠慮していたが、相手が立派な大人とはいえ、ふらついている人を一人にはできなかった。
 診てくれたのは、一見格闘家に見える医者だった。ミリュウである。
「そこの寝台に寝て腹を見せろ。……どうした、娘。安心しろ、父親は我が救ってやる」
「いえ、娘じゃありません」
 エリスは慌てて否定する。
 そして、おずおずと切り出した。
「あの……わたしにお手伝いできることはありませんか?」
「手伝い? そうだな……貴様、魔法は使えるか?」
「は、はい。水魔法を……」
「ちょうどいい。外に洗濯物があっただろう。あれはすでに煮沸消毒されたものだ。乾かして持ってきてくれないか?」
「全部、先生のものですか?」
「いや、他の先生の分もある。区別はないから、適当に分けて持ってきてくれればいい」
「わかりました。行ってきます」
 エリスは、ミリュウと火の魔術師に会釈して診察室から出た。
 洗濯物が干してある一角へ行くと、受け付けをしていた青年──プティが乾いた洗濯物を竿から下ろしているところだった。
 丁寧だったが愛想のなかったプティに、エリスは一瞬気おくれしたが、深呼吸をして気持ちを立て直すと、思い切って声をかけた。
「あの、ミリュウ先生に言われて洗濯物を乾かしに来たのですが」
「……ああ、水の魔術師だったんだ。そこ」
 指さされた物干しざおを見るエリス。
「そこのが生乾きなんだ。よろしく」
「はい、わかりました」
 エリスはすぐに魔法の発動準備を始める。
 まずはすぐに乾かせそうな手ぬぐいから。
 この大きさなら難なく乾かすことができる。
 乾いた順に籠に取り込んでいると、プティに見られていることに気づいた。
「ちゃ、ちゃんと乾いてますよ……!」
「ああ、いや……器用に魔法を使えるんだなと思って。俺はそこまではできないから」
「そんな、わたしもまだまだです。魔法のことだけじゃなく、いろんなことに迷ってばかりで。ですから、まずはできることからやってみようと……」
「ふぅん」
「何でも経験してみて、それがいつか航海に出た時に役立つかも……なんていうのは、甘いでしょうか」
「さぁね。けど、悪いってことはないだろ」
「そうですよね……っ。ええと、この大きな……これはシーツですか? これを乾かしたら、次は何をしましょうか?」
「たたんでおいてくれ。その間に、煮沸消毒が終わった分を持ってくる。俺が干すから、また乾かしてくれ」
 エリスは頷き、さっそくシーツを乾かしにかかった。
 プティが干している間に、エリスが来る前に乾いた分も含め、均等に分けてミリュウ達のところへ届けにいく。
 最初にミリュウのところへ行くと、連れてきた火の魔術師はもう診察が終わっており、知らない人が診察を受けていた。
 ミリュウがエリスに気づくと、部屋の隅にある籠を目で示した。
「終わったものはそこへ。またたまったら呼ぶから、少し休むといい」
 すると、患者が急にこんな質問をした。
ミリュウ先生は、具合悪くはならないんですか?」
「当たり前だ」
 ミリュウは即答する。
「我は天才医者ぞ。医者の不養生などという凡人のためだけにあるような言葉、この我に適用されるわけがなかろうッ!」
「ひぃっ、わ、わかりましたよっ」
 患者はミリュウの迫力にすっかり逃げ腰だ。
 もちろん、ミリュウは逃がさない。まだ施術が終わっていないからだ。
 エリスも、彼のよくわからない自信あふれる言葉に気圧され、そっと部屋を後にした。
 しかし、ホッとする間もなく、プティが誰かと言い合っている声が聞こえてきた。声を荒げているわけではないが、苛立っているのはわかった。
 見ると、プティは新たに来た女性二人の応対をしていたが、そのうちの気の強そうなほうと何故か険悪になっているようだ。
 髪を一つにまとめ肩にたらした気の強そうな女性を、メイド服の女性がたしなめる。
「姫様、あまり怒るとまた眩暈を起こしますよ」
「何でもないって言ってるのに……ベル、館に戻りましょう」
 プティは頑ななルースにため息を吐くと、話す相手をベルティルデに変えた。
「ステラならヴァネッサのとこにいる。呼んでくるから、この人を逃がさないでくれよ」
「はい。よろしくお願いします」
 気迫のあるルースに比べると頼りなく見えるベルティルデだが、プティは一度ルースを軽く睨んでからヴァネッサのところへ走った。
「ここでのんびりしているヒマなんかないのに。ヘナチョコ達に力が出ない分、私がやらなくてどうするのよ」
「姫様、落ち着いてください」
「あの、よかったら向こうのテントで休んでください」
 エリスは、患者を立たせてはおけないという使命感から、二人に声をかけた。
 ベルティルデがやさしく微笑んで礼を言った。
「ありがとうございます。姫様、強がりはその辺にして座らせてもらいましょう」
「ベル、知ってる? 医者のいるところに行くと、かえって病が悪化することもあるのよ。具合の悪い人が大勢いるからね」
「それを言われると言葉もありませんが……」
 エリスに待合所となっているテントに案内された二人は、ステラ・ティフォーネが来るまでだいたいこんな調子のやり取りをしていた。
 ヴァネッサの手伝いをしていたステラがプティに呼ばれて待合テントへ行くと、ベルティルデが立ち上がって会釈をした。
「お忙しいのにすみません。エドモンドさんにステラ様がこちらにいらっしゃると聞きましたので、お力をお借りしたいと思いまして」
「姫様の具合がお悪いと聞きましたが……お熱はありますか?」
「微熱が出ています」
「騒ぐほどのことじゃないわよ」
 なおも突っぱねるルースに、戻ってきたプティがとうとう叱りつけた。
「うるせぇ! いいから黙って診察受けろ! 悪化してから治すほうが時間かかるだろうが」
 ルースが呆気に取られている間に、ステラとベルティルデはルースをヴァネッサのところへ連れて行ったのだった。
 診察室に困った姫を押し込んだ後、ステラは二人がわざわざこの野外病院に来た理由を尋ねた。
 医者ならメイユール家の主治医が館にいるはずだからだ。
 ベルティルデは、困ったようにため息を吐いて言った。
「神殿に行く前に診てもらおうとしたのですが、いろいろあってできませんでした。姫様のことですから、館に戻った後もお医者様にかかるのは嫌がると思いまして、御者に頼んでこちらに連れてきていただいたのです」
「あらまぁ……。よく途中でばれませんでしたね」
「疲れていらしたのでしょう。うとうとしていましたから」
 ステラは少し疲れた顔をしていたルースを思い出した。
 それから、今日のことを振り返る。
 訪れる患者は、波はあれどほとんど途切れることはなかった。
 それなのに、野外病院での働き手は少ない。
 アシルのところへ訴えに向かった人達の何人かでも手伝ってくれればと思ったが、思い返してみれば、不満の一因に貴族の一部の放蕩の噂があったのだ。
「本来であれば、私達貴族がここの未来を真摯に考え、民を導かなければならなかったのに……」
 ベルティルデが小さくを息を飲む声がした。
「そう……そうですね。わたくし達がぼんやりしていたばかりに……。もっと、一つ一つを丁寧に考えなくてはなりませんね」
 ベルティルデは、先日、神殿長のナディア・タスカに打診して今頃はあちこちを回っているだろう二人を思い出した。
 彼女のような発想を、ベルティルデは持つことができなかった。
「どうしました? 気分が悪くなりましたか?」
 ステラに呼びかけられ、ベルティルデはハッと顔を上げる。
「いいえ、少し考え事をしていました。そろそろ診察が終わる頃でしょうか。ステラ様、どうもありがとうございました」
「私は何もしていませんよ。お大事になさってくださいね」
 ちょうどその時ルースがヴァネッサと共に出てきた。
「ヴァネッサさん、ありがとうございました」
「医者として当然のことをしただけだよ。あんたは大丈夫そうだね」
 はい、と頷くベルティルデ。
「できれば手伝ってほしいと思ってたけど、今日は姫様についててやりな」
「ええ。きちんと休んでもらいます」
「それがいい」
 帰り際、ずっと仏頂面だったルースが小さく礼を言い、ステラとヴァネッサを苦笑させた。
「受付の方と待合テントへ案内してくださった方にも、お礼をお伝えしておいてください」
 最後にベルティルデがそう言い残し、二人は馬車に乗って館へ帰っていった。

 

☆  ☆  ☆


 この日も、イリス・リーネルトとリック・ソリアーノは森の小道を歩いていた。二人の後ろからは、魔法研究所の研究員が鼻歌を歌いながらついてきている。
 イリスとリックはここ数日、マテオ・テーペ内に設置されている湿度調節機の点検をしていた。
 これは閉ざされた障壁内部の湿度を適度に保つ魔法具で、水の溜まり場に設置されている。
 半径3km圏内の各地に設置されているため一日では終わらず、二人は計画を立てて巡回していた。
 これはイリスの発案で、神殿内でも体調不良者が出ていることを知り、彼らの代わりに湿度調節機の点検をナディアに申し出たのだ。
 ナディアはイリスの申し出をありがたく受け、いつも点検に同行している研究員に連絡をしてイリス達に紹介したのだった。
「確か、今日行くところが最後だったよね」
「うん。これまで壊れてるのはなかったけど、今日のはどうかな。壊れてないといいな」
 リックの問に答えながら、イリスは地図を確認した。
 木漏れ日が差す森の小道を歩いていると、時々リスが前を横切ることがある。小鳥のさえずりも頭上から降り注いできて、耳に心地よい。
 魔法具のあるところまでは迷うことなく到着した。
「へぇ、ここのは泉に立てられてるんだね」
 イリスは泉の端に立てられた湿度調節機を見つけると、慣れたように各所の点検を始めた。基本的な点検箇所については、研究員が教えてくれた。
 棒状の金属の上部に六角柱の器具が取り付けられている。ここからゆるゆると霧状の水分が放出されているのだ。
「上部は異常なしです」
 イリスが報告すると、次に研究員が鞄から専門器具を取り出して細かい点検を始めた。
 この間、イリスとリックはすることがなくなるので、今日は少し早めのランチの準備を始めることにした。
「二人ともー、ちょっと時間かかりそうだから、先に食べてていいよー」
 研究員からの言葉に、二人は甘えることにした。
「今日のお弁当は、ハムと卵のサンドイッチと肉団子、ポテトサラダだよ。それと、口当たりのいいレモンバームティーね」
 言いながら、まずは下に敷く大きな布を背負っていた袋から取り出す。
 リックと二人がかりで布を広げ、荷物を下ろした。
 イリスがカップに水筒からレモンバームティーを注いで、リックに渡した。
「……あ、いい香り!」
 リックがにっこりしてカップに口をつける。
「毎日たくさん歩いてるけど、疲れてない? 具合は何でもない?」
「大丈夫だよ、イリス。イリスはどう?」
 イリスはあまり感情を表に出さないので、我慢をしているのではないかと、リックは心配していた。
 けれど、イリスは淡く微笑んでしっかり答えた。
「わたしも平気。だって、わたしが倒れたらお父さんにも心配かけちゃうから」
「そうだね。ナディアさんに報告が終わったら、今日はもうゆっくり休もう。サンドイッチ、いただきまーす!」
「はい、どうぞ」
 おいしいおいしい、と食べるリックを、イリスも一緒に食事をしながらやさしく見守っていた。
 その後、研究員の食事も終わった帰り道、森の奥から狼の遠吠えが聞こえてきた。
「最近多いんだよなー。二人とも、少し足を速めよう」
 研究員に促され、イリスとリックは足早に小道を進んだ。

 その頃、造船所にある宿舎では、マジェリア・カンナイが掃除に勤しんでいた。
 マジェリアはいたって健康だが、造船所の労働者の中にはちらほらと体調を崩す者が出ていた。
 所長のフレン・ソリアーノは無理をせず医者に診てもらうよう勧めていたが……言うことを聞く者は少ない。
 マジェリアは、このおかしな風邪の原因は衛生面に問題があるからではないか、と考えた。
 そこでフレンに相談し、宿舎の掃除をさせてもらえるよう願い出たのだ。
「そいつはありがたいが……人のいる部屋だけにしといてやれよ。たとえ鍵が開いてても、勝手に他人に入られるのを嫌がる奴もいるからな」
「ええ、それはもちろんです」
 それからじっとマジェリアを見つめて、フレンはこんなことを言った。
「……もし、変なことをされそうになったら、大声で人を呼ぶか魔法でぶっ飛ばしてかまわねぇからな」
「まさか、そんなことは……」
 ないと言い切れないくらい、労働者の中には怪しげな者もいた。
 こんなこともあり、マジェリアは少し緊張しながら手を動かしていた。
 今訪れているのは、初老の労働者の部屋だ。外国人で住む家もなかったため、造船所で働くことで宿舎の一室を借りたのだという。
「お嬢さん、ありがとうね。ちょこちょこ掃除はしていたのだが……年を取るといろんなことが億劫になってきてなぁ」
「いいえ。このお部屋は綺麗なほうですよ。少し、風を入れますね」
 断りを入れたマジェリアは、魔法でゆるく風を起こして部屋の空気を入れ替えた。
「ああ、何だか爽やかになった気分だよ」
 言った直後、彼は咳き込んでしまい、マジェリアは慌ててその背をなでた。
「ゴホゴホッ。……ああ、ありがとう。それにしても、わしらはこれからどうなるんだろうなぁ」
「……」
 マジェリアは、すぐに返せる言葉が出てこなかった。
 大方の掃除を終えて宿舎から造船所へ戻ると、コタロウ・サンフィールドがマジェリアを呼んだ。
「ちょうどいいところに! ちょっと手伝ってくれないか?」
「は、はい。私でお役に立てるなら」
 コタロウに連れて行かれた作業場には、積まれた木材と散乱したやすりがあった。
「これのやすりがけを手伝ってほしいんだけど、いいかな?」
「ええ。お任せください」
 マジェリアが袖をまくって作業台に乗せられた板の前に立つと、コタロウはホッとしてやすりを差し出した。
「よかった。さっきまで一緒に仕事してた人が急に咳き込んじゃってさ。朝からあんまり調子良さそうじゃなかったから、疲れが出たのかな」
「その人はどこに?」
「食堂で一休みしてるよ」
「コタロウ様は大丈夫ですか?」
「俺は平気。最近は早寝早起きしてるからね」
「では、ふだんは夜更かしを……?」
「ギクッ。いやぁ……造船のことをまとめてるといつの間にか、ね」
「熱心なのですね」
「そりゃあね。いつかは自分で船をつくって海を旅したいから」
 コタロウの夢にマジェリアは目を丸くした。
 同時に感心する。
(この人は、しっかりとした目標を持っているんだ……)
 自分はどうだろうか、と考える。
 これという答えは、まだない。
「……っと、手を動かさないとな。港町に比べたらここの人達は元気だけど、それでもやっぱり穴はある。しばらくは忙しくなりそうだ」
 コタロウに倣い、マジェリアも手を動かした。
「私も、できるかぎりお手伝いします。力仕事はあまり……ですけど」
「ま、一人でダメな時は二人でやればいいさ。それに、一人で黙々とやってると、たまに眠くなっちゃうしね」
「ふふっ。間違って指にやすりをかけたら、かなり痛いと思いますよ」
「う~ん……そしたら目も覚めるかな?」
「痛みで眠気を飛ばすというのも……」
「まぁ、できればやさしく起こしてほしいと思うよ」
 それから終業時間まで、二人はひたすらやすりがけを行った。
 腕はだるくなったが、おかげで積んであった分を片付けることはできた。
 マジェリアと別れた後、コタロウは食堂へ寄り今日の作業についてまとめていた。
「おお、腕がぷるぷるする。さすがに今日はがんばりすぎたか……」
 紙に書かれた文字はフニャフニャと踊るように揺れていた。

 次の日、野外病院で今回の症状の原因について、各自が集めた情報を元に話し合われた。
「あたしが診たところ、栄養不足がほとんどだね」
 と、ヴァネッサ。
「井戸水に異常はみられませんでしたよ。念のため造船所のところの池や、主だった溜池も見に行きましたが、こちらも何もないようです。素人目ですが」
 と、リュネ。異臭もなく、少し舐めてみても体に何の変化もなかったという。
「僕は倉庫やログハウスで暮らしている人を中心に住環境を見て回ったけど……ま、良くないね。空気がこもってる感じで。あれじゃ気分も滅入るんじゃないかな」
 と、ノイマン。もっとも、倉庫やログハウスはもともと住むには適さないという短所がある。
「空気がこもってるって言えば、このマテオ・テーペそのものが当てはまるよな。密室みたいなもんだから。空気が澱む上、光も熱も足りないんじゃ具合が悪くなって当然だな」
 と、プティ。水が無事なのは幸いだった、と付け足した。
 そこで全員はあることに気づいた。
 障壁内で生活することを余儀なくされてから約二年、風が吹いたことはあっただろうか。
「特に気にしたことはなかったけど……言ってみりゃ空気の入れ替えがまったくされていない状況だったわけかい?」
 ヴァネッサが呟きに、深刻な沈黙が流れた。
「でも、だからといって、できないよね……空気の入れ替え」
「ふむ……そうでもないかもしれませんよ、ノイマンさん。風で障壁内の空気を動かすことはできるんじゃないでしょうか?」
 リュネの発言に、でも、とプティが渋い表情になる。
「確かに効果はありそうだけど、どうやるんだ? 風の魔術師が町で適当に風を起こすくらいでいいのか? 足りないんじゃねぇ?」
 その時、彼らの視線は何となく水の神殿のほうを向いた。
 正確には、その近くにそびえる巨大な岩の柱──マテオ・テーペを。
「あそこからブワッと吹いてきたら、気分良さそうだと思わない?」
 ヴァネッサの言葉にみんなが頷く。
 問題は、マテオ・テーペは立ち入り禁止になっていることだ。
 このことは一度リルダに相談することになった。

◆第三章 森からの脅威、そして水の神殿で
 その日、リルダの耳にとんでもない事件が飛び込んできた。
 領主の館の倉庫が襲撃されたというのだ。
 根こそぎ奪われたわけではないようだが。
「税が軽減されても、倉庫の分が減ったら意味ないじゃない……っ」
 アシルは約束を反故にすることはしなかったが、リルダはいよいよ森の開拓が必要だと感じた。
 そして、港町の集会所で開拓案が提出された。
 開拓場所は今ある畑地の延長線上にある森の一部だ。
 切り拓いた土地は、それを行った者に無償で貸し出すことになった。
 なお、この計画にはジスレーヌが非常に乗り気で、自身も地属性の魔法を使って参加したいと意気込んでいる。
 リルダはあまりいい顔をしていないが……。
 ところが、いよいよ告知となった時、畑が荒らされ家畜が襲われるという被害が相次いだ。
 農家の報告によると、狼の仕業だという。
「森での食料が減っているかしら……。何にしろ、もっと酷い被害が出る前に何とかしないといけないわね」
「リルダさん、人が襲われる前に退治しましょう」
「そうね。狼には悪いけど、私達も生きなくちゃならないのよ」
 こうして、森の開拓を始める前に狼の討伐隊が組まれることになった。
 また、ヴァネッサ達が今回の風邪について推察した件についても、リルダから報告がされた。
「風の魔法に長けた人達で、ここの空気を動かしてもらうわ。魔法学校の生徒であっても学校からの許可があれば参加可能よ」
「じゃあ、マテオ・テーペには……?」
「開拓同様、伯爵から立ち入りの許可をもらってきたわ。でも、騎士団の人が調査した結果、道はあるけど長いこと使われていなかったから、ところどころ崩れているそうよ。整備はする予定だけど、そんなの待ってられないし、それは伯爵も認めていたわ。登る時は細心の注意が必要よ」
 この日はさらに、人工太陽と水の障壁に関する報告もあった。
「魔法具の改良はすぐにできるものじゃないから、それまでは魔法学校で許可を得た生徒の協力を求めることになったわ」
 人を増やすことで、一人一人の負担を減らすことが目的だ。
 強制ではないので、断ることもできる。
 このことは、その日中に魔法学校の掲示板に貼り出された。

 そして、この日の深夜。
 Drカーモネーギーは神殿の奥、障壁を張り維持するために使われている魔法具と向き合っていた。
 先日魔法研究所の所長と対面した彼女は、一通り魔法具の説明を受けた後、所長のジョージに連れられて実物を見せられたのだ。
 それは、直径1mくらいの淡い水色に輝く巨大な水晶球だった。
 円形の台座に乗せられていて、台座には水晶球と連動する玉が複数はめ込まれている。
 魔術師はその玉に触れて水晶球に魔力を注いでいるのだ。その姿は、祈りを捧げているようにも見える。
 また淡い水色の輝きは注がれた魔力であり、足りなくなるとまるで水晶球の底から栓が抜かれたかのように、球の上部から通常の水晶の色になっていくのだと、ジョージは言った。
「それと、正確にはこの魔法具は障壁を張り維持するものではなく、注がれた魔力を増幅する力があるものなのじゃ。これがなければ、このような障壁を張ることなどできようはずもない」
 Drカーモネーギーは頷きながら、その目は魔法具とその設計図を忙しなく往復させていた。
「なかなか大仕事ネギ」
 率直に言えば、やりがいがある。
 こうして彼女は水の魔術師の仕事を妨げないようにしながら、研究を始めた。それこそ、寝食を惜しんで。
 この日もそうして終わるはずだった。
 ところが。

 ──ギャアッ!

 静かな空間に突如、悲鳴が聞こえてきた。
 エントランスのほうからだ。
 奥の間の魔術師達とDrカーモネーギーが顔を見合わせ、次の瞬間、Drカーモネーギーがエントランスへ駆け出した。
「何事ネギ!」
 ほとんど明かりのないエントランスに目を凝らすと、誰かが倒れているのを見つけた。
 先ほど休憩に出た魔術師だろうか。
「どうしたネギ。暗くて転んだネギか?」
 近寄り声をかけたところで、Drカーモネーギーは息を飲んだ。
 ──何だか、死んでいるように見える。
 固まってしまっていると、この日警備当番だったバートが駆けつけてきた。
 彼は倒れている人に呼びかけたり触れたりして確かめた後、重い声で告げた。
「死んでる。あんた──」
「吾輩じゃないネギ!」
「いや、そうじゃなくて……」
 すぐに奥の間から魔術師達が出てきて、場は騒然となった。
「静まりなさい」
 静かだが力のあるナディアの声が、魔術師達を落ち着けていく。
「バートさん、今明かりを用意しましょう。それから皆さんは奥の間に戻ってお勤めを」
 納得はできなくともとりあえず指示に従う魔術師達。
 Drカーモネーギーもついて行こうとしたが、バートに呼び止められた。
「少し、話を聞かせてくれないか? いや、疑ってるわけじゃないよ」
 仕方なく残り、死体を発見するまでのごく短い経緯を話した。
 それからバートが調べた結果、魔術師は刃物で殺されたことがわかった。
「夜が明けたら改めて調べるけど、どうかこのことはあまり大きく触れ回らないでほしい。最近は不安なことが多いから」
「わかりました。ご家族には私から知らせておきます」
 言葉の最後の方、ナディアの声は湿っぽく震えていた。

 

 

個別リアクション

なし

 


 

アクション指針
・魔法学校生徒への協力要望に応える(火・水・風属性/魔力値21以上推奨)
・マテオ・テーペから風を送る(風属性/魔力値21以上推奨)
・狼退治に参加する
・その他、自分にできることをする

 



こんにちは、マスターの冷泉です。
今回もご参加いただきありがとうございました!
皆さんぐいぐいと食い込んでくるので、圧倒されそうです。
いただいた熱意を少しでも多くお返しできるよう、これからも精進します。

次回のアクションの補足です。
「マテオ・テーペから風を送る」ですが、こちらは風属性以外の方でも手伝いとして選択が可能です。道の整備を手伝う、などですね。
また「推奨」という条件ですが、必ずしも超えていなければならないというわけではありません。
推奨数値は超えていなくても、別の形で参加することはできますので、遠慮は無用です。
森の開拓は次回は行われません。その前に狼退治を行います。つまり、狼の問題が片付かないと開拓は始められないということです。
貸出という形ですが、自分の土地を持ちたい方は気にかけてみてください。
その他には、今回の継続も含まれます。

領主の館の倉庫襲撃事件は、川岸マスター担当のサイド側で扱われます。
次回の参加先、またアクションの送り先を間違えないよう、お気を付けください。

第3回のメインシナリオ参加チケットの販売は4月20日~4月28日を予定しております。
アクションの締切は4月29日の予定です。
詳しい日程につきましては、公式サイトお知らせ(ツイッター)や、メルマガでご確認くださいませ。

それでは、次回もよろしくお願いいたします。