◆第一章 送別会は賑やかに
次第に頻度と強度を増し人々を不安に陥れていた地震が、ある日ピタリとやんだ。
それと時をほぼ同じくして、降るはずのない雪がマテオ・テーペを白く染めた。
人々は次に何が起こるのかと恐々としていたが、それからは異変や異常の類は一切何も起こらない。
そんな中、縮小される障壁の外側に住まいが沈んでしまう人々の引っ越し作業が行われた。
そして、ついに箱船出航の日が来た──
岩ゴーレムを作り出す魔法具を預かるイヴェット・クロフォードにより、解体された射出機がマテオ・テーペの頂に運ばれた。
再び組み立てられた射出機は、魔法研究所所長のジョージ・インスと研究員のエリカ・パハーレにより念入りに点検や調整をされた後、明日からはここから人工太陽及び人工月が打ち上げられることになる。
「ご苦労じゃった。さて、送別会に向かうとしようかの。うまいもんがなくなる前にな」
軽口を叩くジョージに続いて、イヴェット達は下山した。
神殿に着いたイヴェットは、神殿長のナディア・タスカに預けておいた料理を受け取りに奥の間へ行った。
奥の間に入ると、出かける支度を整えたナディアが待っていた。
「ご苦労様でした。さあ、参りましょうか」
「出席なさるんですね」
「ええ。少しだけ顔を出しておこうと思いまして。お預かりしていたお料理はこちらです」
「ありがとうございました」
イヴェットに手渡された料理とは、彼女が育てたほうれん草とハーブを使ったキッシュだ。大皿であることから、かなり奮発したものと思われる。
こうして一行は神殿に待たせていた馬車に乗り、送別会会場であるログハウスのほうへ向かった。
ログハウスとその周りの広場はたいへんな賑わいを見せていた。
マテオ・テーペに住むほとんどの人が集まったと言ってもいいだろう。
平民も貴族も、みんながそこにいた。
送別会はすでに始まっていて、ログハウスでは主に貴族が多くくつろぎ、広場は平民が多いようだ。
馬車を降りたイヴェット達は、軽く挨拶を交わすとそれぞれ目的のところへ別れていった。
イヴェットは、料理が集まっているテーブルへ向かうと、開いている場所へ大皿を置いた。
ついでに空の皿を片付ける。
ほど近くにある簡易炊事場へ使用済みの食器類を運ぶと、普段は造船所の食堂を切り盛りしているカヤナ・ケイリーの姿があった。
キッシュを差し入れしたことを告げておこうと、イヴェットはカヤナに声をかけた。
「お疲れ様です、カヤナさん。少ないかもしれませんが、キッシュを差し入れしておきましたので」
「わぁっ! ありがとう! 町の人達もちょくちょく差し入れくれるんだけど、それ以上に食べる人が多くて。助かるわ」
「それなら良かったです。お皿は後で引き取りに来ますので、置いといてください」
「わかったわ」
それでは、とイヴェットは簡易炊事場を後にした。忙しそうだったので手伝ってもよかったが、その前に会いたい人がいた。
すれ違う人にその少女のことを尋ねつつ、ようやくわかった居場所はログハウスだった。
ジスレーヌ・メイユールは、ログハウスの端のテーブルでクローデット夫人の娘であるロシェルとおしゃべりしていた。
二人に近づくイヴェットに、先に気づいたのはジスレーヌだ。
彼女は席を立ち、貴族の娘らしい振る舞いで挨拶をした。
「こんにちは、イヴェットさん。いよいよですね」
「ええ、ついにこの時が来てしまいましたね。そのことで少々お話があるのですが、お時間をいただけますか?」
イヴェットのただならぬ様子にジスレーヌはわずかに怯む。
「私なら、いいよ」
ロシェルにそう言われ、ジスレーヌはイヴェットについていったんログハウスを出た。
人けのない裏側に回ったところで足を止めたイヴェットは、ジスレーヌに向き直るとずっしりと重さのある手提げ袋を差し出した。
「これを持って船に乗ってくれませんか? 私は畑や皆さんと残ります」
「え……な、何を」
「この中には博物学の本と、ここでの農業日誌の写しが入っています」
「わ、私、箱船には──」
「先日、伯爵とお話しする機会がありました」
イヴェットはその時の会話の内容を話して聞かせた。
ジスレーヌの分として乗組員に応募したことを伯爵に伝えると、嫌がった時はイヴェットも一緒に乗って押さえつけてもらいましょうか、という内容だ。
イヴェットの行動にショックを受けたジスレーヌだったが、それ以上に父である伯爵の言葉に呆れと怒りを覚えた。
「な、何てことを……っ」
そんな少女を、イヴェットは落ち着いた口調で諭す。
「私と違い、あなたの魔力は航海で役立ちます。移住先では、皆と仲良くできることも、明るさも、農作業の経験もきっと」
「私なんて、そんな……」
「私も当初は無理にでも船に乗せるつもりでした。ここでは長く生きられず、見たくないものも見ることになると思いましたので。……ただ、どうしても残りたいなら、私も障壁が予定より広まったからと伯爵を説得してみます」
ジスレーヌはおろおろと視線をさまよわせ、迷いを見せた。
イヴェットの言葉の意味と気遣いを理解したからだ。
「時間はまだあります。どちらを選ぶにせよ、後悔しないよう伯爵とは話し合ったほうがいいでしょう」
手提げ袋を下ろしたイヴェットは、静かにジスレーヌが何か言うのを待った。
後で返事をするというのなら、いったん離れてもいい。
しかしジスレーヌは、ギュッと拳を握ったまましばらく立ち尽くした後、
「……そちらのご本と日誌をお預かりします。しっかり勉強して、必ず皆さんのお役に立ってみせます」
覚悟を決めた顔で、まっすぐにイヴェットを見上げて言ったのだった。
このことを伯爵に告げるために手提げ袋を持って小走りに去っていった少女を見送ったイヴェットは、そっと一息吐くとゆっくりと後を追ってログハウスへ入った。
どこかの貴族と談笑している伯爵の傍に、ジスレーヌの姿はない。ロシェルとも一緒ではないようなので、もう話は済ませてどこか別の場所へ行ってしまったのだろう。
イヴェットにとっては好都合である。
彼女が伯爵に声をかけると、彼はお礼の言葉を口にした。
「ありがとうございました。私ではきっとこうはいきませんでした」
「そうでしょうか。リルダさんにもですが、説明不足なだけだったのではないですか?」
強めの口調で言われた伯爵──アシル・メイユールは苦笑を浮かべた。
「出航前に、もう一度きちんと声をかけてあげてくださいね。後悔しないように……後悔は、人を殺すことができます。──公王の件で、ご自身も死んでも良いとお考えだったのでは?」
「あの子から聞いたのですか? そうですね……そう考えていましたが、少し事情が変わってしまいまして」
当初予定していた箱船計画とは違ってしまったことが主な要因だ。
マテオ・テーペが、障壁の縮小はあってもだいぶしぶとく残りそうな上、住民達もそう簡単に死にそうにない。
「リルダさんには、今後も苦労をかけそうです」
どことなく楽しそうなアシルに、イヴェットはため息を吐きリルダに同情した。
広場のテーブルでつまんだほうれん草とハーブのキッシュに舌鼓を打つシャオ・ジーランは、その足で簡易炊事場へ入り込んだ。
そこでは港町の女性達が中心になって追加の料理を作ったり食器を洗ったりと、忙しく働いていた。
シャオはその中に、知り合いの姿を見つけた。
「カヤナさんじゃないですか!」
声に振り向いたカヤナが目を丸くする。
「どうしたの、シャオ。ここは炊事場よ」
「お手伝いをしようと思いまして」
「それは助かるけど、いいの?」
「お任せください!」
「じゃあ、お願いね。パンの追加を作りたいから、一緒に生地を作ってくれるかな」
「ええ。最近は、パン作りがうまくなった気がするんです」
シャオとカヤナは並んで生地をこね始める。
「最初は食べるだけでしたが、今はある物でおいしいものを作ることができるようになりました」
「それはいい進歩ね。私も負けてられないな」
カヤナは俄然やる気になった。
生き生きと生地をこねるカヤナの表情は、このマテオ・テーペで日々を必死に生きる人々の顔と同じだ。
そういう顔の人達を、以前は──それこそ大洪水前、各地を放浪していた頃は、何も思わずに通り過ぎていたシャオだったが、今は何故か感じるものがあった。漠然としていて、どういうものなのかはわからないが。
「パンができたら休憩ね」
カヤナの言葉に、シャオは今はパン作りに集中するのだった。
賑やかな広場の端の方。
明るいこの場に似つかわしくない難しい顔を突き合わせている三人がいる。
そこに、焼きたてパンの香りがふわりと漂った。
「姫様、皆様も。お待たせしました。ちょうどパンが焼きたてだったんです」
嬉しそうにしながらバスケットにパンを山盛りに積んできたのは、本当の旧ウォテュラ王国の姫──今までベルティルデ・バイエルと名乗っていた少女だった。
「もう、姫様って呼ばないでよ。姫様はあなたでしょ」
「いいではありませんか。わたくしがベルティルデであなたがルース。紛らわしいので、これで通しましょう」
開き直ったように言われ、本来のベルティルデは渋い表情になる。
「そうだな、俺もまだ戸惑ってる。何て呼べばいい? ベル?」
どこか不満そうに言ったのは、マティアス・ リングホルム。刺された怪我はだいぶ治ってきたが、走ったり飛んだりなどの激しい運動はまだ禁止されている。
さらに魔法研究所所長のジョージも加わった。
「そうじゃな。立場はともかく、名前は今さら紛らわしい」
「あーもうっ、わかったわよっ。ルースでいいわよっ。だいたいマティアスは、何を不満そうにしてるのよ」
「別に……」
マティアス自身、どうしてこんなに気分が晴れないのか、よくわかっていなかった。
けれど、その理由に何となく見当がついていたベルティルデはそっと微笑む。
おそらくマティアスは、肝心な秘密をルースが教えてくれなかったことに、寂しさを感じているのだろうと。
とりあえず、彼女の名前はこれまで通り人前ではルース・ツィーグラーで通すことになり、動きやすいように身分も由緒ある家柄の娘であることが公開された。
人々には、姫と侍女が入れ替わっていたことは、ルースが襲撃を受けた現場にいた人達の口からある程度は広まっている。
「貴族は貴族なんだな。まあ、ルースってことで。ベルのほうは……姫様?」
「ふふふ、お好きなように呼んでください」
首を傾げるマティアスに、ベルティルデはくすくす笑って言った。
「──コホン。話がそれたわね。聖石のこと話してたのよね。それで、どうなの?」
表情を改めたルースに問われたジョージも、雰囲気を引き締めて答えた。
「今すぐやるのは、不安要素が多過ぎる。おぬし達がここに帰って来る頃を目標に、実現可能かどうか研究を重ねねばなるまい」
ルースは納得したように頷いた。
聖石を巡るこの話題の発端はマティアスだった。
「聖石って半分に……それが無理でも、欠片というか一部を船に持って行けないのか?」
聖石を割るなどという発想は、ルースもベルティルデも持っていなかったため、その提案を聞いた時は二人そろってポカンと間の抜けた顔をしていた。
その反応にマティアスは慌てて付け加えた。
「乱暴に扱ったらまずいモンだったか?」
「まずいっていうか……ちょっと、予想外すぎて」
「ええ……。ですが、実際、どうなんでしょうか? ナディアさんからは使用中に欠けたという話は聞いたことありませんし。そもそも、どうやって割るのでしょうか。ずい分固そうでしたが……」
刃物類や金槌などを思い浮かべるベルティルデ。
「火で熱して水で急激に冷やすとか」
「熱疲労ね……効くかしら」
マティアスの案に頷きつつも、半信半疑のルース。
そこにジョージが来たので巻き込んだのである。
「軽率に手を出して機能が失われては、取り返しがつかないからのぅ」
「……そりゃそうか」
「じゃが、発想はおもしろい。良い結果を出したいものじゃ」
ジョージは強面を緩めて笑うと、三人に断ってログハウスのほうへ去って行った。
ところで、マティアスの心配事は他にもある。
彼は箱船の乗組員としてここを発つが、今まで世話になってきた親友の両親はここに残る。他の大勢の人も。
「残った人達が、体力を奪われてもすぐ回復できるような何かが用意できないだろうか。消化のいい食べ物を用意しておくとか、保存食とか」
「保存食はあるみたいだけど……」
「パンを作っておくそうなので、それでミルク粥とかにすると聞きました」
ルースとベルティルデが答えるが、表情は曇っている。
たとえば病気の時、料理をするのはけっこうつらい。
それに、食べるのにも体力は使うのだ。
「今さらだけど、この計画ってのは……」
残る人々を見捨てることが前提だったのでは──。
マティアスは、言いかけて……やめた。
「きっとみんな、踏ん張ってくれるわ。そう信じましょ」
ルースは強く言って、まだ温かいパンをちぎった。
広場が賑わっているのは、送別会だけが理由ではない。
オーマ・ペテテが主催のバザーも、その理由の一つである。
出品物は、造船所へ貴族が預けておきたいとしたもののうち、誰かに譲ってもいいと言った品々だ。
というのも、倉庫に収まり切れないほどの申請があったからだ。
バザーの準備は、エリカも手伝った。
二人で倉庫行きと出品の分別、売り場への並べ方、価格、受け取った代金をどうするのか……やらなければならないことがどんどん出てきて、正直なところ、オーマの記憶はところどころ曖昧だ。
エリカに聞くと、ものすごく集中していたという答えだったから、つまらないミスはしていないだろう。
そして途中、リルダの手も借りながら今日を迎えたのである。
店番には助っ人として魔法学校教師のハビ・サンブラノとキュカ・ロドリゲスがやって来た。キュカとは、毎日の人工太陽打ち上げで顔なじみだ。
オーマがバザーを開くという話はいつの間にか広まっており、そのため無料の出品物は開店早々になくなった。
「まいどありー! 大事にしてやってくださいね」
その後も売れ行きは良く、今もまたそこそこ値の張る品が売れた。
オーマは高額な物に限り、買い手の名前を台帳に記している。
出品者の中には、誰が買ったのか気になってしまう人もいたからだ。
「今の人、全財産出血大放出だとか言ってたけど、大丈夫かな」
「……まぁ、気にしても仕方ないし」
やや呆れ気味に客を見送るエリカとオーマ。
「とりあえず、あんな買い物したら障壁が狭まったからって死ねないだろうね」
笑いながら言うハビ。
それにキュカが頷く。それからオーマへ視線を向けて続けた。
「君もくたばるのは許さないからな。私達には、今後も人工太陽と月の打ち上げという仕事があるのだから」
「もちろんそのつもりだけど……うっかり昇天しちゃったら?」
「叩き起こす。天国にいようが地獄にいようが引きずり戻すから、そのつもりでいるように」
「お、おう……」
キュカの迫力に気圧されるように頷くオーマの横で、エリカが遠慮なしに笑い声を立てた。
と、そこにベルティルデが顔を出した。
「こんにちは。盛況ですね」
「いらっしゃい、ベルティルデさん」
「ごめんなさい、お買い物ではないのですが……皆さん、お料理は召し上がってますか? よかったらこちらをどうぞ」
大き目のバスケットを差し出され、オーマが受け取った。
被せてあった布を開くと、中にはティーセットと焼き菓子が収まっていた。
「いい匂い……どうもありがとう」
「食べ終わった食器は、炊事場の前に置き場所があるので、そこに戻しておいてくださいね」
「うん、わかった。……ちょっとハビ先生、そんなつまみ食いみたいな真似……あっ、エリカまでっ。キュカ先生も笑ってないで止めてよ!」
賑やかな店番達に微笑み、会釈してベルティルデは移動した。
そんな和やかな様子を、ヴァネッサ・バーネットが遠くから穏やかに見ていた。
わざわざ声をかけるつもりはない。
再会の約束はもう済ませてある。
「よし。あたしもがんばらなくちゃな」
気合を入れ、自分の持ち場へと戻っていった。
それからオーマが数人の客の相手をした後、今度はステラ・ティフォーネが訪ねてきた。
彼女は静かな微笑みでオーマを労った。
「賑わっていますね」
「まぁ、庶民にはお目にかかれない品々が多いからね。ステラも見に来たの?」
「いいえ。念のため見回りを」
「そっか。お疲れさん。ここはいまのとこ何もトラブルは起きてないよ」
「何よりです。先生方もいらっしゃいますし、そうそう悪さをしようという人はいないでしょうね」
「はは、そうかも。このまま何も起こらないのが一番だけど、人が多いからね……そっちも気を付けて」
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
ステラは一礼して静かに立ち去った。
入れ替わるように造船所の所長のフレン・ソリアーノがやって来る。
「おう、売れ行きはどうだ?」
相変わらず大きな声だが、それよりもだいぶ呑んでいるように見える。
今日は特別な日なので、残り少ないエールやワインが出されていた。酒飲みには物足りない量だが、そこは気分と雰囲気で補う。
「上々ですよ。この分だと、倉庫からはみ出てしまう事態は避けられそうですね」
「よーしよし! その調子で全部売りつけちまえ!」
「けっこう呑んでますね……」
序の口よ、と豪快に笑うフレンを、箱船の技師長に任命されたコタロウ・サンフィールドが追いかけてきて呼びかけた。
「所長、こちらでしたか」
「お、コタロウか。呑んでるか?」
「さ、先ほどもいただきましたが……」
「もっと呑め! 景気づけだ!」
「あはは……。所長、造船技術のこと、何も知らなかった俺に一から教えてくださり、本当にありがとうございました」
「お前さんががんばったからさ。それに、これからはその知識と腕を箱船のために生かしてくれ。お前さんの夢を叶えるためにな」
「はい。移住先もきっと見つけてみせます」
「その意気だ!」
バシーン、と背を叩かれたコタロウはたまらずよろめいた。
しびれる背中をさすりながら、コタロウは新造船の話題を出した。
フレンとコタロウは専門的な話をしながら、バザーから離れていった。
それを見送るオーマ達は、またすぐに接客で忙しくなるのだった。
広場の一角がワッと盛り上がる。
人だかりの中心で、シャオが大道芸を披露していた。
一段落した炊事場から借りた複数の調理器具が、代わる代わる宙に舞う。
へら、包丁、鍋の蓋、フライパン……。
シャオは器用にそれらを受け止めては放り、受け止めては放り。
その傍では、芸を盛り上げるためにジスレーヌがバイオリンで軽快な曲を奏でていた。
シャオが曲に合わせて放るたびに、観衆から手拍子が起こり大人から子供まで笑顔で楽しんでいた。
観衆から声があがる。
「ブラボー! いい芸だ。これでいい気分で航海に出れるぜ!」
箱船の乗組員のようだ。
この後船で再会したら、彼はどんな顔をするだろうか。
たくさんの拍手と歓声を浴び、シャオとジスレーヌがお互いを讃え合った後、シャオは酒飲みの集団をふらりと訪れちゃっかりご馳走されているのであった。
芸を披露する者がいれば、大きな夢を語る者もいた。
その子は、広場に出てきていた貴族のグループに話をしていた。
「皆、どうすれば世界を救えるか、もっと真剣に考えなきゃだめなん! そういうふうにできてるからって、考えるのやめて、特別な何かが奇跡起こすの待ってる。そんな世界、うち許せん」
バニラ・ショコラの話は、こんな感じに始まった。
一生懸命な様子の少女に、貴族達は「何かな」と目を向ける。
「きっと、世界は根幹から壊れてるん。だから、世界を理解し、仕組みを再構築して、『特別』や『犠牲』が必要ない、数増やしたレプリカ群の集積回路に作り変えて、力の循環を正常にすることが必要なん」
一気にまくし立てられたバニラの話の内容は漠然としていて、理解できた者はいなかった。
ただ彼女が何かに危機感を持っていることだけが伝わったが、それだけでは貴族達にはどうしようもない。
だから彼らは、ご機嫌を取るようにこう言うしかなかった。
「お嬢さん、難しい言葉をよく知ってるねぇ。まだ幼いのにたいしたものだ。将来が楽しみだな」
「こんな世界じゃなければ、都あたりで高度な教育を受けられたでしょうに」
呑気に笑う彼らを歯がゆく思うバニラは、とんでもない発言をした。
「うち、密航者になる。外でやることあるん」
貴族達は目を剥き、一変してバニラを諭しにかかった。
「やめておきなさい。船には常に厳しい見張りがついている。潜り込むなんて無理だよ」
「仮に潜入できたとしても、子供が耐えられるような航海ではないはずよ」
などなど、考え直すようさんざんに言われた。
さらには。
「危なっかしい子だな。君は我々とここにいなさい」
と、監視がついてしまったのだった。
広場の隅で賑わう人々の様子をぼんやり眺めながら、クロイツ・シンはまだ痛む頬に手を当て苦笑した。
腫れた頬の熱を吸い取る手のひらを少しばかり気持ちいいと感じながら、こうなった原因を思い出す。
弟達に箱船の乗組員になることを勧めたのがきっかけだった。
自分は乗らないと告げたとたん、泣きながら殴りかかってきたのだ。
弟達はどちらもなかなかの体格のため、それ相応の腕力がある。殴られたらけっこう痛い。もちろん、一方的にやられるだけではなかったが。
(まぁ、泣かれたのは殴られた以上にきついな)
クロイツは、二人を泣かせるつもりはなかったのだ。
ただ、自身と弟達の可能性を比較し、より生き残る確率が高いほうを選んだ結果、弟達を送り出すことを決めただけだった。
どちらか片方だけでも納得してくれればいいものを、双子はそろって反抗してきたのだった。
(最後の別れになっちまうこともあんだろうな)
箱船を送り出す時に奪われるという生命力。その重圧に耐えられるよう、医者が様々な提案をしていた。それでも、耐えきれずに終わってしまう人が出るかもしれない。
自分も例外ではないと、クロイツはわかっていた。おそらく、弟達も。
「似たもの兄弟、か」
思わず口に出し、笑いかけて──頬にピリッと痛みが走る。
「顔がまだ痛ぇ」
ちょっとだけ双子を恨めしく思った。
うつむき、そっとため息を吐いた時、よく知った声に名前を呼ばれた。
顔をあげるとカヤナがそこにいた。
彼女はクロイツの腫れた頬に気づくと、びっくりして駆け寄ってきた。
「どうしたの、そのほっぺ! ケンカ?」
「ああ、ちょっとな……弟共と喧嘩して。悪ぃが、豊かな表情は期待すんなよ」
「もうっ、変な冗談はいいから! えっと、ちょっと待っててね。冷やすもの持ってくるから」
カヤナは早口に言うと、来た時以上の速さで走っていった。
そして息を切らせて戻ってきた彼女の手には、濡れたハンカチがあった。
「ひとまず、これ当てて。ぬるくなったら、また冷たくしてくるわ」
「ありがとう。でも、これくらいどうってことは……イテテッ、押し付けるなって」
「あ、ごめん。うーん、けっこうやられたわねぇ」
「まぁな……」
(ほんと、あいつら連合組んで人のことぶちのめしやがって……俺もそれぞれ同じくらい殴ったが)
喧嘩中はそんなこと思う余裕はなかったが、改めて思い返すといろいろと考えてしまう。
本音で話し合えてよかったとか、好きな人が死んでしまうほど恐ろしいものはないとか──自己犠牲でさえ、必要となったら選択できるだろう、とか……。
「クロイツ、大丈夫?」
考えに耽っていたクロイツを心配するカヤナの声に、彼は思考を中断した。
もしも自分を踏み台にしてでも生きてくれと言ったら、目の前の女からも殴られるではすまないだろう、とクロイツには容易に想像できた。
「結局は自分でどう選び、どう生き抜くかって話だよな」
こぼした言葉に、首を傾げるカヤナ。
「何でもねぇ」
後はせめて、気をしっかりもつだけだとクロイツは腹を括った。
自分の知らないところで推薦され、箱船の乗組員としての切符を手に入れていた。
聞いた時はとても驚いたマルティア・ランツだったが、推薦してくれたのが友人のクラムジー・カープだったと知り、嬉しさも感じた。
少しは頼れると思ってくれたのか、と。
それなら、期待に応えて精一杯頑張りたいと思った。
マルティアは、このことをリルダ・サラインに報告した。
「そう……。出航後の食糧方面であてにしてたんだけど。でも、あなたが決めたなら、そうするといいわ。マルティアさんならきっと、航海中でも移住地を見つけた後の様々な問題でも、諦めずに取り組めると思うから」
「リルダさん……。はい、何があっても、必ず」
「ええ。あなたの笑顔は百人力よ! みんなを支えてあげてね」
姉のように慕っている人からの励ましに、不意にマルティアの胸が詰まった。
リルダは微笑むと、マルティアの後ろに居心地悪そうにしているクラムジーに声をかけた。
「お疲れ様。あの伯爵の傍で働くのはストレスたまるでしょう? 愚痴ならいくらでも聞くわよ」
「いえ、私は別に……」
クラムジーは送別会には顔出しくらいのつもりだったようだが、マルティアに見つかったことでしっかり参加することになってしまっていた。
伯爵に取り入ってうまくやったと港町の人達は思い込んでいるため、いまだに彼らとは溝があるが、マルティアやリルダのように何かを察する人もいる。
話すのが苦手でしどろもどろになっているクラムジーに、マルティアは変わらない姿に安堵した。
「クラムジーさん、伯爵のところで少しは変わったと思ったのに」
「そんな急に変わるわけないだろう……」
困り顔でため息を吐く様子に、思わず笑みがこぼれる。
そして、彼のこんな顔ももうじき見れなくなるのだと思うと、同時に寂しさも生じた。
いつもさりげなく助けてくれて、背中を押してくれるこの温かい人と離れて、ちゃんとやっていけるだろうか。
この二人なしに、前に進めるだろうか。
ざわりとこみ上げてくる不安を、頭を振って払いのける。
永遠の別れではない。今は離れて、もう一度会うのだ。みんなが願うお土産を持って。
だから、マルティアは笑顔で約束した。
「リルダさん。大好きで、お姉さんみたいと、勝手に思ってました。頑張ってきます! クラムジーさん。地上のことはしっかり調べて、移住先を見つけられるように頑張ってきます! 必ず、必ず……!」
リルダはマルティアをやさしく抱きしめ、クラムジーはあたたかく見守った。
こらえきれなくなった涙が、一滴頬を伝った。
ログハウスと広場を遠くに眺めるところに、二人はいた。
「本当に、向こうに行かなくていいのですか?」
「ここでいい。あなたこそ、いいのか?」
「顔出しはしましたから」
岩神あづまとアンセル・アリンガムだ。
アンセルはあづまが経営している『真砂』について尋ねた。
「障壁の外になってしまいますからね、あのお店とはお別れです。新しい店舗も考えていますが、それは出航が無事に終わって、ここが落ち着いてからでしょう」
「店の準備に必要な時は呼んでくれ。喜んで手伝おう」
「男手は助かります」
あづまは静かに微笑むと、表情を改めて自警団について切り出した。
案の定、アンセルは顔つきを暗くする。
「私はもう代表を務められない」
「ですが、警備隊だけでは荷が重いと思いませんか? 隊長さんはまだ歩けないと聞きましたし」
「騎士団長がまとめるだろう。近衛兵も半数は残るらしい」
「町の人達と馴染みのない彼らが、うまくやれるでしょうか……?」
「……」
困ったように沈黙してしまったアンセルに、あづまはクスッと笑う。
「自警団を再編しましょう。団長には、あたしが立候補します」
アンセルは弾かれたように顔を上げ、あづまを凝視する。
彼女の表情は、冗談でも何でもないことを物語っていた。
「店を……再開したいのだろう? その上、自警団の団長まで? 倒れるぞ」
「そこはうまく配分します。最初は確かに気苦労も多いでしょうけれど、何事も経験と慣れですよ」
あなたという人は、とアンセルは何とも言えない顔で大きなため息を吐く。
どう言われようと、あづまは立候補を取り下げるつもりはなかった。
彼に対する罪滅ぼしというわけでもないが、アンセルには半ば強引に伯爵との面談の席を設けたり、箱船強奪計画について自供を迫ったりと、反感を買っても仕方のないことをしてきた。
「……わかった。だが、あなたが団長に就くかどうかは他の団員とも話し合おう」
「そんなに困った顔をしないでくださいな。あなたを苦しませたいわけではないのですから」
あづまの想いとしては、むしろ逆で。
これから起こるだろうことで死ぬつもりなど毛頭ないが、あづまは今伝えておく決意をした。
「アンセルさん、今はお返事をいただけなくてもかまいません。でも、あたしはあなたのことを愛しています」
「……私は……」
息を飲んだアンセルは、それきり口を閉ざしてしまった。
◆第二章 また会えると祈ってる
アシルの言葉で送別会は締めくくられた。
とたん、それまで楽し気だった空気は静まり、代わりにぞわぞわと背筋がざわめくような緊張感が漂い始める。
箱船の乗組員は、エーヴァカーリナ池に浮かぶ箱船に順次乗り込んでいった。
ヴォルク・ガムザトハノフ、リベル・オウスが物珍しそうに船のあちらこちらを見て回る。
続いて何やら話しながらロスティン・マイカンとミーザ・ルマンダ、ウィリアムが。
それから、アーリー・オサードの後ろにシャンティア・グティスマーレがついて乗船する。
その後に乗り込んだベルティルデは、甲板から見送りの人達を静かな表情で眺めていた。
一人一人の顔を記憶に刻むように。
その隣にはコタロウがいて、同じように世話になった顔を無言で確認していっていた。
彼らのために残した新造船の設計図が生かされることを願い、そのために移住地を見つけることを誓った。
いつか自分用の小型船で故郷等を巡りたいと思うのは変わらないが、その前に、この地の人々に何か恩返しをしたかった。
不意に、ベルティルデが小さく苦笑する。
「二人で並んで緊張して……こんな顔を見せたまま出航したら、皆さんに不安ばかり残していってしまいますね」
「あ……そうか。そうだね。元気に出航しないと。一年後には、移住地の朗報を持ってここに必ず帰ってきて……。移住先で皆で楽しくパーティとかできたらいいね」
「ええ、ぜひやりましょう。その時は、ダンスのお相手をしてくださいね」
「え。ダ、ダンス……?」
思わぬ申し出に焦るコタロウ。
「今回の乗組員はきっとパーティの中心ですから。特に船を支える技師長さんは、囲まれると思います」
技師長という役職に、コタロウは焦りに加えてプレッシャーまで感じてしまった。
「はは……たまに相談に乗ってくれると嬉しいな」
「船の仕組みはわかりませんが、お話を聞くくらいでしたら喜んで」
「ありがとう。当たり前だけど、ベルティルデちゃんも困ったことがあったら気軽に相談してね」
「はい、頼りにしてます」
「こちらこそ。……個人的に、ベルティルデちゃんと一緒に航海できるのは、すこぶる心強いな」
「わたくしもです」
二人はようやく自然な笑顔を交わし合った。
ごった返す船着き場で、リュネ・モルとフレンは最後の別れを惜しむ人々を眺めながら、出航後について軽く話し合っていた。
「落ち着いてからの作業として、住居建築、箱船2号建造。灌漑・開墾の三つに大別されそうです」
「そうだな。まずは食いモンだな。備蓄や成長の早い水耕栽培はあるが、できるだけ早くに始めたいところだ。住居はとりあえずあるし、箱船は……ま、その後だろうな」
「造船に関しては経験者が大勢残りますから、今回よりも早くに仕上がると思いますよ。問題は農業ですが、今までのように特定の人だけが携わるばかりでは不安がありますね」
「土地が狭くなるから、限られた面積からいかに収穫量を増やすかという問題もあるな。幸い、嵐などでダメになることはねぇがな」
そこで、とリュネはフレンに向き直り提案した。
「未経験者向けに、まずはルスタンくんを保護していた老夫婦を始めとする、既存の農家さんの手伝いという形で就農していただき経験を深めては?」
「なるほど。出航後の障壁内に残る農地もあるからな。そういやルスタンの奴は、今は世話になってる農家の監督下にあるらしいな」
「そうですか。普段は手伝いをしているそうですから、その気があるなら指導要員として働いてもらってもいいですね」
それから話題は、住居と新造船へと移る。
「住居は、今後独身者向けと家族向けに分けたいですね」
水路工事のしわ寄せで、現在建っているのはログハウスや長屋がほとんどだ。
リュネの言う通り、より住みやすく建て替える必要があるだろう。
そのモデルとして、独身者向けと家族向けの一棟をまず建ててみようという話になった。後は需要の分だけ増やせばいい。
「伯爵は、かつて都にあったような二階建てや三階建てを造りたいと思ってるそうだ」
「ふむ。設計図を引ける人はいますかね? ……いえ、私のほうを見られても困りますよ。私の得意分野はそちらではありませんから」
「冗談だ。ま、誰かいるだろ。いなけりゃ伯爵が何とかするさ」
「建築の知識がおありで?」
少しの期待をこめて聞いたリュネに、フレンは「たぶん」と頼りない答えを返した。
「まぁいいでしょう。男爵さま、ともに頑張りましょう! ふふ、平民宰相の座は遠いですね……」
リュネが最後にぽつりとこぼした言葉に、フレンは吹き出した。
「お、お前さん、そんな野望持ってたのか」
「ええ、まあ、ひっそりと」
「……そうかい。それなら今度、今言った案を伯爵に言ってみるんだな。クラムジーとお前さんがいれば、あの人ももう少し気が休まるだろうよ」
そのうち、宰相レベルの仕事を任されるかもな、とフレンはニヤニヤしながらリュネの背を叩いた。
そんな会話がされているほど近くでは、エリス・アップルトンが神殿長のナディア・タスカを始めとするここに残る水の魔術師達と別れの言葉を交わしていた。
「いってらっしゃい、エリスさん。あなたなら大丈夫ですよ。ですが、どうか無理はしないでくださいね」
「行ってきます。ナディアさん、皆さん、今までお世話になりました」
心からの感謝をこめて、深く礼をするエリス。
外への憧れは今もあるけれど、以前のようにそれだけではいられなくなってしまった。
神殿で手伝いをしているうちに、いろいろなことを知ってしまったし、気づいてしまった。
だからこそ箱船に乗り、その目的をサポートしたい──そう思うようになった。
それと同時に、世話になった人達にのしかかる大いなる負担を憂う。
障壁を維持してきた水の魔術師も半数は箱船に乗るため、残るナディア達にどれほどの重圧がかかることか。
耐えきれずに、潰れてしまわないか。
はたして乗組員となることを選んだのは正しかったのか……。
「何を不安そうにしているのです?」
まるでエリスの心の内を見透かしたように、ナディアが微笑んでいた。
「ここには充分な備えがあります。あなたが帰って来るまで、ここは守ってみせますから、あなたはあなたができることを精一杯やってきてください」
ふと、エリスはフレンの言葉を思い出す。
同じ水の魔術師として姫を助けてやってくれと、頼まれていたことを。
(……ふぅ、これから出航だというのにネガティブなことばかり考えるのはよくないですね)
気持ちを切り替え、これからのことを考える。
最初の関門は、箱船の水上への移送だ。
箱船を障壁で守らなければならない。神殿での経験が試される時だ。
「尽力します」
拳を握りしめ、エリスは決意を込めて言った。
それから、ナディアや水の魔術師達から航海の無事と再会を願う抱擁を受け、エリスは箱船に乗り込むため歩き出す。
その背に手を振りながらナディアが言った。
「占いでは、旅は吉と出ましたよ」
エリスは笑顔で手を振り返した。
(吉……自分にも当てはまりますかね?)
たまたまそのやり取りが聞こえてしまったシャオは思った。
そして、これから乗る箱船を見上げて何日か前のことを思い出す。
その日、シャオは町の片隅でとっておきの酒を飲んでいた。この地に流れ着いてからの日々を思いながら。
最初のうちは酒を飲むためにどうしようもないことばかりしていたが、町のパン屋さんでパン作りを覚えてからは、ものを作る楽しさに目覚めた。
この閉ざされた世界では、放浪したくてもできない。
それに、自分もそろそろいい年で、昔のように無茶ができなくなってきているのを感じていた。
(どこかで嫁を娶って、料理屋でも始めたいですね)
そんな希望を描き、ふと気づく。
どこかって、どこだ?
「そういえば、箱船に乗っていったいどこに行くのか見当がつきませんね……アイヤー……」
困ったぞと頭をかいた時、
「そんなの誰にもわからないわよ。強いて言えば、陸地ね」
と、呆れ顔のカヤナが来ていて言った。彼女の他にも、これまでシャオと会って気が合った者達が見送り来ていた。
「飲み仲間がいなくなるのは寂しいが、ま、酒は当分お預けだな!」
「今日飲んじまったもんなァ。もう在庫もねぇだろ。誰か造れよ」
「つーわけでシャオよ、陸地に着いたらうまい酒を造っておくように」
シャオは勝手に約束させられた。
ははは、とシャオの口から笑いがこぼれる。
「ここまで、同じところに留まることはほぼなかった、楽しかったです。必ず戻って来て一緒にお酒飲みましょう」
「うっし、こっちも帰還祝い用の酒を拵えとくか!」
「ぐーたらしてないで、ちゃんとみんなの手伝いするのよ!」
わいわいと賑やかにシャオは送り出されたのだった。
こうしたやりとりが、あちらこちらで交わされている。
──ここでも。
今にも泣きだしそうなマルティアの手を取り、クラムジーは力強く言った。
「約束してください、必ず帰る、と。その言葉を信じて待ちます。貴女は約束を守れる人でしょう?」
「……はい。必ず、必ず帰ってきます。クラムジーさんのところへ」
マルティアは笑おうとして、失敗した。先ほどもリルダのぬくもりに泣いたばかりなのに。
いつか造船所でルースが技師相手に言っていたという。
外に出たら、味方はいないと思ったほうがいい、と。
天候も、海の生き物も、味方とは限らないと。
そしてもし陸地が見つかって、そこに人が生き残っていたとしても、歓迎されるかどうかわからないと。
できれば、そんなことにはなってほしくはないけれど、それくらい危険を覚悟した航海になる。
だからこそ、必ず帰るという覚悟もしなければならなかった。
涙をぬぐったマルティアは濡れた瞳のまま微笑み、クラムジーに見送られて箱船に乗り込んだ。
何かに耐えるように友人を見送るクラムジーの背に、アシルが声をかけた。
「一緒に行かなくてよかったのですか? あなたなら、充分その資格がありますよ」
「いいえ、まだここでやるこがあるので」
「緩衝材としての役割はそろそろ必要ないと思いますが」
いろいろな人の働きかけで、身分の壁はだいぶ低くなった。
が、クラムジーが言いたいのはそこではない。
彼はアシルに向き直って言った。
「出航後帰還予定時まで、さらにその先の生存のための計画……また一人で進めるつもりですか?」
「領主として当然でしょう。当初の計画から外れて、狭い土地に大勢生き残ってしまいそうなのですから。……まぁ、その変更を認めたのは私ですが。安心してください、税はずっと低くなりますよ」
「そういう問題ではなく」
クラムジーはため息を吐くと、率直に言った。
「事務・実務をもう少し手伝います」
「港町の人達の手助けはいいのですか?」
「これも、その一環でしょう。それに……いえ、何でも」
あれやこれやと計算していれば、背後で嗤う絶望を意識しなくていい。逃避とわかっていても。
頑ななクラムジーにアシルは苦笑し、ありがたく申し出を受けた。
その頃、移設された診療所では──。
病の者や怪我人、高齢者等体力が低下している人達が集められていた。
彼らは床に直接布団を敷き詰めた広い場所に一塊になり、その周りをヴァネッサや町医者のビル、協力者達や健康管理講座で応急処置の手際がよかった人や、地の魔法を得意とする人が囲んでいる。
ベッドから下ろしたのは、万が一落下した時のことを考えてだ。
これらはヴァネッサの発案で、患者を死なせないために整えられた布陣だ。
こうしていざ障壁の調整による負担が襲い掛かってきた時は、地の魔法によるヒーリングで患者をカバーする。
ヴァネッサ達にはそうとうな負荷となるが、すべて承知の上だ。
不安そうにしている患者達に、ヴァネッサは力強い笑みを見せた。
──そして、その時がきた。
ふっ、と体の力が抜ける。
ヴァネッサは、自分と周囲を鼓舞するため声を張り上げた。
「さぁ、堪えどころだ。あんたら、あたしに無断で勝手にくたばるんじゃないよ!」
吐き気さえもよおしそうな倦怠感に、やはり先に高齢者や病に罹った者から苦し気なうめき声がもれる。
ヴァネッサ達は患者一人一人の様子を見極め、また自分の体力もはかりながらヒーリングをかけていった。
どんどん体が重くなり、座っている姿勢を保つこともつらくなっていくが、患者も医者達も誰一人ヴァネッサが教えた『生きる意識』を手放さなかった。
患者が一人、また一人と意識を失っていく。
呼吸を確かめる──生きている。
「大丈夫、いける。落ち着いたら目を覚ますさ」
額に冷や汗がにじみ、声が震えそうになっても、ヴァネッサは気丈に笑みを絶やさなかった。
「ふぅ。わしも負けてられんな」
閉じてしまいそうなまぶたをこじ開けるビル。
俺も私も、と声があがる。
それから何人かの患者にヒーリングを施したヴァネッサは、落ちそうになる意識をどうにか留めながら、ベルティルデを思った。
(お互い、自分の職分を全うしよう──!)
頷き、微笑む顔が見えた気がした。
ゆっくりと水路を進む箱船を見送るクラムジーは、大きく手を振りながら一心に祈っていた。
やれることは全てやった。
計画がすべてうまくいく保証はないが、可能性はゼロではない。
ゼロはいくらかけてもゼロでしかないが、プラスはプラス。
(いや、可能性が一以下の場合は、自乗で限りなくゼロの近似値に……いや、それでもプラスだ!)
強く思った時、襲い来る倦怠感にとうとう膝が折れた。冷や汗が頬を伝う。
大丈夫ですか、とアシルが声をかけてくるのに頷きのみを返して祈り続ける。
(彼女が、生の可能性と希望に恵まれますよう!)
そして、クラムジーは夢を得た。
マルティアが、良い知らせと共に戻る夢を。
(それで充分……幸せではないか。民には……不誠実で申し訳ないが)
仕方ないことだと、薄く笑う。
目を凝らせば遠くなっていく甲板にその姿が見えた。
クラムジーには確信がある。
彼女なら、航海中も移住先を見つけた時も有能である、と。
明るくて元気で、本物の太陽よりも眩しい彼女なら、きっと乗組員の力になる、と。
自分は、船に乗るべき人材、適切な人を推したのだと満足した。
そしてその人は──
(たまたま、おれの、いとしい人だっただけだ!)
頭を上げているのもつらくなり、うつむいて薄れゆく意識の中、見えたのは涙だったのか汗だったのか。
意識を失ったクラムジーに地の魔法で回復を施しているアシルを視界の隅に収めながら、ステラは意地で立ち続けていた。
箱船が完全に障壁の外へ出るまでは、倒れるつもりも弱気な姿を見せるつもりもない。
ステラの貴族としての誇りがそうさせていた。
甲板にいる乗組員達を無駄に心配させないため、というのもある。
そして、旅立つ彼らのために成功を祈った。
(きっとうまくいきます……ですから、そんな心配そうな顔をしないでください。私達もきっと……)
その後のことは、よく覚えていない。
見送りの中に、奇妙な一団があった。
港町でも力自慢の猛者達が、少し工夫を凝らした輿を担いでいるのだ。
むさくるしい一団に担がれているのはリュネだ。
彼は頼もしい担ぎ手達を集めた際、貴重なむかごの塩茹でを振る舞った。これで精を付けてくれと。
そして輿に乗ったリュネは、
「出航記念奉納リュネ・モル男神輿! 姫様方、いってらっしゃいませ! 良い知らせをお待ちしていますよ!」
ソイヤッ、ソイヤッと掛け声も勇ましい担ぎ手達にも負けないくらいの声を張り上げた。
傍ではフレンが爆笑している。
しかし、それも長くは続かなかった。
力自慢で体力バカと言ってもいい担ぎ手達はともかく、リュネは体力にはあまり自信がない。
また、揺られることで体力の消耗が早まったのか、フレンが気づいた時には気を失っていた。
それでも頑張る担ぎ手達を止めようとした時、輿の仕掛けが作動した。
肘のあたりまでを背もたれに固定していたため、揺られるたびに腕も揺れる。遠目には、元気に手を振っているように見える……かもしれない。
しかし、フレンやその他近くにいる者達にすれば異様な姿である。
ついでにそろそろ担ぎ手達も限界が近そうだ。顔色が悪い。
「おい、もういい。よくやった」
フレンが止めると、彼らは輿を地面に下ろした後、一斉に地面に座り込み呼吸を荒くした。
「やれやれ、リュネが言ってたのはひょっとしてこれかぁ?」
輿に乗る前、
「男爵さまはかつて私に『骨は拾ってやる(笑)』と仰りました。その責任、今こそ果たしていただきます」
などと言っていたのだ。
「俺にどうしろと……」
フレンだって、もうクタクタなのだ。
せめて、骨を拾う夢を見るくらいか。
新たにできた居住区の一室が、あづまのこれからの住まいだった。
『真砂』の再開の目途は立っていないが、これは他の店の経営者も同じだ。落ち着いたらリルダと話し合いが始まるだろう。
ベッドの上で、あづまは息苦しさと疲労感に耐えていた。
傍らにはアンセルがいる。
告白の返事はもらっていない。
あの後、部屋の片づけをすると話題を変えたあづまに、アンセルは手伝いを申し出たのだ。
その片付けも、まだ途中だ。
一瞬気が遠くなったあづまの体が傾き、アンセルの肩に寄りかかる。気持ちの悪い汗が頬を伝う。
「無理をしないで横になったほうがいい」
「……いいえ、このままで」
思った以上にきついな、とアンセルがこぼす。
目を閉じ、倦怠感にじっと耐えていたアンセルが、あづまの手をそっと握った。
「あなたならわかっていると思うが……まだ、亡くした家族を忘れられないんだ。それでも、あなたに傍にいてほしいと思うのは……」
自嘲気味に笑ったアンセルの手から、あづまに温かい息吹のようなものが流れ込んでくる。地の魔法だ。
「……いけません。これではアンセルさんが」
「心配はいらない。……加減は知っている」
座っているのも苦しくなるような負荷がかかり、あづまはアンセルに支えられるままになるしかなかった。
ふと、部屋が薄暗くなったのは、いよいよ障壁が薄くなったからか。
あづまはアンセルのぬくもりを感じながら、箱船の乗組員達の無事と安全を願った。
箱船の甲板に出ている乗組員達は、次々に倒れていく人々をただ見ていることしかできずにいた。
その姿に、あちこちから心配の声がすすり泣く声が聞こえてくる。
コタロウは、ジスレーヌとマルティア、シャオと並んでじっとその様子を目に焼き付けていた。
マルティアとジスレーヌはすでに涙が止まらなくなっている。
お父様、クラムジーさん、とその口から何度もこぼれる。
コタロウも、フレンが崩れた時は息が詰まりそうになった。
だんだんと小さくなっていく彼らの無事を願うしかない。
水路を進み、障壁へ接近するにつれ辺りが薄暗くなっていく。
障壁が薄くなっているからだ。
「船の周りにも障壁が張られましたね……いよいよですか」
マイペースなシャオも、さすがに緊張した顔色でぐるりと見回す。
そして彼らは、マテオ・テーペが縮んでいく様を目の当たりにした。
このまま何もかもがなくなってしまうのでは、という不安にかられたジスレーヌが叫んだ。
「やっぱり降ります! お父様! イヴェットさん!」
「あ、危ないっ」
手すりを乗り越えてしまいそうな少女を、コタロウが慌てて引き止める。
「縮小はじきに終わるから、伯爵も所長も、みんなきっと生きてるよ……!」
マルティアももしかしたら飛び降りてしまいそうな衝動に駆られたが、クラムジーとの約束を思い出し必至にこらえた。
(必ず光を掴んで、必ず帰ってきます! だから、どうか生きて──!)
船長室では、ルースやベルティルデを始めとする水の魔術師達が船に障壁を張り巡らせていた。
神殿でマテオ・テーペを守っていた時より、はるかに負担は少ない。
「あのバカ、無事かしら」
ぽつりとこぼしたルースが言ったのは、リュネのことだ。
とたん、重くなりかけていた場の空気が弛緩する。
リュネの男神輿は、乗組員達にも笑いをもたらしていたのだ。
不安でいっぱいだったエリスでさえ、笑みがこぼれたくらいだ。
「近くにフレンさんもいましたし……」
「ああ。そう簡単にはくたばんねぇだろ」
エリスの言葉にマティアスが続く。彼は火属性であるためルース達の直接の手助けはできないが、何かあればと待機していた。
「そろそろ障壁を抜けます。念のため衝撃に備えてください」
船長の指示が、伝声管により船内に響く。甲板にいる人達にもすぐにそれは伝えられた。
ほどなくして、二つの障壁がぶつかり合い、箱船が大きく揺れた。
足元を崩したルースをマティアスがとっさに支える。
「あんたはおとなしくしてなさい」
「転びそうだったから助けたのに」
「姫様、それはあまりに理不尽ですよ」
マティアスに拗ねられ、ベルティルデに諫められ、ルースは口を尖らせた。
クスッとエリスが笑う。
直後、再びぐらりと船が揺れ──光が消えた。
それから、船が浮上していくのを体感した。
少しして、船長の声がした。
「障壁を抜けました。ここは……太陽の光も届かない海の底です。マテオ・テーペが眼下に……」
船長室からもかろうじて見ることができたマテオ・テーペは、淡い青色に輝いている。それは暗い海底ではとても頼りない。
箱船はどんどん進み、青い光はその分小さくなっていく。
「わたくし達は、あそこにいたのですね」
ベルティルデの声には、言葉では表しきれない想いがこもっていた。
それは、乗組員全員が思っていることだった。
誰も明かりをつける気になれず、自分達の世界だった場所を見つめている。
「すべて成し遂げて、もう一度あそこに帰りましょう。必ず」
ついに青い輝きが暗闇に消えた。
動けなくなってしまった人達に代わり、ルースが船長室に明かりを灯す。
「さぁ、ボケッとしてる暇はないわよ。それぞれの約束を果たすために全力を尽くしなさい!」
ルースの鼓舞で船は時間を取り戻した。
箱船はまっすぐ海上を目指す。
いつ果てるとも知れない闇の中を突き進み、やがてぼんやりとたゆたう光を見つけた。
マテオ・テーペの神殿の奥の間では、ナディア達水の魔術師が息を切らせて膝を着いていた。
縮小された障壁は安定している。聖石のおかげだろう。
ナディアはベルティルデに感謝した。
「皆さん……ご無事ですか……?」
声を絞り出し、仲間の生死を確認するナディア。
ぽつぽつとうめき声のような返事がくる。数が足りない分は気絶しているためだ。
誰も死んでいないことに、ナディアは心から安堵した。
誰かの呼びかけであづまは目を覚ました。
ぼんやりする頭を起こすと、アンセルのホッとした顔が間近にあった。
「よかった、生きてたか。まだだるいだろう。横になったほうがいい」
あづまが答える前に、アンセルに寄りかかっていた体を起こされ、横たえられる。
「あなたは……大丈夫ですか?」
「正直クタクタだが、まあまあ元気だ。ここにいるから、ゆっくりおやすみ」
アンセルの手に視界をおおわれると、あづまは眠気に誘われていった。
診療所で最初に意識を取り戻したのはヴァネッサだった。
彼女の他に目を開けている者はいない。
瞬時に生じた焦りを無理矢理抑え込み、目の前の患者から順に呼吸の有無を確認していく。
「んう……おお、ヴァネッサか?」
じきにビルが目覚めた。
「……みんな生きてる」
ヴァネッサの顔に喜びが広がっていく。
「はは……わしもまだまだくたばってる場合ではないということか」
「ぬるま湯でも用意しようか。喉がかわいただろう」
「ありがたい」
ヴァネッサはよろよろと立ち上がると、壁伝いに給湯室へ向かった。
(生きてたけど、もうひと踏ん張りだ。衰弱死なんてさせない。これからここに運ばれてくるだろう患者も……!)
踏み出す足に力をこめた。
箱船を見送った船着き場は、静まり返っていた。
立っている人は一人もいない。
気を失っている者は多数──死者は、未確認。
かろうじて意識は保っていたが、とても動ける状態ではなかったイヴェットだが、ゆっくりと深呼吸を数回繰り返した後に何とか上体を起こした。
汗で額に張り付く前髪をかき上げ、周囲を見渡す。
まるで一面の死体の真ん中にいるようなおぞましさを覚えた。
思わず目をそらし、上を向くと、淡い青色の空と人工太陽が見えた。
そのことから、箱船が水路を渡り始めて自分が意識を失ってから、それほど時間が経っていないことがわかった。
「誰か……生きてますか?」
すぐ近くにいた男の肩を揺する。
それから、また手の届く範囲にいる別の人も。
何度か揺さぶると、先にクロイツが目覚めた。
「う……っ、終わったのか……?」
それから、オーマが。
「イテテ……どうなったんだ?」
三人は疲れ切った顔で怪我がないことを確認すると、周りの人達に呼びかけ始めた。
みんなが生きていることを願いながら。
クロイツがカヤナの無事に安堵した時、オーマの焦った声が聞こえた。
「おい、こいつ弱り切ってる。何とかしないと」
息はしているが青白い顔色のバニラがオーマに抱かれていた。
イヴェットが水の魔法でバニラの唇を濡らす。
反応はある。
「診療所へ運びましょう。あそこも大変な状況でしょうけれど」
「他にもやべぇのがいそうだな。探すぞ」
「私も……手伝うわ」
クロイツとカヤナも自分の体を叱咤して立ち上がる。
輿の上で気絶していたリュネは固定を外され、フレンに起こされた。
「よぅ、未来の平民宰相殿。立派だったぜ。お前さんの骨を拾うのは、まだまだ先だな」
「はは……せっかく気持ちのいい夢を見ていましたのに。目覚めてみれば強面の男爵様とは……」
二人とも軽口を叩きあえるくらいには元気だった。
担ぎ手達も二人の声で目を覚まし、それぞれの生存を喜び合った。
この頃には、そこかしこで人々の声がざわめきとなって増えていっていた。
ステラとクラムジーも、アシルに起こされていた。
「すみません、私……」
箱船が出て行った直後、崩れたステラに回復の魔法をかけたのはアシルだった。
それでもステラは、まだとても立ち上がることはできそうにない。
「あなたも診療所へ行きましょう。クラムジーさんは……」
「何とかいけますよ……あなたのおかげで」
「お役に立てて何よりです。それに、あなたには今後も頼みたいことが山ほどありますから。──こき使われてくれるんでしょう?」
もちろん、とクラムジーは頷き返す。
アシルの姿を見た人々が、立てない者は不安気な顔で見上げ、立てる者はこれからどうするのか言葉を待った。
「動ける人を集めましょう。担架を用意して重症者を診療所へ運びます。そこでも受け入れ態勢は整え始めていると思いますが、回復魔法を使える人を送ってください。それから……」
アシルが次々に指示を飛ばすと、動ける人達はすぐに行動に出た。
それから数日は、ひたすら体力の回復に努めることになった。
溢れかえっていた診療所もしだいに患者の数を減らしていき……。
そんな中、死んでしまった人の埋葬も行われた。
それからさらに日が過ぎ、マテオ・テーペは箱船が帰還する一年後のために準備を始めるのだった。
個別リアクション
なし
こんにちは、冷泉です。
メインシナリオ・グランド側はこれにて終わりです。
最初からご参加の方も途中からご参加の方も、ありがとうございました!
リアクション配信の遅れなどもありましたが、皆様のおかげで最後まで続けられました。
もしも、プラリア書いたよ! という方がいらっしゃいましたら、こっそり教えてください。こっそり拝読しに参ります……!
すでに休日シナリオのチケットが販売されていますが、そちらもお楽しみいただければ幸いです。
また、おまけのファイナルシナリオ(仮)も行う予定です。
こちらは軽めの500円シナリオとなります。
濃い! 描写を!!(全年齢対象の範囲です)という方は、休日シナリオにもご参加ください。
精一杯尽くします。
ファイナルシナリオ(仮)の詳細につきましては追って公開いたします。
もう少しだけ、お付き合いいただけるととても嬉しく思います。