第1章 魔力制御訓練
人は罪深い生き物だ。
満ち足りるを知らず更なる渇望に身を焦がす――。
貴族のロスティン・マイカンは、身なりを整え領主の館の裏庭へと訪れていた。
ここは、館の使用人たちの休憩所として開放された庭である。
「そう、それは俺も同じだ。色々メイドちゃんがお世話してくれたの嬉しいけど、ここは新規開拓をしなくてはいけない!」
ぐっと拳を握りしめ、迫真の表情で歩き出すロスティン。
そしてきょろきょろと辺りを見回す。
木で作られた椅子に座り、寛いでいるメイドたち――男の使用人の姿など、ロスティンの目には入らない。
「ん? あれは……!」
歓談しているメイドたちの中に、あの子を発見した。
「はーい、そこの可愛いきみー、確かミーザちゃんだよねー?」
「あ、ロスティンさん! もうお体大丈夫なのですか?」
ロスティンに気づくと、ミーザ・ルマンダは立ち上がって笑顔を向けてきた。
彼女のキュートな笑顔に、ロスティンの心はすっかり奪われてしまった。
「それはもう生死をさまようほどの重傷だったが、君のその笑顔で、この瞬間に全快さ」
などと言いながらロスティンが近づくと、ミーザとメイドたちの顔に、より可愛らしい笑みが浮かぶ。
「事件も解決しましたし、延期になっていた打上げを行おうって話をしていたんです。ほら、お掃除のときにお話しした」
「掃除の時……そうだった! 俺一人とメイドちゃんたちの合コンパーティの約束をしていたんだった」
ロスティンはかつてしていた、重大な約束を思い出した。
美人のミーザはロスティンのお気に入りのメイドの一人だけれど、彼女には思いの人がいるために、ロスティンになびくことはなかった。しかし今は違う。
命を賭して、彼女を守った英雄なのだ!! 惚れないわけがない。
今口説かずして、なにが男か!
「ミーザちゃーん、今日暇ー? その打上げについてじっくり俺と話しない?」
「……はい。ロスティンさんにはとっても感謝していますので、私もじっくりお礼を言いたいと思っていたんです。でも、今晩はお話しだけですよ」
ちょっと赤くなり、ミーザは上目使いでロスティンを見た。
(こ、これは……! 誘っている。今晩、いや、さすがにそれはないか。そう、打上げの日だ。俺は沢山のメイドちゃんの中から彼女を選び、エスコートして、彼女の部屋へと送る。そこで彼女から告白、これだな!)
ロスティンの頭に妄想シーンが浮かんでいく。
「わかった。楽しみにしている。待ちきれないかもしれないなー」
「ふふっ、それではお仕事に戻ります」
ぺこりと頭を下げて、ミーザはメイド友達と共に、館へと戻っていく。
「夜にここで待ってるよ、ミーザちゃーん!」
ぶんぶん手を振って、ロスティンはミーザを見送る。
「……いや駄目だ。約束を忘れてしまうかもしれないじゃないか。よし、情報収集したあと、迎えに行こう!」
そうと決めると、ロスティンは周りのメイドたちにミーザについて尋ねていくのだった。
犯罪者に拉致されて人質となっていた少女、シャンティア・グティスマーレは、以前よりも更に、外を出歩くことが嫌いになっていた。
元々嫌っていたのに、そこに恐怖心まで加わり、より一層辛く感じてしまう。
だけれど部屋に閉じこもって、アーリー・オサードに託された手記を読んでいても、もやもやしてしまい、そんな毎日もとても辛くなってきた。
彼女は意を決した。アーリーに会いに行こうと。
「お嬢様、足下にお気を付けくださいね」
彼女に優しくそう言い、馬車へと乗せてくれたのは、メイドのミーザだった。
短い間だったが、ミーザも人質として犯罪者に捕えられていた。
メイド長がいなくなってから、彼女はよく、シャンティアのもとに訪れて、世話をしてくれている。
館のことや、事件のことについて、シャンティアに優しく説明をして、励ましてくれていた。
彼女は今、外れの館で行われている魔力制御の訓練に加わって、囚人たちと共に魔法の訓練を受けているとのことだ。
馬車に乗ると、シャンティアは体を丸くして、本を開いて精神を落ち着かせようとする。
アーリーの姿が、そして彼女の強い力が思い浮かび、シャンティアの心臓が高鳴る。
怖い、けれど……アーリーに聞きたいことがある。
(アーリーは怖いけど……わたくしが何かする理由……を下さいました)
「着きましたよ」
走り始めてすぐに、馬車は停止する。
外れの館は本館から遠くはなく、徒歩でもすぐにたどり着ける距離にある。
シャンティアは本と、持ってきたものを抱えて、馬車を下り……ようとして躓いてしまったが、ミーザが助けてくれた。
「シャンティア・グティスマーレお嬢様です。アーリー・オサードとの面会に訪れました」
そしてミーザは門番に事情を話し、係の者を呼んでもらう。
「これより先は同行できませんが、大丈夫ですか?」
シャンティアはミーザの言葉にこくりと頷いて、現れた騎士と共に、面会部屋へと向かった。
シャンティアは事前に騎士から、アーリーはここでは、港町住民としての「アニサ」という名を名乗っていると説明を受けた。
魔力制御訓練に加わっているそうだ。
館の中の、魔法が使えない部屋で2人は面会を果たした。
部屋には仕切りなど設けられてはおらず、双方に騎士が付き添っての面会だった。
シャンティアの前に現れたアーリーは、別れた時の彼女とはまるで別人だった。
地味な服で肌は覆われており、化粧を一切していない大人しそうな顔。
魔力が封じられているこの部屋では、アーリーの魔力を感じることもない。
だけれど。
「久しぶりね。何の用かしら」
そう言った彼女の声と、一瞬、シャンティアに向けられた冷たい目に、シャンティアの心が震えた。
間違いなく、彼女はアーリー・オサードだ。
反省などしていないかのような目。でも、それこそアーリーらしいとシャンティアは思う。
「あの……皆様、に……見せて、しまいました。秘密、沢山の人に知られてしまいました……それで、良かったのか……聞きに、きました」
アーリーに渡された彼女の祖父の手記を、手放すことはなかったけれど、シャンティアはウィリアムや警備隊に見せた。
その行為が、アーリーにとってそれでよかったのか。シャンティアには分からなかった。
だから彼女に直接確認してみたいと思った。
「あれは、あなたにあげたのよ。あなたの好きにしていいわ。私はこうして拘束されたけれど、何も変わらない。もうすぐ、私は死ぬのよ。
それからあなたは、世界に希望がないことを伝えていくのよ」
「……アーリーは、死、ぬの……ですか?」
「そうよ。私は少しだけ、世界の寿命を延ばす協力をすることにしたけれど、一族が滅びれば、世界も遅かれ早かれ滅び……」
アーリーは言葉を続けようとしたが、騎士団員が手で彼女を制し、止めさせた。
希望がない。それはシャンティアにも分かっていることで、アーリーの言葉自体で動揺することはなかった。
少なくても、自分のしたことに対して、アーリーが怒りを感じていないということに、シャンティアは少しほっとした。
「あ……これ、差し入れ、です」
よいしょっと持ち上げて、どんと置いたのは分厚い魔法関連の学術書だった。
アーリーは訝しげに眼を細める。
引きこもって魔術の勉強ばかりしてきたシャンティアだからこそ理解ができるものであり、アーリーはまともに読むことさえ難しい本だ。
「それからこれ……つけて、ください」
そう言って差し出したのは、とても可愛らしい、刺繍入りのリボンだった。
「…………」
勿論アーリーは受け取ろうとはしない。
「えと……おしゃれ……した方がいいと思……思います。アニサ……さん? かわいい名前に負けないように……しないと。わたくしはかわいい……と思うの……」
じいいっと、シャンティアはアーリーを見詰める。
魔力を感じず、騎士に護られているこの部屋では、アーリーに恐怖を感じることもない。
とはいえ、アーリーが軽く睨むと、びくっと体が反応してしまうけれど。
「わたくしに……見せて、ください。かわいい、姿」
それでも、シャンティアは譲らない。これはシャンティアなりの復讐。かわいい、復讐だ。
「お洒落なんて、してはいけないのよ。目立っては、いけないのよ、アニサは」
そう言いながらも、アーリーはシャンティアの手からリボンを受け取って、自らの髪を結んだ。
「……これで、満足?」
素っ気なく言うアーリーに、シャンティアは「かわいい、です……」と、微笑した。
アーリーはぷいっと横を向いた。
その頬が、薄らと赤らんでいた。
夕方。
領主の館の外れにある堅牢な建物の2階にて、魔力制御の訓練が行われようとしていた。
(最初のインパクトは大事ですわよね!)
生徒達が集まりつつある部屋に、子供が1人入ってきた。背が小さく目立たなかった為、直ぐに彼女の存在に気付く者はいなかった。
(……! こ、この部屋、魔法が思うように発動できない!?)
その子――実習生として訪れたエリザベート・シュタインベルクは、訓練が行われるこの部屋でさえ、満足に魔法が使えないことに気づき、焦った。
インパクトとしても、自分の存在に気付かせるためにも、手本を見せるためにも! いつものアレをやらねばならないのに。
部屋を見回して、空いている椅子を見つけ出して運び、その上に乗り、演台の上に立ち、それから力を振り絞って風の魔法を発動。
「おーっほっほっほ! 皆様の魔力訓練、微力ながらお手伝いしてさしあげますわ!」
そしてなんとか十数センチ、浮かび上がることに成功した。
(魔力制御に大事なのは集中力と精神力……。集中が途切れたり驚いて暴発してしまったりとか、自分も何度か経験はありますし、手本となるためにも、精神力の高さを見せつけてあげませんと……!)
この空間での制御はかなり厳しかったが、辛さを顔に出すことなくエリザベートは笑顔で訓練生たちを迎える。
「なんだ? あの時のチビじゃねぇか」
訪れた囚人服姿の男達が、嫌そうな顔をする。
「ホントだ。ここはガキが来るところじゃねーよ。帰って寝てな」
「ああそうか、えらそーにしてっけど、落ちこぼれか。んで、ここに補習を受けにきたのか」
「ふふふふ……いいえ、私はあなた方のお手本となるために、来たのですわ……」
笑顔のまま、エリザベートは自分を抑えながら、魔法のコントロールを続ける。
「チビのくせに?」
「どう見ても幼児だろ、お前!?」
「ふふ……大丈夫、大丈夫、大丈夫……ですわ……」
疲れのせいか、体の内から湧き起る熱いエネルギーのせいか、エリザベートの身体が小刻みに震える。
「君、危ないよー」
続いて訪れた一般参加者の少女――アウロラ・メルクリアスが、浮かんでいるエリザベートに気づき、近づいて声をかけた。
「危なくはありませんわ。きちんと魔法の制御をしていますから。……ですが、このままでは授業が行えませんわね。一旦降りるとしましょう」
と言って、エリザベートは慎重に演台の上に下りて、それから椅子の上に下りて、床へと下りた。
……エリザベートの姿は演台で隠れてしまい、受講生たちからは頭さえも見えなくなった。
「席につかなくていいの?」
「ここが私の席ですわ」
「……あ、もしかして魔法学校からお手伝いに訪れた子?」
アウロラは義足を曲げて屈み、エリザベートと視線を合わせる。
「子ではありません。あなたたちに教える立場の教育実習生ですから!」
「そう、頑張ってね」
そう微笑みかけると、エリザベートは「あたなたちこそ、頑張りなさい」とすまし顔で答えた。
面白い子だなあと思いながら、アウロラは室内に目を向けた。
彼女は、今日から訓練に加わることになった一般参加者だ。
アウロラの魔力は今は人並み程度。恐らく才能もそうある方ではない。
だからこそ、上手に効率的に魔法を使えるようになれば、みんなの役に立てるかなと思った。
「あ……」
アウロラは部屋の一画――エリザベートをからかっていた集団に目を留めた。
(囚人服? 囚人も参加しているって聞いてはいたけれど……)
拘束もされていない状態で参加していることを不思議に思いながらも、アウロラはその集団に近づいた。
「こんにちは」
物おじせず、アウロラが声をかけると、囚人たちは訝しげな目をアウロラに向けてきた。
「町の子か? 何か用か」
「うん。ちょっと失礼なこと聞いちゃうかもなんだけど、あなたたちってもしかして、捕まってた人たち? みんな同じような服着てたから気になっちゃって」
「……まあ、そうだな。あんたらみたいに好きな服は着させてもらえねえ」
「そっか……。でも、ここにいるってことはみんなで協力して外を目指そうって思っててくれてるってことだよね」
「……」
友好的なアウロラの問いかけに対し、囚人たちはすぐに返答はしなかった。
改心した人たちだと信じて疑わないアウロラは、以前行われた、町民会議での出来事を簡単に囚人たちに話した。
彼等はそのことを知らなかったようで、顔を合わせて複雑そうな表情をしていた。
「ところでトルテさんとか町民会議に出てた人達はここにはいないの?」
無邪気にアウロラが尋ねると、囚人の一人が「あいつらはこない」と答えた。
「……どうして? 変わって、ないのかな」
トルテとは町民会議の時に胸倉つかむほど言い争ったから、今どうしているのか気になっていた。
「ここに来ている奴らのこと以外、俺らは知らねぇけど、声も全く聞かないし……死んだかもな」
「……え?」
彼等の返事に、アウロラは戸惑う。
「トルテや魔力が異常に高い奴らはさ、理不尽にずっと捕らえられてたからさ……」
囚人たちは少し複雑そうな顔をした後「終わったことだ。奴らのことを考えても仕方がない」と話を切った。
「俺らは犯罪行為をしたっていう自覚あるし、罪償って、早いとこ外に出ようって考えてるんだぜ」
「そういえばお前、貴族の坊主のロスティンってやつ、知らねーか?」
立場は違うが、仲間なんだと彼らは笑った。
……尤も、ロスティンはそんなこと微塵も思ってないが。
「そうですか……貴族のお友達がいるのですね。ええ、立場の違いこそあれど、互いに歩み寄る意思があるのであればきっと友人になれますわ」
いつの間にか、エリザベートが近くの机の上に立って、ちょっと浮いて胸を張っていた。
「友人? お前の場合、妹……いや、娘だろ」
「パパ~とか言って、可愛いく懐いてくれんなら、仲間にしてやってもいいぜ」
「チビだけど、能力はまあ、認めてるしな」
そういって笑う囚人たちを見て、自分の言葉に間違いはないと、エリザベートは確信する。
貴族と、町の人たち、囚人たちだって、きっと分かり合える。
(ただ……チビ発言だけは、改めていただきませんと!!)
笑顔のままだったが、拳はわなわな震えてしまっていた。
「あ……」
アウロラはもう一人、気になる人物を見つけて近づいた。
隅の席にいる、単色の囚人服に似た服を纏い、静かに本を読んでいる女性。
「こんにちは……アニサ、さん」
本から目を上げて、アニサと呼ばれた女性――アーリー・オサードがアウロラを見た。
「ええっと、ウィリアムから話、聞いたよ。アウロラ・メルクリアスっていいます。よろしくね」
目の前にいる女性は、事件を起こしたとはとても思えないような、大人しそうで穏やかな印象の女性だった。
彼女は少しアウロラを眺めてから、こう尋ねてきた。
「……ウィリアムさんの、彼女さん、ですか?」
「え? 違うよ。どうして」
「とても親しい人にしか、話せないことだと思うから。気を付けてくださいね。あまり深くかかわらない方がいいわ」
「う、うん」
アウロラはとりあえず頷いた。
アニサは視線を本に戻していた。彼女の目はなんだか曇っていて、纏っている雰囲気も暗かった。
だけれど、自分を気遣ってくれたという点に関して、若干の優しさを感じ……なくもない。
「皆さん、席に着いてください。エリザベートさんは、机から下りて手伝ってくださいね」
ガラスの器が入ったケースを持って、実習生の一人、アリス・ディーダムが部屋に入ってきた。
続いて、教師であり責任者であるレイザ・インダーが現れて、アリスとエリザベートにガラスの容器と、水と、砂の入った容器を前列のテーブルに並べるよう指示を出した。
「火と水属性の者は、容器に水を入れろ。風と地属性は砂だ」
火と水属性の者には、容器に入った水を一定の定められた時間をかけて、蒸発させるようにと。
風と地属性の者には、片方に入った砂を一定の定められた時間をかけて、もう片方の器に移すようにとレイザは指示を出した。
「きゃあっ。む、難しいですね……。私ドジだからこういうの苦手だなぁ」
アウロラの隣に座っていたメイドの少女、ミーザ・ルマンダは開始してすぐ、机に砂を散らばしてしまった。
「この魔力が制御された空間で、そこまでの事が出来るということは才能があるということだ。頑張れ」
レイザがフォローをすると、ミーザは顔を赤らめて「は、はい。頑張ります……っ」と、砂をかき集めた。
(この人、先生のこと好きなのかな……っと、今は集中しないと)
ミーザの様子を見てそんなことを思いながら、アウロラも地の魔法で砂を浮かせようとする……が、普段ならば出来ることなのに、この空間では今のアウロラには課題をこなすことがかなり難しい。
囚人たちもそれぞれ失敗をしており、訓練生の中で完璧にこなしていたのは、隅に座る女性――アニサだけだった。
休憩時間。
エリザベートは魔力訓練室に残ったが、アリスはレイザと共に隣室の準備室に戻り、器具を片付けたり、次の授業の準備を手伝っていた。
「レイザ先生、あの件は……何か進展ありましたか?」
何か考え事をしているレイザに、アリスは尋ねてみた。
「……解読は進めているが、俺の口からはまだ話せることはない」
レイザがそう答えると、アリスはレイザの目をじっと見つめる。汚れの無い、純粋な目で。
「解っているところまででいいです。聞きに来いと仰いましたよね?」
「お前が子供じゃないのなら、な」
「もう、子供ではありません」
強い意思の宿る眼で、アリスは続ける。
「あの洞窟が作られた経緯、何の為にどのようなことが行われたのか、何故沢山の人が亡くなったのか……そして、本や石板の解読も。関わった以上、知りたいです。教えてください」
引き下がらない。彼女の強い意思に負けたのか、レイザは息をついて、少し困った顔で言う。
「日誌……お前達が神殿から持って帰った本によると、あの洞窟は、水の神殿と魔力の溜まり場である山を繋ぐものであったらしい。人が通る為に作られたものではなく、水の魔法エネルギーの通り道として存在していた」
「人が作ったような道もありましたけれど……」
「そちらは、もっと昔、この辺りに住んでいた一族が利用していた道のようだが、これは石板の解読がもう少し進まないとわからない。遺骨もその一族のものだろう」
「そうですか……石板の解読、私にもお手伝いできますでしょうか?」
石板から文字を写し取ったのはアリスだ。何か出来ることもあるかもしれない。
「出来ることはあまりないとは思うが、お前がそんなに知ることを望むのなら、解読をしている者と会ってみるか?」
「はい、お会いしたいです」
「……部屋の隅に居た女性を覚えているか? そつなく訓練をこなしている女性だ」
今日の訓練を振り返り、隅の席にいた女性を思い浮かべる。
「はい、確かアニサさんでしたよね」
「彼女はその一族の生き残りだ。石板の文字は、彼女にしか解読できない」
「他に、一族の方が書いた書物など、残っていないのですか?」
アリスの問に、レイザは首を横に振った。
「この辺りは、100年ほど前に起きた火山噴火と炎の魔力の氾濫により滅びているんだ。何も残ってはいない」
「そうですか……」
「君は彼女から、俺の口からは言えないようなことも聞くだろう。ただの好奇心なら知るべきではないことだし、知られたくないことだ」
いつも自分達に向けるような優しい目ではなくて。
レイザは厳しく真剣な目をアリスに向けた。
アリスの身体に、いいようもない緊張が走った。
でも、アリスはすぐに微笑みを浮かべる。こんな時だからこそ、笑顔を忘れずにいたい、と。
すると、レイザの顔からも厳しさが消えていった。
「知るからには生かせよ、アリス」
言って、レイザはアリスの頭に優しくぽんと手を置いて、立ち上がった。
「はい」
返事をしてアリスはレイザに続く。
こんな風に、彼の後を追って、傍らで手伝っていられる日が、長く続くことを願いながら……。
館の地下では魔法薬の研究が進められていた、のだが……。
「なんじゃこいつは……可愛くないどころか、男じゃないかっ……可愛い助手じゃ言うたろうが!」
それがレイザ・インダーに案内された部屋に入って、リベル・オウスが最初に浴びた一言だった。
「そう簡単に、望み通りの助手なんて見つかるわけないだろう。本人曰く、魔法薬はともかくとして薬そのものや魔法の知識、経験はあるということだ。じゃあリベル、後は頼む」
レイザは淡々と語ると、リベルの肩を軽くたたいてさっさと出て行ってしまう。
「よろしく。俺はリベル・オウス。魔術と薬に対する知識はあるつもりだ。せいぜいうまく使ってくれ」
リベルは仕方なく声を掛けつつ、手を差し出した。
しかし、その手はただ宙に佇んだままになってしまう。
「手伝う気があるのなら、さっさと働け。ほら、そこの青色の瓶をとってくれ」
その手を無視して、老人はいきなり指示を飛ばしてきた。
それからその日の間は、次々と飛んでくる指示通りに動くといったことばかり。それでも、リベルにとって魔法薬の調合手順というのは観ているだけでも貴重な体験だと感じられるものだった。
「レイザから目的は聞いておるな。何か意見はないか」
突然、そんな言葉が老人から出たのは、翌日の昼過ぎのことだった。その時リベルはやることがなくなっており、仕方なく自前で持ってきた素材を使って薬を作っていた。
無愛想な口調は変わらないのだが、どうやらリベルを認めてくれたらしい。
「魔力を一時的に極限まで高める薬、ということだが、対策は必要だな。未成年や犯罪者に飲ませないようにした方がいいし、薬そのものについても、使用後の負担を緩和する薬を考えた方がいい。できれば、一緒に飲むタイプがいいな。薬の効果時間が短くなるかもしれねえが、服用者へのリスクは極力なくしていきてえ」
老人は黙って聞いている。リベルが言葉を切ると、他にはないかとさらに促してきた。
「あとは魔力増幅薬の応用で、増幅した魔力で熱さから身を守る薬もほしい。火山で活動するなら必須だろうし、レイザ達に頼りきりにするわけにもいかねえだろう」
「魔法薬の併用は基本的にできん。しかし、普通の薬ならばいけるかもしれん。その薬の調合は任せる。材料はレイザに言えば持ってきてくれるじゃろう。増幅した魔力で熱さから身を守る薬については、すぐにはできないが開発してみるとしよう」
そこで初めてリベルの方を向いて、老人はそう話した。そして、リベルの作業用にと道具で埋め尽くされていた机を一つ、片づけて用意してくれる。
「分かった。すぐ取り掛かろう。可愛くもない野郎の助手だが、よろしくな」
改めて手を差し伸ばす。
それに対し、老人は嫌々そうにだが、しっかりとその手を握り返してきた。
「そうだ、連日の疲れもあるだろう、あんたもこれ、飲むか? 気付け薬だ」
リベルはこれからの作業の気合入れに、とも言いながら先ほどから作っていた薬を飲み、残りを差し出す。
老人はそれを受け取ると一気に飲み干した。なかなかの飲みっぷりである。
「……確かにこりゃ効きそうだな。しかし、お前とは別に可愛い子に来てもらって、身の回りの世話をしてもらえんかのぅ。いっそうこの部屋がむさくるしくなったわ……」
それからは毎日、次々に試薬を作り、リベルが実際に飲んでみるということが繰り返された。
リベルが飲むことで効果が分かるだけでなく、負担を減らす薬の調合のための手がかりにもするためだった。
そのバランスはなかなか難しく、薬の完成はまだまだ遠いが、日々、目的に向かって進んでいる実感はあった。
第2章 火山対策説明会
箱船出航時に起こり得ることに対して、伯爵からリルダ・サラインに通達があり、リルダから町の人々に伝えられたことにより、人々は混乱に陥っていた。
そのため、警備隊主催の火山対策説明会に訪れる住民は少なくなっていた。
今日は深部への同行を希望した立候補者の投票が行われる。
立候補が適性検査を受けている間に、警備隊隊長のバート・カスタルは土木作業、魔法鉱石の採掘に加わる人達に、作業の説明を行っていた。
「まずは入口に向かう為の足場作り。それから、入口を広げて補強。魔法鉱石が発見された場所までの道も同じように広げて、補強しながら進んでいく」
地震が増えていることもあり、崩落を起こさないよう魔法はあまり使わずに慎重に掘り進めるように、且つ少しでも早く魔法鉱石を発見する必要があると、バートは人々に話す。
魔法鉱石は、魔法薬や魔法具の材料として使えるようになるまで、時間がかかる。
火山対策には間に合わないかもしれないが、手に入りさえすれば、今ある既に練成された魔法鉱石を多少なりとも火山対策に回せるだろう。
「道案内と発掘のサポートは彼がしてくれる」
言って、バートは端の席に座っている少年――ファルの肩に手を置いた。
ファルは、洞窟を探索して、魔法鉱石を発見したメンバーの一人だ。
説明会に参加し、役立てそうなことがないか探していた彼は集まった者の中で、鉱石を発見した場所にすぐにたどり着けそうな者は自分だけだと知り、バートに鉱石探索の協力を申し出ていた。
大人達は洞窟を広げてからではないとたどり着けないが、小柄なファルならば、必要であればすぐにでも、鉱石を発見した場所にたどり着ける。
(協力が必要だから、1人で行くわけにはいかないけれど……)
地の魔力と親和性の高い自分ならば、闇雲に掘らなくても鉱石のある場所を探れるかもしれない。
(もうすぐ、アクセサリー化した鉱石も貰えるはずだし)
それがあれば『同じものを探すまじない』で、探し当てることが出来そうな気がした。
「質問があるんだが、いいか?」
強面で体つきの良い青年――クロイツ・シンが手を上げた。
クロイツは説明会に出席し、真剣に話を聞き、必要に応じメモを取ってきたが、深部同行には立候補しなかった。
「現実的かどうかは判らねぇけど、抑え込むのではなく、発掘した魔法鉱石を媒介に火山活動の際に発生する力を魔力へ変換し、障壁の強化に活用することは出来ねぇか?」
説明会では、水の神殿の力で、火山活動を抑えてきたと聞いていた。
ならば、その時発生した力のやり場はどうなっていたのだろう。
「単純に臭いものに蓋したみてぇなもんなら、発散されなかった分蓄積され続けてる可能性がある。火山にその意思があるなら、いい気分してねぇだろうし」
「意思? 火山にそういったものはないだろうが、まあ、そうだろうな……」
「抑え込めなくなった時、この空間内で全員終わりだ」
クロイツの言葉に、参加者たちが沈黙する。
「この空間だって障壁によって保たれている、自然の摂理じゃねぇ。理論や想定はあんだろうが、何事も理想通りにいかねぇ。
が、俺らは今生きてるし、いずれ出る日の為にここにいる」
はっきりとした彼の言葉、意志を感じる眼に、バートは深く頷いた。
「接近するような……人柱みたいなことも先延ばしだろうし、奴さんの怒りを増長させんだろうな。いつまでそれができんのかって問題もある」
そしてクロイツは「何より気に食わねぇ」と続けた。
「なら、そういう方向も考えてはどうかと思うんだが。できるかどうか判らねぇし、絵空事かもしれねぇし、何より、火山がもし怒りや憎しみを持ってるなら、活用は抑え込む以上の覚悟がいるだろうが」
「例え、それが可能だったとしても、今、この地に残された技術では到底無理なんじゃないかな。
水の神殿が建てられたのは約75年前だそうだが、当時の王国の技術でそれが可能ならば、軍事国家である王国が力を利用しないはずはなかった、と思う」
それから75年月日が流れたとはいえ、この辺境の地の技術者、残された資材と時間で、為し得ることではない。
「ただ、上に聞いてはみるよ」
バートは近々、別件で伯爵と会う予定があるのだと、クロイツに話した。
その場で、この件について聞いてみると。
「頼んだ。
……もし、火山と意思疎通できるなら、火山の考えを知りてぇ位だ」
そう呟いたあと、ふと刺すような視線を感じて、クロイツは振り向いた。
彼を見ていたメイド服姿の少女が、慌てて目を逸らす。
「なんだ?」
睨んだわけではないが、クロイツの目はもとから鋭い。少女――ミーザ・ルマンダがびくっと震える。
「あ、いえ……火山に意思だなんて、見かけによらず、ロマンチックな考えをお持ちな方なんだなって……す、すすすみません。私仕事があるので、お先に失礼します」
そう言うと、ミーザはそそくさと帰っていった。
しばらくして、立候補者が皆の前に現れた。
一般人で、火山深部への同行を希望した者は以下の5人だった。
メリッサ・ガードナー
外国人の29歳女性。体力に秀でた地の特異な魔法能力者。趣味はクライミングと原石探し。
「魔法は得意、体力も自信ある。趣味も発掘に活かせるかな。疲れてる人のケアもできるよ」
魔法と労働の両方で地下道を確保できるとアピールし、回復魔法の能力については、その場でバートに実演してみせた。
かなり優れた能力者だとバートは彼女の実力を認めた。
トゥーニャ・ルムナ
港町住民の26歳女性。驚異的な風の魔力の持ち主。
「困っている(人手を欲している)なら、目的達成のために皆で協力しないとね~」
風の性質を上手く使い分けて魔法を使用することで、空気の流れを作る事が出来る。
風圧による削岩、飛来物や溶岩を受け止める風の防御壁など、色々な場面で貢献できると思うと、アピール。
その魔力の高さは誰もが認めるところだが、魔力以外の能力を持っていないことも明らかだった。
ウィリアム
港町住民の19歳男性。とある施設に収容されているが、騎士ナイト・ゲイルが身元引受人となり、彼の指揮下で警備隊の業務を手伝っている。以前は造船や農業を手伝っていた。
「家族は居ない。自分以上に、生きていて欲しい奴も居るんで、情況によっては、命をかけるのも厭わない積りだ」
魔力の扱いは苦手だが、体力に自信があると、アピール。
「土木や箱舟造りの手伝いで技術力を磨いてた時期もある身軽さ、力仕事は、人並み以上に出来るはずだ。
魔力での消耗を避けたい場合の偵察要員にはなれると思う」
エイディン・バルドバル
外国人の24歳男性。驚異的な体力の持ち主。造船所で働いている。
「深部までの道のり、舗装された安全な道のりというわけではあるまい。火口でどんな儀式を行うのか知らんが、体力は温存しておきたいはず。体力で俺に勝る者はいない。俺が先陣を切り、岩石など障害を除去、速やかな進行と後続の安全確保に努めたい」
それから造船所に掛け合って、準備を整えることも出来るということと、
「こう見えて人並みには器用なつもりだ。突入までの準備はもちろん、現場での急な補修、修理などが発生しても対応できる」
そう自己アピールした。
ピア・グレイアム
港町住民の19歳女性。特異な地の魔力を持つ、パン屋の娘。
「私の力が、誰かの役に立てるなら……」
道中に危険な場所があれば岩や砂を操作して地盤を支えたり、溶岩の接近や、地震が起きた場合に力を弱める事ができるかもしれない。
また、同行する人達の体力の回復などでもサポートできると思う。
他にも地属性、また他の属性の方々と連携して安全に行けるよう努力すると、ピアは語った。
立候補者がアピールを終えた後、投票が行われ、この小さな世界マテオ・テーペを託すことが出来る人物に、それぞれが投票をしていった。
結果は数日後に、まず立候補者に知らされた――。
港町にある警備隊の詰所に、立候補者たちは集められた。
室内には、バートと、警備隊員数名の姿がある。
次々と発生する事件や職務に追われているせいだろう。警備隊員達の顔には疲労が現れていた。
とくに隊長のバートが疲弊していることは、普段の彼を知らない人でも分かるほど顔に現れていた。
「少しの時間でもいいので、休んでくださいね。私に出来ることがありましたら、手伝いますから」
心配してピアがそう言うと、バートは微笑して「ありがとう」とだけ答えた。
立候補者が全員揃うと、バートは皆に意思確認をした。気持ちは変わっていないかと。
誰もが、立候補の時から変わっていないと返事をした。
「わかった。では、深部への同行者だが、一般の皆からはウィリアム」
「……ああ」
名を呼ばれ、ウィリアムが返事をした。
「以上」
バートがそう続けると、一同「え?」と驚きの表情を浮かべた。
「その他の者には自らの能力で可能な範囲の同行をお願いしたい」
「う、うううっ、ヒドイ! 筆記試験があるなんて、聞いてないよー!」
メリッサは崩れ落ちて、床に拳を叩きつけて悔しがる。
「いや、筆記試験というほどのものではなく、単なる適性検査だったんだけど……うん、君は質問の意味は大体解ってたみたいだから気にすることはない」
「ぼくも名前はちゃんと書いたよー」
にかっと、トゥーニャが笑みを浮かべ、エイディンは厳しい表情のまま腕を組んでいる。
「説明会では皆への影響も考え、詳しくは語れなかったんだが、火山の深部とは“マグマの中”のことなんだ。
そして、水の神殿で抑えていたのは、“火の魔力”だ。行こうとしている場所には、金属をも溶かすマグマのみならず、強い火の魔力が渦巻いている」
バートはエイディンに顔を向けた。
「エイディン・バルドバル。自分でも自覚しているように、君からは一切魔力を感じ取ることが出来なかった。深部は魔力がないものに行ける場所ではないんだ。魔力がなければ、魔法薬は効かず、魔法具も扱えない。君の提案通りのサポートを君が行ける場所までしてくれることに対しては、大歓迎だ」
あと一つ、気になったのは動機だと、バートは続けた。
エイディンは、立候補の動機として「誰かの犠牲の上であってはならない。そんな不幸、俺は許さない。首根っこ引っ付かんで引きずってでも、全員を生還させる」という強い意志を見せた。
その思いは尊いのだが、今回の深部同行者の募集に沿わない動機となっていた。
「君がその意志を貫こうと皆のところに駆け付けようとしたのなら、君自身の身体が先に滅びる」
そして君を助けようと、犠牲が出るだろうとバートは忠告をした。
深部では物理的な防御力はほぼ意味をなさず、必要なのは魔法防御力なのだと。
続いて、バートはトゥーニャに目を向けた。
「トゥーニャ・ルムナ。君には尋常じゃない魔力が備わっているが、心身ともに子どもと変わらない結果が出ている。その体力では足手まといになるし、魔力があっても持久力がまるでないとなると、残念だが有用性が思いつかない」
体力がないということは、魔法を持続させる能力がないということ。
トゥーニャには強力な魔法を扱う能力や、強い魔力から皆を守る能力があるのだが、効果は一瞬でしかなく、こういった作戦で役立つことは難しい。
「魔法薬で体力を増幅するにしても、軽い薬程度では意味は無く、強い薬に耐えられる体はもっていないとなると……体力のある地の魔術師で完全に君の回復だけに動いでくれるような、信用、信頼できる相方がいれば、といったところだな」
「うーん、いないかな~」
トゥーニャの頭に囚人たちの姿が思い浮かぶが、彼らの同行は無理だということはトゥーニャにも理解できていた。
(仲良しじゃなくていいのなら、ここにちょうどいい人がいるんだけどねー)
じーっとバートを見るが、バートはトゥーニャの視線の意味には気付かなかった……。
「となるとこちらとしても、力を借りたいのだが、君の能力を活かせる方法が思い浮かばない。エイディン君との連携を考えていたみたいだから、彼が行ける範囲まで同行し、後方からサポートしてもらえるとありがたい」
火口への道を開いた際に、強い魔力の波動が洞窟内に流れる可能性がある。
魔法耐性がないエイディンは即死の可能性さえもある。トゥーニャは彼のもとを離れるべきではなく、体力のないトゥーニャは一人で奥に行こうとしても行き倒れることが確実なので、エイディンは彼女から目を離してはいけないと、2人に互いのサポート、及び互いが無茶をしないよう監視するようにと、バートは言った。
「メリッサ・ガードナー。君は能力的に誰が見ても適しているし、文句のない支持率だった。だが、火口突入を指揮する者――レイザがパートナーとして君ではなく、俺の同行を望んだ」
メリッサは何も言えなかった。
彼女は立候補前にレイザと会って推薦を求めたのだけれど……「生きていたい、大事な人と」という彼女の気持ちに対してのレイザの答えは「生きたいと思っているお前を、連れて行きたくはない」だった。
「ピア・グレイアム。君は体力面に不安があるが、火口の近くまでは行けると思う。メリッサと一緒に、サポートと退路の維持に努めてほしい」
「はい、皆が安全に行けるよう、努力します。……ところで、その先の火口のマグマの中へはどのように行かれるおつもりなのでしょうか?」
「それはだな……」
少し迷った後、バートはため息をついてこう語った。
「俺がマグマの中に道を作る。君達も火口が見える位置まで接近できるようなら、道の維持に力を注いでほしい」
過去には熱を抑えることができる火の特殊能力者が、マグマの中に飛び込み力を鎮めていたらしい。
それは決して戻ることのできない方法だった。
熱を抑えられてもマグマの中で呼吸は出来ない。マグマの中から浮かび上がる術もなく、マグマの中で溶けない命綱など存在しないから、外部から引っ張りだすことも出来ない。
「バートさんは、そのような事が出来るほどの力をお持ちなのですか?」
ピアの純粋な問に、バートは少し困ったように答える。
「魔法は得意だが、堪能というほどではない。君達より劣るだろう。だがら、魔力を極限まで高める魔法薬を使う」
「私の方が魔力があるのでしたら、私、行きますよ。今のバートさんには、無理です。そんな薬を飲んだら、体が壊れてしまいます」
「この魔法薬は肉体の限界を超えるまでに魔力を増幅させる薬だと聞いている。別に負担を軽減する薬も作ってくれてはいるが、多分君の体力では短時間しかもたず……命を落とすだろう」
また、開発に携わっている者から未成年には飲ませてはいけないとの意見も出ていた。
「出発はいつですか? 体力トレーニングでも、訓練でもなんでもします。
少なくても、今のバートさんが私より体力があるとは思えませんし、作業を終えて帰る時も、動けなくなったバートさんを担いで戻ってくるより、小柄な私の方が、火口に向かわれる皆さんの負担が少なくてすみます」
バートはこの世界に必要な人だ。多くの人の命を護るために。
勿論、自分のことだっていなくてはいい人間だなんて思ってはいないけれど。
「私には無理なようでしたら、側で皆さんを支えさせてください。例え、片道しかない道だったとしても……私の力が誰かの役に立てるのなら、大勢の人が助かるのなら。
命の危険は覚悟の上です」
真っ直ぐで真剣なピアの言葉に、エイディンの眉間にしわが寄った。
対照的にバートは穏やかな笑みを見せて、首を縦に振った。
「ありがとう……方法については、もう少し考えてみる必要があると思っている。ただ、深部に向かうものとの連携も考えると、現在のメンバー構成だと、行けるのはウィリアムと俺だけなんだ」
現在、熱から身を守る魔法薬の研究が進められている。
メリッサとピアはその薬を飲み、可能な範囲まで火口に近づくこととなる。
マグマの中は道を造ることに成功しても、かなりの高温となり魔法薬の力だけでは、肉体はもたないだろう。
熱を抑えることができる火の特殊能力者は2人。うち1人は力を鎮めるために力を温存し、完全な状態でマグマの中に行かねばならないため、道中力を使う事は出来ない。
「バートくんが命を賭して作るのは、レイザくんが行くためのの道。そして、レイザくん以外が、帰ってくるための道」
皆には聞こえないほどの小さな声で、メリッサが呟いた。
話を聞いているうちに、なんとなくわかってきた。
メリッサが世界のためにレイザのパートナーになる道を彼の言葉通り選んでいたら、それは彼女に与えられた薬だろうと。
彼を護るためでも、彼を生かすためでもなく、この地と世界の為に、己を犠牲にする薬。
「そういえば、ピアは警備隊のサポートも申し出てくれているが、出発までの間は体力づくりと、魔術トレーニングに集中してほしい。あと、町が沈む前にやっておきたいことも、沢山あるだろう」
「わりました。お役に立てますよう集中して頑張ります」
「それから、ウィリアム。君は魔力的に非常に厳しいのだが、“彼女”に頼るのなら、作戦的にも同行してくれなくては困る。強めの魔力を高める魔法薬を飲んでもらうことになるが、魔法薬の併用はできない。そのため、君は熱から身を護るためには、常に能力者に守ってもらわなければならない。魔力増幅薬を飲む俺もだ。つまり常に俺達は手を繋いでいくわけだな、ははははっ」
バートの言葉に、ウィリアムは苦々しい笑みを浮かべた。
「それでこの作成を終えて彼女が生き残る事が出来たら、お前は勿論彼女も恩赦となり釈放されるだろう」
「彼女の力を頼らない方法も検討していたのか?」
「彼女は土壇場で裏切って、世界を死に導かないとも限らないからな。勿論考えてはいた」
例えば、体力があり、水の特異な魔力を持つものなら、水蒸気を水に、水を氷に変える事が出来る。
その力を常に発動することで、周囲の温度を下げる事が出来るだろう。
体力があり、風の特異な魔力を持つものなら、魔法薬や魔法具の力も借りて、常時風のバリヤーを張っておくことで、安全な空気を保つことができるだろう。
そして地の魔力で道を作り、深部へたどり着く。
そんな方法も考えられていた。
「彼女は変わらず死を望んでいるようだが、未来の為にも、生きていてほしい娘だから。なんとか頼む」
「……ああ」
「では、道中の作戦については改めて連絡をする。深部に同行するウィリアム、それからピアも残ってくれ」
バートがそう言うと、警備隊員たちと共にエイディン、トゥーニャ、メリッサは下見や手伝いをしに洞窟へと向かった。
警備隊員指揮のもと、魔法鉱石の探索が開始されていた。
子供達が発見した小さな入口に、石段が設けられて、穴は広げられていた。
協力を申し出たファルは、その大きくなった入口から、警備隊員と、作業服をきた男性たちと共に中へと入り、道案内をしていた。
「しかし、お嬢ちゃんたちだけで、こんなところを探索したのか? 気持ち悪い生き物とかいただろうに。根性あるなー」
作業服姿の男性が陽気に話しかけてくる。
「疲れたらおにーさんがおんぶしてあげるよ。遠慮なくいってくれよなー」
警備隊員の話しでは、この作業服姿の男性たちは館に捕えられている囚人とのことだ。
ナイト・ゲイルの監視下にある囚人たちだ。
どうやらファルは彼らに女の子だと思われているらしい。
「こっち、です……」
真面倒なので特に否定することもなく、ファルは彼等を鉱石を見つけた道へと導いていった。
ただ、鉱石を発見した道は、途中とても狭い場所があり、ファルでも這わないと先に進むことはできない。
ファル以外は誰も、そのままでは奥へ進めなかった。
「先に行きます……大丈夫、何かあったらすぐ戻ってくる」
大人が岩を取り払い、削って穴を広げている間に、ファルは監視の警備隊員の許可をとって、ランタンを手に、1人先へと進む。
皆と一緒に来た時よりも、道は長く感じた。
だけれど、1人で歩いている今の方が、大地の力を感じ取れた。
「温かい力、感じる……」
ファルはこの国の人々とは少し違う魔力の使い方をしている。
生まれながらに魔力との親和性は高かったが、魔法学校には通ったことはなく、彼の施術は踊り、舞い、まじないの形で発動される。
「どのあたりの壁、だろう」
ファルはランタンを床に置くと、より地の力を知るために舞っていく。
ファルの力と、地の中に眠る力が、呼応するかのような感覚を受ける。
「こっちの方、ずっと先……何か、あるような」
目印に石を積み上げておく。
掘って、目的のものまでたどり着こうとしても自分だけでは長い時間を要してしまうから。
大人達が来れるようになったら、調べられるようにと。
感じる力が弱いところには少しだけ。強いところには多めに、石の目印を置いていくのだった。
第3章 水の神殿へ
領主の館の敷地内に、馬車が入っていく。目立たないようそっと館の脇に止まったその馬車からは、騎士団の警備隊隊長であるバート・カスタルと、何人かの騎士が降りてきた。
それだけなら普段の光景だと言えたが、最後に降りてきたのは違和感ある風体の男女だった。その身は、白い病衣に包まれている。
女性は、港町の診療所にいるはずのサーナ・シフレアン。付き添うのはラトヴィッジ・オールウィンだった。
「その格好で伯爵に会わせるわけにはいかないから、着替えてもらう」
騎士団に割り当てられた部屋に入るとバートはそう言い、ラトヴィッジを隣室へと案内していった。
その際に、部屋にいた女性へと目くばせをする。目くばせをされた女性――マーガレット・ヘイルシャムは、二人が出て行ったのを見て、 サーナの目をしっかりと見据えながら口を開いた。
「さて、伯爵との面会の前に、打ち合わせをしましょうか。私も言いたいことがありますし」
その真っ直ぐな強い眼差しに少したじろぎながらも、サーナは話しだす。その内容は、彼女が以前バートに話した内容とほぼ同じだった。伯爵が、この閉ざされた世界を本気で維持しようという気はないのではないかという話だ。
一通り話を聞き終わった後、少しの間を作って、マーガレットは自分の意見を話し始める。
「伯爵はこの閉じた世界では最高権力者です。言葉は選びなさい。自分を選ばれた者と思ってるようですが、悲劇のヒロインの立場に酔っているように見えますよ。言葉に出すのは控えなさい」
その強い口調ときっぱりと断じた内容に、サーナは一瞬、目を見開き、そしてそのまま顔を俯かせる。傷ついた表情を隠すことはしないのだな、とマーガレットは感じた。
「私、貴女になにかしましたでしょうか? 私の事、お嫌いですか?」
「嫌ってるのか? もちろん。あなたにとってアーリー・オサードが大切な友人だあるように、私にとってバート・カスタル卿は大切な友人です。彼がどう思ってるかはわかりませんが……それに本当に貴女に特別な力があるなら、いずれ伯爵の力が必要になるでしょう」
再び顔を上げたサーナが返すと、間髪入れずマーガレットも切り返した。
サーナは反論しない。それを見て、一拍間を置いた後、マーガレットは言葉を続ける。
「質問はよいのです。私も気になっていますし。ただ伯爵の機嫌を損ねるのは得策ではありません。あなたの行動一つで二人の騎士の運命が左右されかねません。伯爵の様子を見て、危なそうなら止めますから、その時は控えてくださいね」
最後は思わず、諭すような口調になってしまう。
「分かりました。気を付けます」
じっと考えるように黙り続けた後、今度は目線を外さないままにサーナはそう返した。悲しげな瞳はそのままだったが、聴く耳と、芯の強さはあるようだった。
そんなやり取りをしていると、扉がノックされた。入ってきたのは着替えを持ったメイドだ。サーナは急いで着替えると、バートやラトヴィッジとも合流して伯爵との面会の場である応接室に向かうのだった。
サーナ達が応接室に入ってからほどなくして、アシル・メイユールが騎士団長のアイザック・マクガヴァンを伴って現れた。
「お久しぶりです。アシル・メイユール伯爵」
震えそうになる拳を握りしめ、緊張を隠しながらサーナは気丈に挨拶をした。
「お美しくなりましたね、サーナ・シフレアンさん」
アシルは微笑んで言い、彼女、そして騎士を含め、集まった者すべてに着席を促した。
サーナの左右に、ラトヴィッジと貴族のマーガレット。
3人を挟むように、バートと公国騎士のナイト・ゲイルが着席した。
「まずはお話しを伺いましょう」
統治者、騎士団の最高責任者を前に、サーナの顔が強張りそうになる。
そっと呼吸を整え、意を決して彼女は話しだす。
「水の神殿は、確かにメイユール伯爵、あなたの領内にありました。ですが、神殿の魔法具は王国の管理下にあったはずです。私たち、王国と公国二つの国籍を持つ、ウォテュラ王国の王家の血を引く一族が管理を任されていました」
マーガレットの忠告に従い、感情を込めずにゆっくり丁寧に。
「水の神殿を管理していた一族は、洪水からこの地を護ろうとして命を落としました。私一人、残して。
その後、私を監禁し、何も知らない公国の民を長として、伯爵はこの神殿の力を利用しておられます」
責めるようではなく、事実を穏やかな口調でサーナは語る。
「洪水の前に伯爵は王国の姫と共に、この地を訪れて何らかの準備を進めていました。あなたは、何をしようとしているのですか? あなたの目的の為に、私は必要ありませんか?」
「何故サーナは、生存を隠され犯罪者として監禁されなければならなかったのですか。長い間、彼女はその理不尽と孤独に耐えるしかなかった。彼女には知る権利がある筈です」
サーナの質問に合せて、ラトヴィッジがアシルに問いかけた。
「貴女を館で保護していたのは、民と貴女の身の安全の為です」
アシルもまた、感情を込めずに穏やかに語る。
サーナが行おうとしていたことは、多くの民を死に至らしめる行為であった。
騎士団によるサーナ捕縛は正当であり、錯乱したままの彼女を解放することはできなかった。大量殺人を目論む危険人物として、民に狙われる可能性もあった。
「館での処遇については、問題があったと報告を受けました。現在は改善されたと聞いています」
「今の彼女にその意思はありません。ですが、町民会議の前、サーナは毒矢で狙われました。伯爵はその件でご存知な事はありますか」
ラトヴィッジがそう尋ねると、アシルは隣に座るアイザックに目を向けた。
アイザックはため息をついて、重々しい口調で語る。
「指揮したと思われる者が亡くなっているから、推測でしかないけれど、恐らくはサーナ・シフレアン様を直接狙ってはいない」
「狙われたのは、離反者であるラトヴィッジ・オールウィン、君だ」
アイザックの答えに、ラトヴィッジとサーナは息をのんだ。
「狙われる前に、側で様子を窺っている者はいなかったか? その者は常に君たちの側にいたか? ――その者が君たちから離れたその間に、君たちの関係を実行犯に知らせ、君が彼女を庇うことを想定し、矢を放った。サーナ様の心を砕くために」
矢は、ラトヴィッジの身体をかすめただけだったが。
それは外れたのではなく、元々サーナに当てる為に射られたものではなかったから。
「憶測でしかないけれど。どちらにしても、君はその身で彼女を護った。あのまま会議に出ていたら、彼女を止めるために、やむを得ず命を狙う者も出ていたかもしれないから」
動揺を隠す事が出来なくなり、サーナは不安気な目でアシルを見る。
「水の継承者の一族――私と姫様は、繋がっている水を通して、言葉を送ることができます。遠く離れていても。姫様が旅立たれたあと、ご報告を受けることができるかもしれません。
それから、魔法具には王家の魔力が欠かせないとか……そのようなことを聞いたことがあります。それでも、私はいなくてもいいと?」
「民が二分し、箱船計画が頓挫するようなことは、なんとしても避けなければなりません」
アシルの目には強い意志が宿っていた。
ラトヴィッジはサーナに目を向け、2人は視線を合わせる。
サーナは彼の無言の問いかけに、頷いた。気持ちは一緒だから。
「町の人々への公言はしません」
「約束、します。ですから、神殿に帰らせてください」
「神殿の書庫や倉庫をサーナと一緒に調べさせて下さい。水の神殿の真の役割について記されたもの、神殿長に伝わる秘伝の書とかがあれば、火山対処のヒントになるかもしれません」
ラトヴィッジ、そしてサーナは必死にアシルに訴えていく。
「私にしか、見つけられないもの、あるかもしれません」
「見張りを付けて貰っても構いません。得た情報は全て提供します。世界の希望を探す為に、どうかサーナに力を貸して下さい」
皆が見守る中、ラトヴィッジとサーナは深く頭を下げた。
少しして、アシルは「いいでしょう」と答えた。「貴女たちを信じましょう」と。
「こちらからもお願いします。それが世界のためとなるのなら、協力は惜しみません」
ただ、監視はつけさせてもらう。とも続けた。
警備隊から1人。自分直属の騎士から1人。
「警備隊からは、隊長のバート・カスタル君、もしくは、同席しているそちらの若い彼でも良いでしょう」
マーガレットがバートにちらりと目を向けた。彼の顔には明らかな疲労が現れている。
彼には無理だろう。騎士団も民も、彼に負担をかけすぎだと思う。
このサーナ・シフレアンの問題に関しても、彼がどれだけ裏で動いてくれていることか。
ただ、自分も彼を頼りすぎたという、僅かな負い目も感じていた。
「身分は隠していただきますが、現神殿長のナディア・タスカや貴女をご存じの方には、こう説明をしておきます」
サーナは洪水のショックにより錯乱状態に陥り、館で保護され療養していた。
ようやく回復してきたため、自らの希望で神殿に戻り役目を果たすことになった……と。
またラトヴィッジに関しても同行を許すとアシルは言った。
「わかりました。そのように、お願いいたします」
配慮に対しての感謝の気持ちまでは湧いてこなかった。
サーナはもう一度頭を下げる。
「ありがとうございます」
ラトヴィッジは自分に対しての温情措置に感謝をした。
「ひとつ、伯爵にお伺いしたいことあります」
黙って見守っていたバートが口を開いた。
「なんでしょう」
「火山対策の説明会で『抑え込むのではなく、魔法鉱石を媒介に火山活動の際に発生する力を、障壁の強化に活用することは出来ないか』という意見が出ました。公国、および王国ではそのような研究はなされていましたか?」
「この地に神殿が建てられた経緯については、私個人は勿論、公国も把握していませんでした。その件については、先日レイザ君から説明を受けたばかりです」
軽く苦笑して、アシルは続ける。
「ですから、公国ではそのような研究は行われていません。王国に関しては」
若干言いよどんだ後、こう答えた。
「……この地ではなく、水の魔力のたまり場で実験が行われていたようです。そして、おそらくはその結果が今です」
憶測でしかないが、王国が魔力の溜まり場のエネルギーを防衛に利用しようとした結果。
魔力が暴走し、世界は水の中に沈んだのだと。
自室に戻り、男は壁に手をついて、独り、うなだれる。
腰の――徴に爪を立てながら。
虚ろな目をした騎士がドアを開けて、少女が1人部屋に入ってきた。
私には、他人の身体に魔力を流し込み、機能を狂わせることや、操る事が出来る。
でも、貴女にこの力は使わない。心を壊してしまう可能性があるから。
ここの管理者の精神が壊れてしまったように。
ねえ、貴女箱船に乗りなさいよ。
こんなところで、命を落としてはだめ。
貴女が私の国に来てくれるのなら、貴女が救いたい人を、助けてあげるわ。
それは、この国から私達の国に流れ着き、奴隷となっている人達?
ここで生きている人達?
生きていて欲しい人、1人くらいはいるでしょう?
助けてあげるわ。あなたと共に。
貴女が来てくれるのなら、私、貴女の身代わりになってもいい。
貴女が来ないというのなら。
貴女が死んでしまったのなら。
この、小さな世界なんて、無意味な世界。
いらないわ。
家族を失った。
大切な人達を失った。
守るべき多くの人達を失った。
ウォテュラ王国のせいで。連なる公国の民――ここに生きる人たちを、私は憎んでいる。
個別リアクション
■情況・連絡事項
火山深部同行メンバー
PCで同行が決定しているのは、ウィリアムさんだけとなりますが、メリッサさん、ピアさんも可能な場所までの同行とサポートが求められています。
また、トゥーニャさんもリアクションで書かれている条件が揃えば同行可能となる可能性があります。
現状火口にたどり着けるだけの人員が揃っておりません……。
現状のままですと、風魔術師NPCが1人同行してガス対策となりますが、深部までは行けません。
道を開いた後は、男性3人をアーリーの特殊能力で守りながら、息を止めて目的地点到達を目指すということに……。
温度対策、ガス対策に対応できるスキルをお持ちの方につきましては、ウィリアムさん、メリッサさん、ピアさんのいずれかの紹介という形で、接近可能な場所までの同行を申し出る事が出来ます。今回と同様、15歳以上、魔力、体力のいずれかが優れていて、いずれも劣っていない方が望ましいです。
その際は、紹介する方される方双方のアクション欄にその旨ご記入ください。また、紹介を受ける方の掲示板での挨拶を必須とさせていだきます。
こちらの作戦ですが、失敗して力を暴走させてしまったら現場のみならず多くの犠牲が出ますので要注意です。
他のPC達の命運もかかってきますので、作戦に参加していただける方はどうか協力、連携をお願いいたします。
魔力制御訓練
次回もレイザ・インダー指導による訓練が行われます。
実は、火山対策で役立てそうな人材育成も兼ねたものとなりますため、能力をお持ちの方は(第7回での)協力を求められるかもしれません。
神殿調査
サーナと共に、初代神殿長の一族が生活していた部屋と、地下倉庫などを調べます。
初代神殿長が残した書物は、ウォテュラ王国の古い文字で書かれています。
知識14以上の方でしたら、難しい言葉以外なんとか理解できます(サーナもこのレベル)。
20以上の方は翻訳可能です。
魔法鍵、錠がかけられた場所があります。基本サーナが開けますが、魔力21以上の方は一部自分で開くことが可能です。
今回サーナと同席した方以外も、水の神殿で働いている、協力しているという設定が自由設定に記入されていること、もしくは水の神殿の中で活動しているシーンがリアクションで描写されたことがある方は、探索に参加できます。
サーナは身分を隠していますが、洪水前から水の神殿で働いてた、騎士団員として神殿警備に当たっていたなどという自由設定が記入されている場合は、サーナが前神殿長の親戚の子だと気付くとしていただいても構いません。
NPCでは、ナディア・タスカ(伯爵に任命された神殿長)、リック・ソリアーノ(造船所所長の息子)がサポート予定です。
サーナには最低公国騎士が2人(警備隊から1人、伯爵直属の騎士1人)付き添います。
火山対策会議
13歳以上であれば、どなたでも出席できます。
火山の火口に近づくための道具や、方法について話し合われます。
魔法具の開発は今からでは間に合わないので、活用できるのは騎士団や領主の館で保有されていそうな魔法具のみとなります。
開発ではなく加工は可能です。例えば、貴族の部屋にある照明魔法具を持ち運べるよう加工するなどです。
魔法薬については、簡単なもののみ開発可能となります。※開発に関してはここでの提案より、リベルさんの意見が優先されます。
体力回復と魔力増幅の魔法薬は、開発しなくても作成可能です。材料があまりないため量は大量には作れません。数にしてトータル十数個くらいとお考えください。
会議出席に関しては、会議で提案(具体的な案を書く)+実働(数行の行動程度)はダブルアクションとなりませんのでお書き下さい。
採用されるかどうかはともかく、会議で提案(具体的な案を書く)+実働(数行の行動程度)+日常はこんなことしている。という書き方も大丈夫です。
尚、深部に行く方以外につきましては、具体的に深部でどのようなことが行われるかについての説明はされません。
必要に応じて、PC間で情報交換を行ってください。
火山対策実働
13歳以上であれば、協力可能です。
穴を広げたり、石を運び出したり、補強したり、調査したりします。
子供でも本人の信頼値が標準より高く、保護者的な立場のPCと一緒ならお手伝い可能です。
こちらも実働(詳細行動)+会議に出席して話を聞く(提案や会話なし)程度でしたら、ダブルアクションとはなりませんのでお書きください。
アリス・ディーダムさん
ファルさん
次回レイザからお約束のアクセサリーが渡されますので、持っているとして行動していただいて構いません。
軽い魔除け(魔法防御力ごく若干アップ)程度の効果があります。
エイディン・バルドバルさん
深部(マグマの中)まで行ける方法がちょっと思いつかないのですが、リアクション上にありますとおり道中の同行に関しては、とても助かります。
また、鉱石発掘の方や、グランドの方の事件であっても、大きな成果を出せるお力をお持ちかと思います。
展開がどうなるかはわかりませんので(火口近くまで迅速に駆け付ける事が出来る展開になる可能性も)、他の皆様の行動、相談を見守りつつ、行動を決めていただけましたら幸いです。
ナイト・ゲイルさん
特に指示がなければ、囚人たちは前回と同じ作業に従事します。
指示内容を変える事も可能です。
リベル・オウスさん
魔法薬の作成、開発を継続していただける場合、雑談などをアクションに絡めていただいても構いません。
またリベルさんの紹介として研究室にPCを招くことも可能です。
老人は魔法薬だけではなく、魔法具にも精通しています。
■第6回選択肢
・火山対策会議に出席して、意見、提案
・洞窟調査、土木作業(魔法鉱石採掘含む)
・魔力制御訓練に参加、指導
・神殿調査
・火山対策同行者(深部同行、接近)として訓練に勤しむ、相談をする
・~に聞きたい事がある!(サイドのストーリーに関係のある人物、話題限定)
・その他サイドのストーリーに関係のある行動
担当させていただきました、川岸満里亜です。
今回もご参加、また今回からご参加の方も、ありがとうございます。
今回は第1章の最後の館地下のシーンと、第3章最初のシーンの執筆を鈴鹿マスターが担当されました。
リアクションの分割については、今回は行いませんでした。
まずは、ダブルアクションにお気を付けください。
目的欄に複数の目的をご記入の方が沢山おられます。
1つの手段で達成できる目的なら良いのですが、いくつもの行動を必要とするダブルアクション前提の目的になってないかしら?
次回は準備の回となります。
しっかり必要な準備ができていれば、より悪くない展開に繋がるのではないでしょうか。
より良いとは言いませんよ。良い展開など、私の方で用意してはいませんので。
……石を投げないでください、石を!
ステータスを成長させて、ストーリーに沿った行動で攻略して、用意されている物語のエンディングを楽しむのは、テレビゲームの分野だと思っています。
マテオ・テーペでは、是非、皆様の力で、最高の結果を勝ち得てください。
情報の受け渡し、共同アクションを行う場合は、双方のアクション欄に互いの名前をご記入ください。
よろしければ掲示板にお越しください。
行動の予定を書いていただけますと、多くの方が助かると思います。
第6回のメインシナリオ参加チケットの販売は8月21日から9月2日を予定しております。
アクションの締切は9月3日の予定です。
詳しい日程につきましては、公式サイトお知らせ(ツイッター)や、メルマガでご確認くださいませ。
それでは引き続きどうぞよろしくお願いいたします。